マジで有名人!!
それから、数日が経ったが、私は体のだるさが取れず、自室でうだうだする日々だった。やっと、万全の状態が戻ってきた……と感じつつあった、ある日のこと、ベイルくんがやってきた。
「スイさん、具合はどうですか?」
「まぁまぁかなー。あ、レックスさん!」
ベイルくんの後から、レックスさんも部屋に入ってきた。
「スイ様、ご無事で何よりです。守り切れず、申し訳なかった……」
「いえ! 私は全然平気でしたので! レックスさんこそ、お怪我は?」
「はい。激しく動かない限り、問題はありません」
「……よかった」
私とレックスさんを交互に見るベイルくんだったが、痺れを切らしたように口を開いた
「実はスイさんに見てほしいものがあるんです。これ」
ベイルくんが私に差し出したのは、新聞だった。
「えー、新聞とか文字が小さいから読むの面倒だなぁ。ベイルくんが読んでよ」
私は拒否するが、ベイルくんは不満げに頬を膨らませる。
「いいから、見てください。ほら、ここ! この写真です!」
「えー、何さ。政治経済の話とか興味ないからね」
でも、写真を見る程度なら、と紙面に目を向けると……。
「……んんん?? これって!?」
ベイルくんが満面の笑顔で頷く。
「私とベイルくん、だよね??」
新聞の一面に乗せられた写真。そこには、大人のベイルくんと、その横に控える私の姿が。
「あの騒動の中、新聞記者が撮影したみたいです。それに、この見出しも読んでみてください」
ベイルくんが指をさした個所を読み上げてみる。
「なになに……ベイリール王子が呪木を除去。パートナーは大聖女!?」
「はい!」
興奮する私に、再び笑顔で頷いてくれるベイルくん。さらに、レックスさんも少し嬉しそうな顔で、何が書いてあるのか教えてくれた。
「数十年ぶりに王都内で発生した黒霧の対処が難航する中、ベイル様と正体不明の聖女による活躍で解決に至った、と書いてあります。いま、王都ではベイル様の勇士と、それを支える大聖女が何者か、という話題で持ちきりです」
「えええ……じゃあ、もしかして、私って有名人??」
「はい、有名人です! たぶん、王都でもスイさんほど有名な聖女は、リリアくらいです。ただ、ここ数日の話題性で言えば、スイさんが断トツだと思いますよ」
ま、マジかよ。
もちろん、ララバイ村を出るときは、大聖女として多くの人に認めてもらうことが目的だったけど……
こんなにスムーズに達成していいものなの?
実感ないんですけど。
そんなことを思いつつ、ニコニコしているベイルくんを見る。
もし、彼と出会ってなかったら、こんなことにはならなかっただろう。最悪、村を出てさ迷った挙句、荒れ地で死んでいたかもしれない。だとしたら、もっとベイルくんには感謝しないとなぁ。
「そこで、スイ様にお願いがあるのです」
レックスさんが話題を切り替える。どうやらこれが本題らしい。
「なんでしょう??」
「いま、王家の広報担当はマスコミ各社の対応に追われています。その多くは、ベイル様の姿が大人になること。そして、ベイル様のパートナーである聖女をなぜ隠すのか、という質問です」
凄いじゃん、私!
これからテレビや雑誌に引っ張りだこになるんじゃない??
有頂天になりそうだが、何とかレックスさんの説明に耳を傾ける。
「ベイル様の体に関しては、調査中と発表する予定ですが、スイ様のことはこちらとしても、隠しているつもりはありません。と言うよりも、ここでスイ様の存在とベイル様がドラクラに変身できることを民に知ってもらえば、将軍たちも迂闊に手を出せなくなります。なので、これはある意味好機。大々的にスイ様の存在を発表したいと考えています」
「も、もしかして……記者会見を開く、とか??」
レックスさんが頷く。
「記者会見、というわけではありませんが、王都の西部に発生した呪木の公開除去を行います。そのとき、民の前でスイ様がベイル様に血を与えて変身する。そして、力を得たベイル様が、木を切断すれば、民はお二人のことを英雄として認識するでしょう。ベイル様を次の国王に、という風潮も高まるでしょうし、王家の権威も上がること間違いありません」
なるほどーーー!
私ったら必死に戦っているだけのつもりだったけど、同時に色々な問題を解決していたんじゃない??
さすがは大聖女だわ!!
「すべて、スイ様のおかげです。何とお礼を申せばいいのか」
膝を付き、私の手を取るレックスさん。
「いえいえいえいえ、私なんか私なんか!」
思わず赤面し、頭を右へ左に振っていると、ベイルくんがどこか不満げにこちらを見ていた。そして、彼が口を開きかけたそのとき、部屋の扉がノックされる。
「何か?」
レックスさんの声に反応し、いつもお世話してくれているメイドさんが顔を出した。そして、どこか怯えた様子で言うのだった。
「あの、スイ様にお客様が……」
「わ、私に?」
来客なんて心当たりがないけど、誰なのだろう。メイドさんは頷き、来客者の名前を口にした。
「それが、ビーンズ将軍が会いたい、と」
「はぁ?」
あの、オッサン……今度はどんなケチをつけにやってきたんだ??
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