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せめてお風呂に入ってから…

「……あれ?」


どれだけ移動したのだろう。

たぶん、十分や二十分だと思うけど、目が覚めた。吐き気は消えたが頭痛が少し残っている。でも、これならもう大丈夫かも。と、身を起こしたが。


「うぅぅぅ……。ちょっと貧血っぽいな」


「聖女様、無理をしないでください。そろそろ城に着きますので、自室で休みましょう」


どうやら、まだベイルくんの膝の上だったらしい。


「そうだね。この感じなら、寝れば治りそう」


「はい。たっぷりとお休みになると良い」


ちょっと照れ臭いなぁ、と思っていたら、馬車が止まる。到着したようなので、私は自分の足で降りようとしたのだけど……。


「ちょ、ベイルくん!?」


ひょい、とベイルくんに持ち上げられ、彼は城の奥へと進みだした。


「ちょっと! 自分で歩けるよ! 降ろして!」


「ダメです。私はこれ以上、聖女様に無理をさせたくない」


「いやいや、別に歩くだけなんだから!」


しかし、ベイルくんは降ろしてくれず、城の人たちに見られるたび、何やらこそこそと囁かれて、本当に恥ずかしかった。


って言うか、あんたたちも止めろよ!

大人になったベイルくんの顔、知らないだろ??


結局、私は為す術もなく、お姫様抱っこの状態で自室まで運ばれてしまう。


「もういいでしょ! 降ろしてーーー!!」


私が足をバタバタさせると、ベイルくんは少し乱暴に、私を放り投げる。


降ろせと言ったけど、もっと大事にしろよ!!と思ったら……バフンッ、とベッドの上に。


「な、なに……?」


たまげていると、ベイルくんが体を覆っていたマントを剥いで、私がいるベッドに上がってくる。


「……ベイルくん? どういうつもりかな??」


「一緒に休むだけです」


「一緒になんて……ダメだよ! 君は自分の部屋で寝ればいいじゃないか!」


「しかし、聖女様はいつも一緒に寝ようと言って、私をベッドに連れ込むではありませんか」


「そ、それは君が子どもだから! 今は違うし!」


「何も違いはありません。一人の男です」


「そうじゃなくて……! こら、顔を近付けるな……!!」


「今日こそは、逃がしません」


に、逃がさないって……。

どうして、君は大きくなると、そうエッチになるんだ??


だけど、私は私で、疲れているのか、抵抗する力が残っていない。


「せ、せめてお風呂に入ってから……」


入ってから、って何をするつもりなんだ、私は!!


嗚呼、もうダメだ。

このまま、ベイルくんに……。


「せ、聖女様……」


「ん?」


なぜか苦し気なベイルくんの声。


「血をいただけないでしょうか」


「……」


よく見ると、彼の体から蒸気のようなものがモクモクと上がっている。


これは……いつものパターンだ。


「絶対にダメ!!」


「そ、そんな……」


ブシューーー、っと勢いよく蒸気を吐くと、ベイルくんは元の小さな男の子の姿に。こうなったら、こっちのもんだ。いっぱい説教してやるんだから!


と、思ったが……。

彼は私のお腹の辺りで、すやすやと寝息を立てて眠っている。


「そっか。君も大活躍したものね」


しばらく、彼の頭を撫でてやっていたが、私もすぐに眠くなってしまった。


「おやすみ、ベイルくん」


色々と大変だったけど、一件落着かな。でも、夏祭りは行きたかったなぁ。それは来年のお楽しみ、ってことにしておこうか……。


後日、王子のパートナーである私が、部外者を城に連れ込み、あらぬ行為に及ぼうとしていた、という噂が流れ、ベイルくんに問い詰められたのだが……


このときばかりは、本気で彼を怒鳴りつけてやるのだった。

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