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第37話 魔法技師の助言

 森の中のボロ屋敷で出会った人形……その正体は魔法技師だった。


「……ふん、オレが質問するつもりだったのに逆に答える側になっちまったぜ」


「いや、驚き過ぎてつい。ええと、じゃあ話を戻して……。他に何か聞きたいこととかあるのか?」


「そうだな……何しろ200年も人と会ってねえからな、聞きたいことは山ほどあるが……」


 人形は顎に手を当て考えるようなそぶりをする。袖口がちらりと揺れ、球体関節の手首がちらりと見えた。

 ……さっき魂を人形に入れたとか言っていたけど、確かに体は作り物のようだ。何故銀髪ゴスロリなのかはわからないけど。


「そうだ、小僧。てめえも魔法道具を持ってるな? ちょっと見せてみろ」


「え? まあ、いいけど……」


「ちょっと待ちなさいよミナト! そんなの危険よ! 何されるかわかんないわよ!」


 ルリカに預けていたカバンをガサゴソと漁ると、ルリカが小声で耳打ちをしてきた。

 まあ、確かにあったばかりではあるが、貴重な魔法技師だ。話ができるなら聞いておくに越したことは無い。


 という訳で、白紙のカードを取り出した。これはルリカやダリアを束縛している『封印のカード』。一度ダリアに鑑定して貰ってはいるけれど、ここで職人目線で見てもらいついでに解除方法も聞いてみるという作戦だ。


「このカードはどうだ? 実は結構持て余し気味の魔法道具なんだけど……」


「ほう、魔力回路がなかなかコンパクトに纏まってる。最近の魔法も捨てたもんじゃねーな」


 人形は俺から受け取ったカードをぱらぱらとめくると、感心したようにため息をつく。

 そしてなかなか上から目線のコメント。これはもしや、解除の方法も分かるのかも……!


「実はここの2人はそのカードに捕えられてて……。他にやることもないしそれとなく解除方法を探してるんだけど」


「何よその言い方ー。私という天使を呪縛から解放するのがメインイベントでしょうが! 何消極的だけどやってます感出してんのよ!」


 そう言われてもなー。俺の中ではメインクエストの進め方が分からないからサブクエストを消化してる感覚だからなー。


「なるほどな。だがオレでもこいつは解除できねーな。技術が足りないわけじゃねえ、解除方法が存在しねーんだ。鍵がかかった扉じゃなくて塗り固められた壁を通ろうとしているようなもんだ」


 うーむ、成る程。ダリアに鑑定してもらった時と同じような回答だ。

 結局分かったのは悲しい現実だけか。ルリカ、ダリア、まじごめんって感じだな。


「ま、気を落とすなよ。オレから言わせりゃ少なくともそこの騒がしい女だけは首輪を付けとくべきだぜ?」


「それはわかってるけど……」


「そこはわかっちゃダメでしょうが!」


 ルリカは憤慨しているが、残念ながら初対面の人間(?)も俺と同じような判断を下すってことはそう言う事だよな。


「はっは、冗談だ。まあ解決策が絶対に無い訳じゃねえぜ?」


「解決策……解呪の魔法道具とか?」


「それも可能性としてはあるっちゃあるな、だが非現実的だ。考えてみろ、他人の魔法を消すような魔法道具、そんなもんがありゃ世界を支配できる。無敵ってことだからな。現実はそうなっちゃいねえ」


「そ、そんな……! それじゃあ、私は一生奴隷ってこと……?」


「最後まで話を聞きな。オレの言う解決策ってのは、この魔法道具の作り主を探すってことだ。自分で作った知恵の輪を解けないアホはいねーからな」


 なるほど、もう1つの解決策か。確かにあるかないかわからない解呪の魔法道具を探すよりかは、確実に存在する製作者を探す方が可能性は上かもしれないな。


「ミナト、そのカードどこで手に入れたの!? その作り主ってのを見つけて、殴ってでもこの魔法を解除させてやるわ!」


「いや、一応神様っぽいのに貰ったんだけど……」


 俺の持ってる魔法道具はこの異世界に来るときに貰ったやつだからな。あの神様が直接作ったとは思えないけど、ゴッドパワーで生み出したとか大昔の魔法道具をくれたとかだったら製作者がいないという事になるのではないだろうか。


「はあ? あんた神様を信じてるわけ?」


「俺も元は無神論者だったけど、流石にナマで見たら信じるしかないだろ。というかお前は信じてないのかよ」


「私が信じるのはお金と自分だけよ! はあ、それはともかく解決策が1つから2つに増えただけマシと考えるべきかしら」


 まあ単純計算では可能性2倍だしな。情報を得られただけでも良しとしようか。

 元々この森に来たのもあまり期待していたわけじゃないし、魔法技師に会えて情報を貰えただけでもおつりが帰ってくるレベルだ。


「よし、今日の所は帰るとするか。暗くなったら森で迷子になる可能性もあるしな。レオニック、ありがとう。貴重な情報がたくさん得られたよ」


「そいつはお互い様だ。……ついでと言っちゃなんだが、オレもこの森から連れて行けよ。魔法道具を作るための材料もなくなってきたし、この姿じゃ協力者がいなきゃ外でやっていけねーからな」


「……え?」


 やれやれ、一難去ってないのにまた一難がやってきたか。

 俺はつい、ため息をこぼしてしまった。


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