リリアの想いと怪しい雲行き
議事堂内の人々が落ち着きなく小声で気持ちを吐露する中、リリアちゃんが入室する。上半身は白、下半身は赤の装束をまとい、ゆっくりと歩くリリアちゃんはまさに聖女だ。
でも、リリアちゃんは私の目の前を通り過ぎるとき、ちらりと意味上がり気な視線を残していくのだった……。
「リリア、始めなさい」
ベイルくんの隣に膝を付くリリアちゃんに指示を出す将軍。リリアちゃんは頷くと、ゆっくりとした動作で、ベイルくんの方を見て、微笑みを浮かべた。
「緊張してる?」
小声だけど、リリアちゃんの声は私のところまで聞こえた。それに対し、ベイルくんは頷いて応えるが、顔に「困ってます」と大きく書かれている。
「大丈夫。ベイルは私がドラクラにしてみせる」
リリアちゃんの力強い目。
彼女の強い想いを感じずにはいられなかった。
「ベイルはリラックスして、目を閉じているだけでいいから。全部、私に任せて」
優しくリードしようとするリリアちゃんだけど、ベイルくんは不安げな目を私に向ける。リリアちゃんはその視線に気付き、振り返って私を睨むのだった。
この目つき、あの将軍の娘だって頷けるわ……。
リリアちゃんはベイルくんに向き直ると、手を伸ばす。それは、ベイルくんの手を優しく包み込んだ。
「私がベイルをドラクラにする。絶対に……」
その光景を見たとき、私の頭の中に思い浮かんだのは、ジョイのことだった。
「儀式を始めよ!」
将軍が指示を出す。
すると、どこからか正装姿の女性が現れ、リリアちゃんの横で膝を付く。
そして、美しい一本の刃を差し出した。
厳かな雰囲気の中、リリアちゃんは刃を手に取り、じっと見つめる。リリアちゃんの緊張が議事堂内に広がるようだった。
リリアちゃんは大きく深呼吸をした後、目を閉じて祈った。
「天にまします我らが星の巫女よ。今こそ我が血に貴方の祝福を。そして、彼に魔を払う力を与えたまえ」
それは、祈りそのものだった。自らの想いを、天に届けるための祈り。そして、リリアちゃんは目を開き、刃を自分の指先に突き刺そうと――。
「ビーンズ将軍! 緊急事態です!!」
突然、議事堂内に入り込む兵士らしき男の人。
「儀式中だぞ」
追い払おうとする将軍だったが、兵士の人は真っ青な顔で叫ぶ。
「しかし、霧が!! 王都内に黒霧が発生しました!!」
それを聞いて、さすがの将軍も顔色を変えた。
「王都内に霧だと? だとしたら、何十年ぶりのことなのだ……」
ベイルくん、どうやら君の誕生日はとんでもないことになりそうだね……。
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