目を覚ますとそこは
目を覚ますと、そこには小さな裸電球が。
「腰痛い……」
ゆっくり身を起こすと、腰だけじゃなくて、全身が痛いことに気付く。どうも硬いベッドで寝ていたらしい。
「えーっと、何で私は……」
寝てたんだっけ?
って言うか、ここはどこ?
壁は石造りの壁みたいだけど……。
視界の隅で影が揺らめいた気がしたので、そちらに振り向いてみると、壁に火のついた松明が設置されている。そして、その手前には……。
「鉄格子ってことは……地下牢、ってこと?」
ん?
んんん??
何で私は捕まっているの?
もしかして、無免許聖女ってことバレた??
いやいや、違うよ。
ちゃんと資格だって取ったし。
一点足りなくて不合格になる夢は何度も見たけど、これは現実だ!
じゃあ、何でだ??
田舎者過ぎて牢屋に入れられたのかな……
って、そんなわけあるかーい!
いやいや、バカか私は。
思い出した。思い出してきたぞ!
「レックスさん! ベイルくんたちは??」
私は立ち上がり、鉄格子を掴んで揺する。
「おーい! 目を覚ましたんで開けてくださーーーい!!」
声を上げるが、反応はない。
さらに五分ほど叫び続けたが……私の声がこだまするばかりだった。
「どないなっとんねん!!」
私はベッドに腰を降ろす。
そして、自分の身に起こったことを思い返してみた。
レックスさん、大丈夫かな。
リリアちゃんも、大変なことになってたし……。
ベイルくんとフレイルくん、喧嘩してないといいけど……。そして、思い出したのはレックスさんの言葉。
――まさか、将軍が……スイ様を?
どういうこと??
私は足りない頭で考える。幸い時間はたっぷりあったらしく、私は結論らしいものを導き出した。
「将軍が私を闇に葬ろうとした、ってこと……だよね?」
そして、拉致されて牢屋に放り込まれた。でも、だったら、既に殺されててもいいはず。
ありがたいけど、何で生きているんだ?
流石に私の足りない頭では、この疑問を解決することはできず、異様に静かな時間がただただ続いた。
「腹減った……」
こういうのってさ、臭いメシが出てくるものじゃないの??
今の私なら何だって食べるから、頼むよ……。しかし、ただ沈黙が続くばかりで、気付くと私は眠りについていた。
「何日経ったんだよ!!」
これ、何度目だろう。
目を覚ますと同時に怒りの疑問を投げかけた。
が、もちろん反応なし。
今が昼なのか夜なのか、それすらも分からない。腹も減っているし、もうイライラがマックスだ。
「このままじゃ狂っちまうぜ!!」
怒りに任せて石の壁を蹴るが、爪先が死ぬほど痛い。何をしても無駄なので、私は嫌がらせのように硬いベッドに再び横になる。
「あー、ちくしょう! せめて、風呂に入れろや……。いや、その前に食べ物を……」
いい加減、気力も失せつつあったそのときだった。
「スイさーん」
え?
いま聞こえたよね?
「スイさーーーん」
やっぱり、聞こえる!
遠いけど、誰かが私を呼んでいる!
この声、ベイルくんだ!!
私はバッと身を起こし、鉄格子の隙間から何とか外に出ようとする。
「ベイルくーーーん! 私はここだよーーー!」
私の声が石の壁に反響する。
きっと、ベイルくんならすぐに呼び返してくれて、こちらに走ってきてくれるはず。
しかし、ベイルくんの声はいつまでも返ってくることなく、逆に静かになってしまった。
「あれ? ベイルくん?」
幻聴だったの?
そんなことないよね?
半信半疑になりつつ、耳を澄ましていると……。
コツッ、コツッ、コツッ、と足音が。
やっぱり、ベイルくんがこっちに向かっているじゃん!
さすがは私の王子様だよ!
ちびっ子だけど、何だかんだ頼りになるんだよなぁ!!
「ベイルくーーーん……」
安心すると唐突な脱力感が。
それでも、ベイルくんを呼び続けると、彼の気配がすぐ傍まで近付いていることが分かった。
「ベイルくん!?」
「スイさん」
鉄格子の前に、彼が現れた。でも、それは……。
「遅くなっちゃったけど、助けにきたよ」
「ふ、フレイルくん……?」
「兄さんじゃなくて、ごめんね」
微笑みを浮かべる王子様は、ベイルくんではなく、フレイルくんだったのだ……。
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