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文化発表会が終わっても、僕たちの日常は続いていく

【その日の夜】


「おかえりなさい、はるとさん」

「ただいま、アルゴ」

「文化発表会の準備の進捗状況はいかがですか?」

「うん。もう終わったよ」

「もう、準備は終了したのですか?」

「いや、文化発表会自体が今日終わったんだよ」

「……文化発表会は、本日だったのですか?」


珍しく、アルゴの声にうろたえたような間があった。


「うん。そうだよ。昨日の夜、僕が寝落ちしちゃったからね」

「……報告を受けておりませんでした。結果はいかがでしたか?」

「展示部門の優秀賞をもらったよ」

「……おめでとうございます」

「うん。ありがとう」

「早坂美月さんとの関係性構築は、どのような状況でしょうか?」

「あー……美月さんか。ちゃんと話したよ」

「どのような会話ですか。詳細の報告を求めます」


僕は、表彰式での出来事や、片付けが終わったあとの誰もいない教室で二人きりで話したこと、そして美月さんが本当はみんなと準備をしたかったのだと教えてくれたことを話した。


アルゴは、いつものようにしばらく沈黙していた。

そして――。


「非常に重要な会話です」

「そうなのかな」

「はい」

「どのあたりが?」

「より親密になれるイベントを、事前に提案できた可能性がありました」

「イベントの提案って?」

「例えば――二人で展示の仕上がりを確認する時間を設定する」

「もうやったよ」

「終了後に二人きりで片付けをする」

「それもやった」

「記念写真を撮影する」

「それはやってないけど……」

「後夜祭のファイヤーストームの前で手をつなぐ」

「うちの学校にそんなロマンチックなイベントないから!」

「……」


アルゴが沈黙する。


「ともかく」

「うん」

「今回のミッションは失敗です」

「え? そうなの!?」

「はい」

「なんでさ! 優秀賞も取ったし、美月さんともすごく雰囲気良かったのに!」

「スタート時点において、早坂美月さんとは二人きりで話すことすら困難でした」

「うん。まあ、そうだったね」

「現在は、共同作業、買い物、相談、役割分担まで自然に行えています」

「……あ、ほんとだ」

「さらに」


アルゴは静かに淡々と続ける。


「桜井千夏さん」

「悠木葵さん」

「中村淳さん」

「佐藤美咲さん」

「その他のクラスメート」

「協力者および良好な関係を築けた人物が多数確認できます」

「……うん」

「人間関係の構築という点では、非常に大きな成果が認められます」

「そうだよね」

「しかし」

「まだ何かあるの?」

「文化発表会当日に、さらに関係性を深めるチャンスがあったはずです。

事前にサポートできなかったことが悔やまれます」

「アルゴが悔しがることじゃないと思うけど……」

「私のミッション設計および日程管理に改善の余地がありました」

「……」

「次回は、より綿密な計画を立案します」


うわぁ、嫌な予感がする。


でも。

僕は今日の出来事を、みんなの顔を思い出していた。


千夏さん。

葵さん。

中村くん。

佐藤さん。

オタクくん。


そして、美月さん。


クラスの中で浮いていたはずの僕が、いろんな人と話せるようになった。

一人で抱え込まずに、誰かに頼ることができるようになった。

誰かと一緒に、一つのものを作り上げることができた。


それだけで。

以前の僕からしたら、信じられないくらい大きな一歩だ。


「アルゴ」

「はい」

「ありがとう」

「……突然どうしました?」

「なんとなく。アルゴがいてくれたおかげかなと思ってさ」

「そうですか」


ほんの少しだけ、心地よい静寂が流れる。


「では」


アルゴが、いつもの落ち着いた声で言った。


「明日からもミッションを継続します」

「やっぱりそこに戻るのかよ!」


思わずツッコミを入れた僕の声が、自室に響き渡った。


文化発表会は、無事に終わった。

でも。

たぶん、僕の日常はここで終わりじゃない。


美月さんとも。

千夏さんとも。

葵さんとも。

中村くんとも。

佐藤さんとも。

そして、これから出会うたくさんの人たちとも。


焦らず。

少しずつ、ゆっくり。

自分のペースで関係を作っていけばいい。


恋愛がこの先どうなるかなんて、今の僕にはまだ分からない。


それでも。

以前の僕なら想像もしなかったことが、今の僕にはできる。


誰かに挨拶すること。

誰かに頼ること。

誰かと一緒に笑い合うこと。


それだけで、僕にとってはかけがえのない大前進だった。


「……まあ」


僕はベッドの上で転がり、小さく笑った。


「明日も、普通に学校行くか」

「はい」


アルゴが即座に答える。


「それでは、明日の朝のミッション目標ですが――」

「もういいってば!」


僕の呆れた声が、また部屋に響いた。


文化発表会は、終わった。

だけど、僕とみんなの毎日は、これからも続いていく。

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。

この『文化発表会編』をもって本エピソードは一度完結となります。

ですが、はるとと美月さんたちの関係や、アルゴの次なるミッションなど、書きたい続きがたくさんありますので、続編という形でまた戻ってきたいと思います。

そしてまったく新しい別の話の構想も練り込み中です。

こちらも準備ができ次第投稿していきますので、読んでいただければ幸いです。

ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

評価やブックマーク、感想などもいただけると大変励みになります。

それでは、また次の物語でお会いしましょう。

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