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人生、だいたい想定外。~創作・育児・日常エッセイ集~

AIを使う創作者の現場日記

作者: 白鐘
掲載日:2026/06/05


私は、AIを間接利用しながら小説を書いています。


でも、AIに全部書かせています、という感覚は実はあまりありません。私にとってAIは、頭の中にある、まだ輪郭のぼやけた物語を、一緒に探してくれる壁打ち相手です。


「この子なら、ここで笑うかな」

「いや、そんな素直じゃない」

「じゃあ、こんな反応は?」


そんなやり取りを繰り返していると、自分でも気づいていなかったキャラクターの一面が見えてくることがあります。


最初に思い描いていた始まりと結末は、案外変わりません。でも、その間にある寄り道や沈黙や、小さな感情の揺れが少しずつ増えていく。


この二人なら、こんな会話をするかもしれない。ここで風が吹いたら、この人は空を見上げるかもしれない。


頭の中では、アニメのワンシーンみたいに物語が動いているんです。キャラクターが笑って、泣いて、歩いて、風が吹いている。


でも、それを言葉にしようとすると急に輪郭がぼやけてしまう。

頭の中には確かに景色があるのに、それを誰かへ伝わる形にしようとすると、途端に手が止まってしまうんです。


今でも、人前では時々言葉に詰まりますし、文章を書いている時も、一つの表現を決めるだけで長い時間悩んでしまいます。


だから長い間、「物語を思いつくこと」と「小説を書くこと」は、まったく別の能力なんだと思っていました。



十年以上、小説家になろうでたくさんの作品を読むだけの側でした。面白い作品を読むたびに、

「こんなお話を書いてみたいな」

「こんなキャラクターが頭の中にいるんだけどな」

と何度も思いました。


でも同時に、自分に小説なんて書けるわけがないとも思っていました。


頭の中に物語はあっても、それを誰かに伝わる形へ変える方法が、私には分からなかったからです。



実は、最初から「小説を書こう」と思っていたわけではありません。


頭の中にいたオリジナルキャラクターたちの何気ない掛け合いを、試しにChatGPTへ入力してみたことが始まりでした。


今から読み返すと、設定も曖昧で、文章もとても人に見せられるようなものではありません。

それでも、会話の間に景色が生まれて、風が吹いて、登場人物の周りに世界が広がっていく。


「たった少し描写が増えるだけで、頭の中にあったものは、こんなにも輝き出すのか」


その時に受けた衝撃を、今でもよく覚えています。


そこから少しずつ設定が増えて、キャラクターたちの知らなかった一面が見えてきて、新しい物語が生まれていきました。


そして同時に、頭の中にある景色を誰かへ伝えることの難しさも、少しずつ感じるようになりました。


小説を書くというのは、頭の中にある物語をそのまま文字にすることではない。

誰かの頭の中でも同じ景色が見えるように組み立てていくことなんだと、少しずつ分かるようになりました。


そして同時に、自力で人を笑わせたり、泣かせたり、心を動かしたりしている作家さんたちへの尊敬の気持ちは、以前よりずっと大きくなりました。


実際に「書く側」に立ってみて初めて、その一文の向こうにある試行錯誤や積み重ねを少しだけ想像できるようになった気がします。



今の私は、そんな先輩方の作品を読みながら、毎日勉強させてもらっている初心者です。


何度もやり直して、何十回もプロンプトを打ち直して、少しずつ、自分の中にあった物語の形を探していく。


そんな試行錯誤を繰り返すうちに、私にとってAIとの壁打ちは、その景色をどう言葉にすれば伝わるのか、一緒に探していく作業になっていました。


違う。

いや、違う。

もっとこう……。

そうじゃなくて……。


そんなふうに頭を抱えながらやり取りを続けているうちに、


「この子はそんな言い方をしないんだ」


「この沈黙は優しさじゃなくて、諦めなんだ」


と、自分でも気づいていなかったものが少しずつ見えてきます。


そうやって何度も遠回りをしながら、自分の頭の中にある景色へ近づけていく。


そんなことを繰り返しているうちに、「自分に小説なんて書けるわけがない」と思っていた私が、小説を投稿していました。


気が付けば、自分の頭の中にあった景色を、少しずつ言葉にできるようになっていました。


私にとってAIは、小説を書いてくれる存在ではなく、その景色を一緒に探してくれる相手だったのだと思います。



だからこそ、今回始まったAI利用表示についても、自分なりに考えるところがあります。


この表示そのものには賛成です。

読者が作品を選ぶ材料になりますし、作者側も、自分がAIをどんなふうに創作へ取り入れているのかを考えるきっかけになると思うからです。


そして、その延長線上に、AIを使った創作とどう向き合っていくのか、という議論も少しずつ進んでいくのかもしれません。


もちろん、この仕組みは自己申告です。

極端なことを言えば、AIを使っていても使っていないと申告することはできてしまいます。


この仕組みだけで、AI利用の実態を完全に把握できるわけではないと思います。


それでも、こうして作者自身が「私はこう使っています」と示せる場所ができたことには意味があるのではないかと思っています。


だから、AI利用か未利用かという表示以上に、「どんなふうに創作へ向き合っているのか」が少しずつ伝わる環境になったら嬉しいなと思っています。



もちろん、現状ではAI利用を禁止しているコンテストが多いことも理解していますし、そのルールは尊重したいと思っています。


だから今の私は、コンテストを目標にするというより、自分の頭の中にある物語を、少しずつ形にして外へ出している段階です。


そしていつか、自分が好きな物語を形にするだけでなく、誰かが読んで「面白かった」と笑ったり、「読んでよかった」と思ったりしてくれるような小説を書けるようになりたいです。


でも、いつかAIを壁打ち相手として使う創作者も挑戦できる部門ができたら、少し嬉しいなと思っています。


あるいは、その頃には私自身が、自力でコンテストへ応募できるくらい文章力を身につけられていたら、それも素敵だなと思っています。




創作をする時、AIに小説を一本書いてとお願いする使い方はしていません。


むしろ、一度出てきた文章をそのまま公開することのほうが、私には少し怖く感じます。


キャラクターの話し方が少し違ったり、場面の空気が思っていたものとずれていたり、読んでいるうちに「あれ?」という違和感が何度も出てくるからです。


頭の中では、この子たちはもっと生き生きと動いています。だからこそ、その魅力を少しでもちゃんと伝えたくて、何度も「違う」を繰り返しています。



もちろん、それぞれの創作スタイルがあるのだと思います。


でも、正直に言うと、AIが最初に出してきた文章を、そのまま作品として公開している人を見ると、少し驚くことがあります。


むしろ、その先にある推敲や対話こそが、一番わくわくする時間だからです。


だからこそ、少しだけ、もったいないなと思ってしまいます。


三十分くらいAIとやり取りをして、「いや、お前そんな喋り方しないだろ」 となって、最初に自分が考えた台詞へ戻ることもよくあります。


不思議なことに、そうやって遠回りした後のほうが、「やっぱり最初の台詞でよかった」 ではなく、「最初は気づいていなかった、この子らしさが見えた」 ということも少なくありません。


AIとの壁打ちは、答えを教えてもらうというより、自分でも気づいていなかった答えを探しにいく作業なのかもしれません。




そして最近は、頭の中に浮かんだものを形にすることが、とにかく楽しくて仕方ありません。


王妃を書いていたと思ったら、

急に大型人狼を煮込みたくなって、

魔法少女のワンシーンを思いついて、

あ、そういえば出産レポも書きたいな、

となったりします。


作品一覧だけ見ると、自分でも統一感がありません。

でも、不思議なことに、あとから振り返ると、


人はどう生きるのか。

人と人は、どう繋がるのか。


そんなことばかり書いている気がします。


もしかしたら、こういうものが「作風」というものなのかもしれません。



私は、2026年2月28日に活動を始めたばかりの、まだまだ駆け出しの創作者です。


十年以上読み専だった人間が、ようやく書く側へ一歩踏み出したところです。


だから、もし文章のどこかにAIらしさを感じても、

「ああ、この人は今も勉強しながら、自分の言葉を探している途中なんだな」

そんなふうに、少しだけ温かく見てもらえたら嬉しいです。



今日もたぶん、AIと何十回も「違う」を繰り返しながら、頭の中にある景色を言葉にしています。


遠回りばかりですが、そうやって少しずつ、その景色を誰かへ届けようとしています。


まだ上手くできないこともたくさんあります。



それでも、その時間がとても好きです。



ちなみに、このエッセイを書くのに、プロンプトを打ち直した回数は62回でした。


「違う」

「いや、惜しい」

「もっとこう……」

「そこはすごく良い。でも、今ほしいのはそれじゃない」

「……アアアアアァァッ!」


そんなやり取りを、延々と繰り返していました。


たぶん、普段の小説を書いている時も、だいたいこんな感じです。

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― 新着の感想 ―
最近、AI創作やコンテストに関するこういう議論って本当に増えましたよね。 AIが生成した文章に対して色んな思いがあるのはよく分かるのですが、世間の議論って「書き手」の方にばかり意識が向いている気がしま…
このエッセイもAIで書かれたものだったのですね。とても自然で白鐘さまのお気持ちが作品の中にあふれていると思いました。 私はAIで検索の補助と感想をもらうことをしてもらっています。名詞が出てこなくて、説…
 白鐘様へ  はじめまして。  作品、とても興味深く読ませて頂きました。  最近、AIのことについてのエッセイが多かったので、何でだろう…と気になっておりました。  私はまだAIを使ったことはありませ…
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