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これって木ドン?

何体かデモンの邪魔は入ったけど、私が感じた通りの場所に、呪木はあった。そこは、ベイルくんの儀式のときに霧が発生した王都西部から離れた場所で、将軍の屋敷からそれほど離れていなかった。


「西部に発生した霧が、将軍の屋敷まで届くほど急激に拡大するなんて、不自然だとは思いましたが……」


「屋敷を襲った霧の原因は、西部のやつと違ったってことだね」


「はい。しかし、何十年も霧が発生しなかった王都に、二本目が続けて……?」


「うーん……。考えるのは後だね。すぐに引っこ抜いちゃおう!」


「そうですね」


除去すると、私は別の呪木の気配を察知する。


「ベイルくん、あっち」


「確かに、西部の方向ですね」


シシマルのおかげが、すぐに西部エリアへたどり着きそうだったのだけど……。ベイルくんがシシマルに止まるよう指示を出した。


「聖女様、西部エリアに着く前に……よろしいでしょうか?」


「ああ、うん。血が足りなくなってきたんだね」


私たちはシシマルから降りて、木の影へ移動する。


「ちょっと待ってね。……あれ、短剣がないぞ」


さっきの戦いでどっかに落としちゃったのかな?


いつまでも短剣を探す私に、ベイルくんが距離を詰めてくる。焦らすつもりはないけど、我慢ができないみたいだ。


「ご、ごめんごめん。もう少し待ってね!」


どうしよう、見付からない。

もう自分で指先に噛みつくしかないのかな。でも、自分でやるの、ちょっと怖いんだよね。


「聖女様、短剣がないのですか?」


「うん。そうなんだけど――」


って、近い!

気付けば、ベイルくんが目の前に!


「なければ、別の方法でいただいても、よろしいでしょうか?」


「べ、別の方法って?」


さらに顔を近付けてくるベイルくん。

思わず一歩後ろに下がったが……背中には大木が。


これは壁ドン。

いや、(もく)ドン状態だ。


逃げ場を失った私に、ベイルくんは言う。


「先程と同じ方法です」


えっと、先程と同じってことは……。


「どんなだったっけ?」


「誤魔化さないでください」


そう言って、ベイルくんは私の腰に手を回してきた。


ううう……。バレている。


さっきの変身は、私がベイルくんを抱きしめながら、血をあげたんだよね。でも、あれはベイルくんが小さかったからできたことで、大人になられると、その……


すごく恥ずかしいんですけど。


「だ、ダメ! 他にも方法はあるから! ほら、短剣がなくても指を噛めばいいし、ベイルくんのカタナを使ってもいいし!」


「違うのです、聖女様」


違うの……?

何が??


ベイルくんは私の首筋に、口元を近付けると、低い声で囁く。


「先程の同調は、今までと何かが違った」


「そ、そう……でした?」


「はい。あの瞬間、今まで以上の高揚感がありました。そして、その高揚感に比例するかのように、私は力に溢れました。だから、同じ結果が得られるのか、試させてください」


「べ、ベイルくん。分かったから、耳元で話さないで」


「どうして?」


「どうして、って言われても……」


何かムズムズするからだよ!


「良いから、一度離れて!」


スッ、と体を離すベイルくんだったけど、それでも十分に近い。そして、凄く見つめられている……。


「離れました。離れたので、よろしいですか?」


「よろしくないよ! だって……さっきと同じってことは」


男の人に抱きしめられちゃう、ってことでしょ?


さっきは不可抗力って言うか、死に物狂いだったし、流れでそうなったけど、改めて「抱きしめさせてください」ってことになると……恥ずかしいって!


それなのに、ベイルくんはただ黙って私を見つけるだけで、何も言ってくれない。


「な、なんで黙っているの?」


「聖女様の返事を待っているだけです」


「ダメって言ったら、どうするの?」


「傷付きます」


「そんなこと言われても……」


「お願いします」


お願いされると、困るよぉ。


「わ、分かった……よ」


すると、ベイルくんは再び私の腰に腕を回し、ちょっと強引に引き寄せてきた。そして、抱きしめられてしまう。


これだけ体を密着しちゃったら、心臓の音が……。


「あまり強くしないで……」


「我慢してください」


そして、首筋にチクッと痛みが。たぶん、ベイルくんの犬歯が食い込んだのだ。血が吸われていると、声が漏れそうになる、変な感覚だ。頭がぼーっとして、少し痺れるような、熱っぽいって言うか。そうか、これが同調なのか。


「気持ちいい……」


「今なんと?」


「な、なんでもない!!」


その後、何だか気まずくなってしまい、王都西部に到着するまで、私は黙り込んでしまうのだった。

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