このおっさん、圧がやばい
「今回、我々はベイリール様と非常に高い同調を可能とする聖女様を発見しました。この度の儀式、ベイリール様と同調する聖女様は、その方を推薦したいと存じます」
レックスさんの進言は、傍聴席にいる百人近い人々をざわつかせた。ベイルくんがドラクラ化できないことは周知のこと。きっと、みんな混乱しているのだろう。
そんな混乱の声を聞きながら、私は頬が緩むのを耐えなければならなかった。
みんなが混乱すればするほど、私の登場はインパクトが大きくなる。
ここで一気に名を轟かせてやろうじゃないの!
「静粛に。静粛に!」
進行役の声で、議事堂のざわめきは収まる。そして、王様の発言に注目が集まった。
「ベイリールの覚醒が遅れていることは、多くの人が知るところ。もし、確実にベイリールをドラクラ化できる聖女様が存在するならば、会っておきたいところだ。レックス、その聖女様を――」
いよいよ出番だ……!と思ったが。
「なりません」
低い声が議事堂内に響く。
言うまでもない、ビーンズ将軍だった。
王様は顔を引きつらせながら、将軍の様子を窺う。
けど、当の将軍は眉間にシワを寄せ、鋭い視線をどこに向けるというわけでもなく、静かに言うのだった。
「必要ないでしょう」
「そう、でしょうか」
「……」
将軍の取り付く島もないといった態度に目を泳がせる王様。
くうぅぅぅ、すぐにでも名乗り出て「やってみせるから見てなさいよ!」と言いたいところだけど、レックスさんには黙ってろって言われてるしな……。
ここは頼りない王様を応援するしかない。
お願い、王様。頑張って!
「しかしですね、将軍。ここ何年もベイリールはドラクラ化に失敗してきました。それを可能とする聖女様が存在するのなら、同調の様子を見たいとは思いませんか?」
「いえ」
短い答え。
それは強い意志を感じる……
というよりは、絶対に聞き入れないぞ、という頑固で意地悪なものを感じずにはいられなかった。
それでも、王様は頑張ってくれる。
「私は、見たいなぁ」
よ、弱いって!
もっと威厳ある感じで抵抗してよ!
だけど、将軍は黙り込んでしまう。王様のシンプルなお願いは、逆に断るのが難しい、のかな……?
すると、ついに将軍の視線が王様に向けられた。ギロリ、という音が聞こえてきそうなくらい、迫力のある視線だ。
「ベイリール様のドラクラ化は、トランドスト王家とライオネス家の未来に関わってきます。その意味、王もお分かりかと」
こ、怖えぇぇ……。
リリアちゃんのパパ、めっちゃ怖いじゃん!!
あんな言い方されたら、普通は引き下がっちゃうよな……。だけど、王様は頑張って反論してくれる。
「分かっていますとも。だからこそ、ベイルを確実にドラクラ化させる聖女様を見てみたいと私は言っているのです。レックス、その聖女様の顔だけでも見せることは――」
強行する王様だけど……。
「ならん!」
将軍の怒号。
今まで静かだった議事堂が、より静かになった気がした。将軍は深く息を吐いた後、怒鳴ったことなどなかったように、低い声で言う。
「ベイリール様のドラクラ化、その相手はリリアであるべき。違いますか?」
「それは……」
王様が言い淀む。
完全に将軍の圧力に屈しているじゃない!
それでも、王様が言葉を発しようとしたけど、将軍はそれを遮ってしまった。
「リリアを呼べ。儀式を始める」
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