つらい恋心
「あの日から、リリアの傍から離れないんだ」
そう呟くフレイルくんの瞳は、孤独で溢れていた。そんな彼を見てられなくて、私は馬車の小窓から外の景色を見る。ちなみに、今は夕暮れ時。西日がフレイルくんの悲しみを一層のこと濃く映していた。
「フレイルくん……。君は若いのに、つらい恋をしているね」
私が哀れむと、フレイルくんが肩を震わせた。
「こ、恋!? なんのこと?? え、なに恋って??」
顔を引きつらすフレイルくん。……これ、もしかして。
「気付かれてないと思ってたの?」
「え、だって、そんな素振りは見せてないし……じゃなくて! なんの話しか、分かんないから! ぜんぜん分かんない!!」
「……そっかぁ」
これは大人として、何も言わない方が良いかもしれない。と思ったけれど、顔を真っ赤にしたフレイルくんが――たぶん、夕日のせいだね――観念したように溜め息を吐いた。
「やっぱり、バレバレ?」
「そうだね。まぁ、リリアちゃんは気付いてないみたいだけど。色々と気が利くの子なのに、その辺は鈍感なんだねぇ」
「……そうなんだよ」
肩を落とすフレイルくん。
「リリアは昔から兄さんのことばかり見ててさ、俺の気持ちなんて少しも気にしたことないみたい。兄さんは兄さんで、自分のことばっかり。そのせいでリリアは振り向いてもらうため、いつも必死。俺は俺で、そんなリリアを手伝うことしかできないし……」
ニヤニヤする私に気付くフレイルくん。
「スイさん、頼む! 絶対に兄さんとリリアには言わないでくれ!」
「オッケーオッケー! トランドスト王家の第二王子様が私の言うことを何でも聞くって言うなら、私も鬼じゃないさ。うん、黙っててあげましょう!」
「無理のない程度でお願いします……」
「うむ、苦しゅうない」
再び肩を落とすフレイルくん。いつも爽やかで元気な王子様も、好きな子のことになると情けないもんだねぇ。
「そういえば、この馬車ってどこに向かっているの?」
「ビーンズ将軍の屋敷だよ」
意外な回答に、私の目玉が飛び出しかける。
「ちょ、えええ?? そんなところ行ったら、私殺されちゃうでしょう??」
しかし、フレイルくんは真剣な眼差しで私を見つめてきた。
「実は、スイさんにはやってもらいたいことがあるんだ。休む時間もなくて、申し訳ないけど」
「う、うん。何をすればいいの?」
「言うまでもないけどさ、霧の除去だよ。今は霧から出てくるデモンたちを、フォグ・スイーパたちが各個撃破しているけど、呪木までは手を出せない状態だ。このままじゃ、霧はどんどん広がるだけだし、フォグ・スイーパたちだって体力の限界がくる。霧の奥にいるデモン。そいつを倒せるのは、スイさんと兄さんだけだ」
おおおおお!?
色々あったけど、最終的に手柄は私とベイルくんのところに転がり落ちてきそうだな。
もちろん、やってやるぜ!




