将軍の意地
私は肩から流れる血の力で、大地にアクセスして、デモンを何体か拘束した。でも、私の力では、せいぜい五体の拘束が限界。そのせいで、残った何体かは動けないデモンたちをかき分け、私たちに向かってきたのだが……その進行を阻む人たちが。
「やめろーーー!」
「フレイル様、お助けします!!」
騎士たちがフレイルくんを守ろうと、素手で立ち向かってくれたが、デモンの怪力に叶うことはない。さらに、私も拘束の負担で頭痛を感じ始めている。このままだと、長くは……。
「ベイルくん!! マジで限界ーーー!!」
「聖女様、今向かいます!」
限界宣言に私の方へ駆け付けようとするベイルくん。しかし、その瞬間、将軍が腰のカタナを抜いて、ベイルくんに斬りかかった。
「正気ですか、将軍!」
寸前でカタナを回避したベイルくんは、怒りと困惑に顔を歪めつつ、将軍に問いかける。
「我々が争っている場合ではありません! この状況、貴方だって死の危機に迫られているのですよ!?」
「この程度の修羅場で、命を落とす私ではない!!」
将軍の怒号は空気が痺れるような、凄まじい気迫があった。そして、カタナを構え直し、次の一撃に備える。
「我々将軍家は度重もテロを防いできた。死と隣り合わせの状況でもカタナを振るい、この国を何度も守ってきたのだ。そのサムライが、デモンの群れに囲まれた程度で、怖気づくか!」
将軍の声に激励されたのか、倒れていたサムライたちが立ち上がる。そんな彼らに背中を見せながら、将軍は言い放った。
「このまま王家が情けない態度を見せ続ければ、いずれ国は滅びる。今こそ、我らのような強いサムライが立たなければならないのだ。国のために! そして、貴様のように国の未来を脅かすものは、ここで葬らなければならない。それが誰であろうとも!」
「将軍、貴方は……」
しかし、そんな彼らもデモンの群れに囲まれていた。いくらなんでも、絶体絶命と思われた、そのときだった。
「まさか……!」
ベイルくんが動揺を見せる。
同時に、彼の体からもくもくと蒸気が上がり……。
「なんだ?」
「何が起こっている?」
サムライたちが様子を見守っていると、蒸気が晴れて、そこには……
ちびっ子になったベイルくんの姿が!!
「べ、ベイリール様?」
そんなベイルくんを見て、将軍が思わず口走る。
「あっ!」
私が指をさすと、将軍は自らの口を隠した。
「将軍、これで信じるに足る証拠、もしくは証人が現れたんじゃないの!?」
「……」
「ねぇ、皆見たよね? 聞いたよね??」
サムライたちは黙るが、騎士のみんなは頷いた。
「確かにベイリール様だ!」
「将軍も認められた!」
「これ以上、ベイリール様をテロリスト扱いするのであれば、私たちも黙っていません!」
よしよし!
騎士の皆も確信を持ったら、強気になってくれたよ。
どうだ、将軍!
この状況、言い逃れはできまい!
さぁ、どうするんだい!?
デモンたちの攻撃に何とか耐えながら、全員の関心が将軍へ向けられる。すると、彼はベイルくんの前で膝を付くと、首を垂れたのだった。
「ベイリール様、これまでの非礼をお詫びします。どうか、我々をお助けください」
「……はい、もちろんです!」
や、やった……!!
でも、ベイルくんと私の間には、たくさんのデモンの群れが。
「スイさん、今行きます!」
それなのに、ベイルくんはデモンたちの間を掻い潜りながら駆けてくる。途中、デモンの腕が当たってしまい、ひっくり返ってしまうベイルくん。
「ベイルくん!」
どこか切ったのだろうか。
頭から血が流れているが、それでもベイルくんは私の方へ走る。
そんな彼の前に数体のデモンが。
「ベイルくんに近付くな!!」
私はデモンをさらに拘束する。
五体が限界かと思ったけど、八体は拘束しているかな?
だけど、めちゃくちゃ頭痛い……!!
この負担、リリアちゃんが寝込むのも分かるわ。
「スイさん!!」
「ダメ、後ろ!!」
あとちょっとなのに、ベイルくんの後ろに巨大なデモンが。そして、そのデモンが振り下ろした拳が、ベイルくんの頭に。
「わあぁぁぁーーー!」
だが、間一髪、ベイルくんは飛び出すようにして、それを回避すると、何とも絶妙な具合に私の腕の中へ、すっぽりとはまるのだった。
「お待たせしました」
「もう、ヒヤッとしたよ」
「スイさんも、傷は大丈夫?」
「平気平気。むしろ、ちょうどいいんじゃない?」
笑顔を見せるベイルくんに、私は頷いた。
「いけるかい?」
「はいっ!」
私はベイルくんを抱きかかえ、肩の傷に寄せる。
「天にまします我らが星の巫女よ。今こそ我が血に貴方の祝福を。そして、彼に魔を払う力を与えたまえ!」
今度の今度こそ……反撃開始だ!
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