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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
災厄のパズル
65/123

せいなの。






 巨龍、そこに現る。






 「...あなたは...!」


視線に入った巨龍が何者か、その姿を見た瞬間分かった。


「立派な体になったな、アイアス。

アイスウォーターの頑固じじいは元気かー?」


その巨大な龍はクルーシア兵を気にしてない様子で堂々とアイアスへ問う。


「...あなたに頑固と称されるのもおかしな話ですが、多分元気なはず。

それよりもアルディアとご一緒なのです?」


アイアスは周りの様子を伺いながら目の前の巨龍へ返答した。


「今は俺の孫に任せたがなー、あの子には背負うもんが重すぎた。

初めて会った時は大変だったんだぞー?

母も家族もいない、仲間ともバラバラになり、誰かがそばにいなくては

いけない時に誰もいなかった。

だからせめて俺はあの子に道を残してやりたいんだ、邪魔はするなよ?」


クルーシア兵達は距離を取り始め、後ろへ下がっていき、

その奥でメドリエとフェディオ達が何やらこちらを見ながら話をしていた。

アイアスは不思議そうな表情を浮かべている。


「つい数時間前にアルディアと一緒に楽しい夕食をしてたんだが、

この糞ったれ共の仲間に襲われてなー。

どうせもう逃げても隠れても無駄ならやれるとこまでやってみてえんだ。

アルディア達が抗った事、俺は年取ったって素直にかっけえって思う。

お前も分かってんだろ?

竜でさえ王家に臆するこのご時世に、あの子らの行動は一筋のか細い希望を

皆に抱かせた。

そのか細い希望をたくましくするために俺はもう目を背けねえ。

これ以上、この世界が闇に呑まれるのは神でさえも許せないはずだからな...

平和ボケした連中に俺が告げてやる。

だからお前らには生きてこの地から離れてもらうぞ、アイアス。

俺が抗ったって知ってるのは今この場にいるお前の一族とそこのフードの

奴だけだ。

証人になってもらうから絶対この世界に負けんじゃねえ、強く生き抜いて

抗ってみせろ!」


巨龍は強い意思のこもった瞳をアイアスへぶつけた。


「ですが私はあなたと強い結びつきがあるわけではない。

ましてや捕らわれた騎士兵を助けるために来て、今現在も王城へ

向かってる仲間もいるのです」


その言葉に巨龍は、


「なーんだ、お前らも結局変わんねえじゃねえか...俺と。

ならそいつが戻ってくるまでは一緒に戦えばいい。

強いお前らがいてくれるだけで不安も消えるわな」


巨龍は笑いながら言うと、アイアスは一瞬悩ましい表情を見せ、


「...神が何を言ってるんですか。

あくまで私の仲間が戻ってくるまでですからね...その後はあなたの事に

責任は持たない!!!」


アイアスはそう叫ぶとリング状の冷気がもう一段階大きくなり、

王城の手前まで一瞬で凍った。


「鈍ってはないようだな」


巨龍はアイアスを見ながら言うと,大地を踏みしめながら何か叫び始める。




 (...体が痺れる...)


ダモスは拷問部屋で目が覚め、激しい物音はするが周りには誰もいない。

拘束具はすぐにでも外れそうだ。


(...誰がこんなことを...?

鍵も開いている...誘われているようで不気味だが...イア様のため)


ダモスは再びその場所から抜け出し、急いで廊下抜け出す。

すると誰かが目の前の階段を下りてくる音がして、すぐさま

近くにあった部屋のドアノブへ手をかけた。




 「...皆はどこ?」


サクリは王城の中を歩いているが所々壁が大破している。

耳を澄ますと、


ドタドターーーッ


と何人かが走る音が聞こえ、それは近付いてくる。


「...誰か来る!?」


咄嗟に廊下のカーテンの影に隠れた。


「...しっつけーーーわ!!!どっかいけーーーーー!!!!!」


目の前を駆け抜けていった2人、その先頭のその声は忘れもしない。

グレムだ。


(...!グレム!?)


サクリは急いで後を追う。


「...待ちなさい!!!」


その声にグレムが急に立ち止まると追っていた後ろの男は勢いよく

グレムの背中にぶつかり、2人とも倒れた。


「...いてーよ!!!...お?サクリか!」


グレムは男のほうを見て言うも、その奥に佇むサクリに気付いた。

そして彼を追っていた男はクライズだ。


「...2人同時に相手してやるかぁ?来いよ?」


クライズは人差し指で煽る。

グレムはサクリの真横へ行くと、


「...あいつの抜刀術はまずいんだ。

今は俺も剣ねーし、何するかは分かんな!?」


と焦った様子で言い、サクリを見る。


「私が剣で相手しろって事ね!?」


その返答にグレムは口を大きく開け、ポカーンとした表情をする。

クライズは笑いながら2人を見ていた。


「...サクリさん、それはバカっす!!!

何をするか...それは...全速力で逃げるんすよ!!!!!」


そう言った瞬間、グレムはサクリの袖を掴んで全速力で駆け出し、

クライズはまさか逃げるとは思ってなかったのか一瞬出遅れ、躓いた。


「...バカ!!!他にもヘリサ様やブルードがいるわ!

探すの!!!」


グレムに掴まれ、走りながら話す。


「...とりあえずあの部屋に入るか!!!」


後ろにクライズがいないことを確認すると右のほうにあった部屋へ入る。


「...はぁはぁ...あんの野郎...剣あったら次は負けねー...」


グレムはドアに寄りかかりながらそう呟き、サクリはそれを息を切らしながら

見ていた。


「...そこまでひどい怪我はしてないようでよかった...」


サクリはグレムの姿に涙目になりながら話した。


「...んお?お、おう...なんだか傷の治療してあったんだ、

姉貴達もまだ生かされてる可能性高いぜ?」


その言葉に謎が生まれる。

何故クルーシア兵達は傷の治療を施したのか。

ライド家を恨んでいるのならそのまま殺す事だって可能だったのではないか。


「...生かされた...?何か弱みを握って仲間にでもする気だったって

いうの...?」


考え込んでいるとドアのほうから足音が聞こえてきて、グレムと見つめ合う。


「...入ってきた瞬間、襲うぞ!」


グレムは小声でサクリへ言った。


ガチャ


と、その音が聞こえた瞬間にグレムとサクリはその人物を抑え込んだ。

だがそれは間違いない、


ダモスだった。


「ダモっさん!?」


グレムはその顔を見て驚き、声をあげた。


「...グレムさんに...サクリさん!」


ダモスもその2人の顔に安心感を覚えるも何故捕らえられてはいない

サクリが今ここにいるのか、不思議だったが、


「話は後でしましょう、誰か近付いてきます」


3人はドアに耳を澄ませた。






 場面が変わる。


「今からどこに行くの?」


イリミールはどこか広い大地の上を飛んでいた。


「もう故郷には当分帰れないけど泣きわめかないでよね、

帰りたければ力をつけて、王家にも負けない男になりなさい。

海を越えて仲間を集めなくちゃいけないけど、あたいは他にすること

あるからあんた一人でやるの」


アルディアは来た方向を見つめながら聞いていた。


「...!じじいの声がする」


イリミールは突然止まると北の方角を見つめた。


「...あのおじいさん?」


アルディアは謎めいた表情でその様子を眺めていた。


「...誰もしようとしないからじじいが一人で...その行動が私達、

竜を動かすようにだって...。

何を言ってるの、誰が平和ボケよ...あたいは分かってたけど

今更止められないじゃない、本当の敵は味方の内側にいるのよ」


イリミールは泣いているように見えた。






「欲張りや自分勝手な奴らも孤独に負けてしまう者だって皆、この世界の

犠牲者なんだから」




 誰も聞こうとしなかった事をイリミールは知っていた。


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