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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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63、弥勒の疲れと癒し。

ご注意ください。

ミロクは疲れていた。

基本、彼は独りでいるのが好きだし楽だと思っている。

他人と一緒にいると精神的に酷く疲れる。家族とでさえも、長く一緒の空間に居るのは正直キツいと彼は感じるくらいだ。


ご近所の皆さん、スポーツジムの人達、事務所のスタッフ、徐々に他人とのコミュニケーションをステップアップさせて、一時深刻な対人恐怖症だったミロクは奇跡的に回復していった……筈だった。


だがしかし!


大野の謎のアピールと、理解不能な思考回路の彼に翻弄され、ミロクは身も心も疲れ果ててしまった。


(疲れた……引きこもりたい……)


地元の駅に着くと少しホッとするミロク。

商店街に向かって歩く彼の足どりは重い。ずっしりと身体中を覆う倦怠感は、まるで大野の念が込められているかのようだ。


(あれ?フミちゃん?)


自分の疲れからくる幻覚かと思うミロクの心のオアシス、茶色猫っ毛が数十メートル先でポワポワ揺れてるのが見える。

思わず心に湧き上がる喜びは、近づくにつれ違う意味で熱を持ち沸き上がっていく。

フミが友人の真紀と一緒にいるのは良い。問題はもう一人側にいる人間が男性であるということだ。

しかも「お茶でもどうですか?」などと言っている。


(うん。敵発見だね)


さっきまでの重い足取りはどこへやら、颯爽と近づくとにこやかにミロクは「俺も良いですか?」と言ってやる。笑顔で振り返るフミは「ぴゃっ」と叫び(可愛い)体をビクッと震わせた。一緒にいる真紀と男性も顔が真っ青になっている。

笑顔で話しかけたのに反応がおかしいと首を傾げるミロクは、とりあえず驚いて目を丸く見開いている(可愛い)フミをそっと抱き寄せる。


そう!彼は疲れがピークに達していたため、色々抑えが効かなくなったのだ!

全ては、あのハーレム肯定派・大野のせいである!


「え?ええ?えええええ!?」


フミを抱き寄せたミロクの胸元で、茶色のポワポワした髪の毛が揺れる。ミロクはそのままポワポワに顔を埋めてシャンプーの匂いを堪能し、疲れのせいか少し掠れた声で囁く。


「ダメだよフミちゃん。男はみんな獣なんだから」


誰が獣なのか。今一番獣に近いのはミロクであろう。

彼の声は少し掠れているせいか、何時もより甘く色っぽく響く。そしてフミは真っ赤になって固まったままだ。そんなフミに向かってミロクは容赦ない。


「フミちゃん、俺すごく疲れちゃった。癒してくれる?」


「へ!?いや、あの、い、いやす?」


「ん。もうダメ。引きこもりたい」


「ひきっ!?そ、それはダメです!!」


「なら、もうちょっとこうしてて」


「ふぇ!?」


フミの頭にチュッとキスすると、回している腕をさらにぎゅっとさせて、ミロクの鍛えた胸にフミの顔を埋めさせる。むぐぐとなっているフミが抵抗しないのを良い事に、そのまま抱きしめておくミロク。今ここで彼を止める者は誰一人としていない。


「そういうわけで、俺たちは失礼します。真紀さんごめんね」


「イエ、オキニナサラズ」


「良かった。ありがとう」


にっこり輝く王子スマイルを真紀と高元はまともに受けてしまい、顔を同時に赤くする二人。ミロクはそんな二人をその場に残し、フミを抱き寄せたままスタスタ歩いて行ってしまった。

呆然と見送った真紀が遠い目をしながら言う。


「知ってるかい?あれであの二人付き合ってないんだぜ?」


「はぁ!?いやいやそれは無いでしょう!」


「マジっす。リアルマジっす」


「リアルマジって何だよ……」


高元はショックのあまり真紀に対して話す言葉がくだけてしまっている。真紀も特に気にはしていない。

そう、二人は同じ戦場で死線をくぐり抜けた戦友のような気持ちになっていたのだ。恐るべきはリミッター解除状態のミロクである。


「まぁ、今日は良いかな。本当はここで偶然会ったついでに、マネージャーさんにシジュさんに取り次いでもらいたかったんだけど、またの機会にする」


「あら、彼らの事務所に行ったの?」


「行こうとしてた、が正解だよ」


「なんか、お疲れ様です」


苦笑する高元に、真紀は「そうだ」と思いつく。


「良かったらそこの喫茶店行く?私は今コーヒーをブラックで飲みたいんで。ここのコーヒー美味しいって評判だし」


「是非とも、お伴します。姫」


「おおう!そのバリトン、ゴチです!」


二人の戦士は笑顔を交わし、しばしの休息をとりに行くのであった。






ちなみにミロクは、歩いている途中で我に返ったフミにポカポカ叩かれつつ怒られていた。


(フミちゃん可愛いすぎる……癒される……)


可哀想なことに、フミの怒りはミロクに届いていなかったが、ミロクの引きこもり病は治ったので、フミは意図せずマネージャーとして心のケアが出来ていた。

そして、344(ミヨシ)の危機も人知れず去った事をここに記しておく。









お読みいただき、ありがとうございます。

次回からの投稿は少し不定期になるかもしれません。

なるべく間があかないよう頑張りますので、よろしくお願いします。

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