見えない痛み。
揺るがぬ意思ゆえの。
その巨体が大地を踏みしめると地が割れ、その叫びはクルーシアの竜を
恐れさせた。
「...姫さん、ありゃ相手にしちゃいけねー。
お仲間の龍さんに任せて、一緒に氷の姫さん捕まえましょうや」
サンダリアンは真横のメドリエに案を出した。
「それもそうだが我はあの龍も欲しい...フェディオ様、頼めるかしら?」
メドリエは後ろにいたフェディオへ問う。
「...こっちは何体いると思ってるんだい。
わざわざ僕に兄弟を目覚めさせてあげますって言ってるのと同じじゃんか。
行くよ、皆」
フェディオは暴食と色欲、嫉妬、その他の数多くの竜達を引き連れ
あの巨龍のほうへ駆け出す。
「そんじゃ姫さん、あっち行こうや」
サンダリアンは前方のほうでクルーシア兵と戦っているアイアスと
目が合い、そう言った。
「これはこれは神龍アース様。
ここまで何用ですかな?」
敵を倒していた巨龍の目の前に1体の龍と嫉妬達の姿が目に入る。
「...お前さんが元凶か?」
巨龍は険しい表情で問う。
「...そんな悪い言い方をしないでくださいよー。
元々はあなた達が悪いんだ、本当に人の犯した大罪の元は7つであると
思ってるのなら甘いよ、甘すぎるよ、ヨボヨボお爺ちゃん。
もしあなた方が取り込んでいなかった大罪の元が新たな大罪龍を生み出した
としたら今現在までどれぐらいの大罪龍が存在していると思います?
とりあえず力でねじ伏せればいいですね...皆食っていいよ」
龍のその言葉に暴食達も勢いよく巨龍を襲う。
「...数がなんだ!こんなんでひるんでたら俺はあんちゃんに合わす顔
ねえだろうが!!!」
巨龍が頭部に生えている大きな2本の角で暴食の鎌状の角を受け止める。
「...ムーンちゃん、美人だったのになー...もうちょい待っとれな」
角で薙ぎ払うと暴食は地へ倒れる。
「...いだぁいいいいいいいいい!!!ミラーちゃん!!!」
暴食が叫ぶと、次は色欲が真後ろから鋭利な牙が生えそろった口を大きく
開けながら襲ってくる。
「かわいこちゃんばっか狙うとはあいつも憎いやつだ。
ミラーちゃんももうちょい待っとれなー」
そう呟くと巨龍に色欲が力で押され、後ずさりした瞬間にその大きな
口の中めがけて2本の角を突き刺した。すると勢いよく血が滴り、色欲は
息苦しそうにその場で動かない。
「...イリミールとトーダスがこの場にいるはずないだろう、
王様は一番相手したくねえんだがな」
突然巨龍の目にイリミールとトーダスが近付いてくる光景が見える。
イリミールは巨龍の孫だと分かっているが、トーダスとはどういう関係なのか
それはまだ分からない。
「...王様は無視だ」
と巨龍は暴れ始める。惑わしの幻影を見せられているはずだがある程度は
距離の間隔は掴めているようでアイアス達の場所は避けるように戦っていた。
「...レイラ!もうすぐだ!雷撃には気を付けるんだよ」
クルーシア目前までザイス達は来ていた。
「レイラ頑張る!」
飛んでいるとザイスとレイラの大きさがよく分かる。兄のザイスより妹の
レイラのほうが大きいがこれは氷竜の特徴だ。氷竜の中では雌が雄よりも偉く、
主に敵の排除は雌がこなし、雄はつがいの雌へ餌を運んだり、子守りをするのだ。
「ん...?」
突然目の前を数多くの竜が飛んでくる。それは同じ氷竜だ。
「...皆!戦いは終わったの!?...母上は?」
ザイスに気付き、近付いてきた氷竜達へ問う。
「...ザイス様、レイラ様!ご無事で安心しました...!
アイアス様はまだ戦っておられます、わたし達はアルディア様を
探しに行きますが一緒に来られますか?」
1頭の氷竜が返答する。ザイス達がリーダーであるアイアスの子供だからか、
氷竜達は綺麗に並んでいて、返答した竜も敬語だ。
「...いや母上の元へ向かいます、皆も気を付けて」
ザイスは答えると翼を動かし、氷竜達は後ろ姿を見送っていた。
「氷の姫さんやっるねーーーえ!!!殺しちまうのは本当に惜しい!」
アイアスはサンダリアンと戦っていて、アルマはメドリエと戦っていた。
「...裏切者めが、愚かだ...サンダリアン。
お前は7龍隊をこれから名乗るな」
いつのまにかアイアスの見た目は非常に刺々しくなっていて
纏う氷が非常に鋭く、普段より大きく見える。
「クールな雌もいいねえ!!!ひれ伏させたくてゾクゾクすんぜーえ!」
サンダリアンの体は放電を繰り返していて、常に電を帯びている。
...
突然異様な空気がその場を襲う。誰もが不自然な感覚を覚え、龍達、アイアス、
アルマ達、メドリエも攻撃を止めて辺りを見渡した。
あれはなんだ?
誰もがそう思っているであろう、それは突然姿を現した少女だ。
赤髪の髪はボサボサで、上半身に薄い服きれを着ているだけだが
どこかおかしい。
「...イ...ア...?」
メドリエはどこか焦った表情でその名を口にすると、
「龍さんは言いました、これは幸せにする魔法よと」
突然少女が口を開く。
「...やめろ、イア...やめなさい!やめなさい!やめなさい!
イア!!!!!」
メドリエは眼球が飛び出そうなほど目を見開きながら叫ぶが、
「ライ・ディアプト」
少女が口を開いた瞬間、王都クルーシア周辺は暗くなっていき、爆音が
鳴り始める。
たった一瞬の出来事でも運命を変えるには十分すぎた。




