君、エッチじゃない?
呪木に私の血を与えると、枯れるようにしなびて行った。ただ、これだけ大きい呪木になると、浄化に時間がかかり、霧の排出もなかなか止まらない。
「それにしても、さっきのドラクラは何者だったんだろうね」
呪木が完全に活動を停止するのを見守りながら、私はベイルくんに聞いてみる。が、彼は何も言わなかった。
「ベイルくん?」
顔を覗き込むが、なぜかそっぽを向いてしまう。
「おーい、どったの?」
「…………」
「何か怒ってる?」
「……聖女様は」
無視が続くのかと思われたが、ちゃんと話してくれるらしい。
「聖女様は、私よりも襲撃者を応援していました。それに傷付いただけです」
「応援? 私が??」
どういうこと……?
「あ、もしかして、私が敵のことをイケメンって言ったから??」
「…………」
やっぱり!!
「もう! 君は大きくなっても、お子様なんだね。すぐ拗ねるんだから!」
「聖女様は私だけの聖女様です。私だけを見ていただきたい」
「はいはい。君が一番だよ。一番かっこいいから」
ベイルくんがこっちに向いてくれた。これで機嫌も直ったかな、と思ったら、彼が突然私の手を取る。
「レックスよりもですか?」
「ど、どうしてレックスさんが出てくるのさ……」
と言いながら、明らかに目が泳いでしまう私。せっかく霧も晴れて、一件落着だと思ったのに、こんな答えにくい質問に頭を悩まされるなんて!!
そんなときだった。
「きゃあああぁぁぁーーー!!」
どこからか悲鳴が。
私はどさくさに紛れ、ベイルくんから離れて、悲鳴が聞こえた方に指をさす。
「ベイルくん、向こうから悲鳴が!」
それは私たちが来た方向。
つまりは、フォグ・スイーパの皆が待っている方向だ。
「助けに行きましょう。シシマルに乗って!」
シシマルが駆けて、仲間たちの方へ。
途中、後ろで手綱を握っているベイルくんが、私の首筋に口元を近付けてきた。
「え、ちょっと……また?」
「何があるか分かりません。少しだけ頂戴します」
「いいけどさぁ、今日何度目なんだよ……」
ベイルくんの犬歯が首元に突き刺さる。この形で血を吸われるのは、初めて出会ったとき以来なのだけれど、何だか感覚が違った。何て言うか、痛さの中に変な快感があると言うか……
包み隠さず表現すると、気持ちよさがある。もしかして、フォグ・スイーパは同調を繰り返すことで、絆を深めると言うけれど、これもその効果なのかな?
ベイルくんは私の首筋から口を離すと、耳元で囁くように言った。
「聖女様、貴方は私だけのものです。この味、他の者には知られたくない。だから、相手がフレイルであっても、他の者には血を許さないでください」
「あ、あれは非常事態だったから仕方なく……ひゃいっ!!」
ベイルくんが首元の傷口を急に舐めてきたせいで、変な声が出てしまった。
「約束してくださいますね?」
「や、約束も何も……私の血はベイルくんしか反応しないから。君以外に与える意味がないと言うか、必要がない言うか」
「だとしたら、私たちは強い運命で結ばれている。出会うべくして出会った。そう感じませんか?」
「そんなの……分からないよっ!」
「私の思い上がり、勘違いと言いたいのですね……」
「だから、そうじゃなくて……私もベイルくんとの出会いは、大切なものだと思っているけど……」
「聖女様……。とても嬉しいです」
「ば、馬鹿! そろそろ皆のところに到着するよ? 気を抜かないでよね??」
「もちろんです。聖女様の前で失敗する姿を見せられませんから」
「期待しているからね――ひゃいっ!」
またも、首筋にある傷口を舐められた。
「次、急にやったら怒るからね! ちょ、こら! 変なところ触らないっ!」
な、なんかさ……。
気のせいかもしれないけど、大人になったベイルくんって……
ちょっとエッチになってない??
そうこうしている間に、皆のもとにたどり着いたのだけれど……。私たちが駆け付けた頃には、そこは
地獄みたいな状況となっていた。
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