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ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


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第43話 そうだ、ミルクを加工しよう

 私は、仕入れてきたミルクを目の前にして、バターと生クリームを作ってみることにしました。

 前世の記憶ではミルクをペットボトルや瓶に入れてひたすら振ると作れたはずです。

 でも、ここは魔法のある世界。乳脂肪分を分離させていくだけなら、魔法でもできるのではないのでしょうか。

 私はふとそんなことを思い、ひとまずは適当な量を土魔法で作った固めて作った容器に入れます。

 そこへ、水魔法をかけて乳脂肪分だけを分離させていきます。


「何をなさってらっしゃるのですか、レチェ様」


 ミルクの入った容器とにらめっこをする私を見て、イリスが声をかけてきました。


「気が散るので、今は話しかけないで下さい」


 今はとにかく集中力がものを言います。

 私のことがさらに気になったようですが、イリスはそのまま立ち去って行ってくれました。


 五分くらい経過したでしょうか。

 ミルクの表面には白い塊がかなり浮いてきました。

 水魔法を使って、水分と乳脂肪分を分離させただけなんですが、意外と早く効果が見られましたね。

 浮いてきた白い塊を、私はおそるおそるすくい取ってみます。

 匙ですくってみた感じ、なんともドロッとした感じですね。これがクリームだなんて信じられませんね。


「ちょっとかき混ぜてみましょうか」


 泡立て器なんてものはありませんから、ちょっと大きな木べらでかき混ぜてみます。


「うう、力が要りますね」


 思った以上に大変でした。長々と混ぜるのは本当に疲れます。

 そこで、電動泡立て器の仕組みを思い出してみます。


「そうか、こうしてみればいいのではないでしょうか」


 そう思った私は、きれいで真っすぐな土の棒を魔法で作ります。

 その土の棒を、ミルクから分離させた乳脂肪分の中に突き刺します。


「この棒を中心に、風魔法を渦巻かせれば……」


 私は風の強さに注意しながら、棒の周りに風を渦巻かせます。

 少しずつですが、まだ少々水っぽいクリームが渦を巻き始めます。

 これ以上強めては飛び散ってしまいそうですので、小さく渦巻き始めた時点で魔力の調整を止めて、クリームをかき混ぜていきます。


「これなら楽ですね。どんどんと混ざっていきますね」


 しばらく混ぜていると、よくお菓子作りで見たことのあるクリームの状態になっていきます。そうそう、こんな感じですよ。

 風を止めて棒を引っ張ります。棒にクリームがついて来て、ピンとした角が立っています。

 なんてことでしょうか。すごく感動してしまいます。

 それならばと、私はとある方法を思いつきます。

 先程と同じように土魔法で容器を作り、棒が差し込めるだけの穴を開けたふたをかぶせます。

 そこに土の棒を差し込んで、先程のように風魔法を棒先端部分に起こします。

 容器の中ではミルクが勢いよく回転して、脂肪分と水がどんどんと分離していきます。

 感覚的には十数分というところでしょうか。ふたを開けて中の様子を見てみます。


「おお、塊が浮いていますね」


 先程のクリームとははっきりと違い、はっきりとした脂肪の塊です。

 塊を取り出して、さらに水魔法を使って水分を取り除いてやれば、なんてことでしょう、異世界自家製バターの完成です。


「イリス、来て下さい」


「なんですか、レチェ様。って、なんですかそれは」


 ほんのりと黄色い塊を見て、イリスは驚いています。この世界ではバターはまだ一般的ではないのでしょうね。少なくとも私は見たことないですし。


「ミルクから乳脂肪分を取り出した、バターというものです。こちらのミルクは脂肪分が抜けた低脂肪乳です」


「さっきから集中していたのは、これのためですか」


「はい、そうですよ。早速パン生地に練り込んでみましょう」


「分かりましたよ。やってみますね」


 渋々といった感じですけれど、イリスはパンを作り始めます。どのみち、夕食にはパンを出しますからね。

 固形分として不十分な状態のバターですが、パン作りではこの状態の方が都合がいいのです。

 まずはいつも通り、基本となるパンの生地を作っていきます。普段ならそこで発酵をさせるところですが、その前にバターを練り込んでは混ぜ、練り込んでは混ぜを繰り返します。


「これでよろしいんですよね、レチェ様」


「そうそう、そうですよ。後はいつものようにパンを焼いてくれればいいんです」


「レチェ様のお作りになったものですから大丈夫だとは思いますけど、まったく何をなさっていたのか……」


 イリスは文句を言いながらもパンを作ってくれます。

 さて、クリームの方もどうにかしませんとね。いつもの煮込みに放り込んでみましょうか。

 ちなみに残った低脂肪ミルクは、私が全部おいしくいただきました。


「うふふ、ギルバートと一緒に、食べてみた感想をお願いしますね」


「は、はあ……。なんとも不気味な笑みでございますね」


 イリスはいろいろと愚痴を言っていますが、ちゃんとパンを作ってくれています。

 最後は完成させたばかりの新しいオーブンで焼き上げます。

 さてさて、初めて自分で作ってみたバターとクリームですけれど、一体どんな味になるのでしょうか。完成が楽しみですね。

 私はうきうきした気分で、ウルフ肉のクリームシチューを作り上げていったのです。

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