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こうして運命は作られた

最後はヒロイン視点です。

私の名前は、カトリーナ マドック

公爵家にあたるマドック家の長女。

更にいうと、某乙女ゲームの悪役令嬢だ。


…うん、ここまで言えばわかってくれるよね。

流行ってたよね、悪役令嬢転生モノ。

あれです、あれ。

なので、いつ思い出したとか、ゲームの内容とかは端折ります。うん、ゲーム内容も、思い出しパターンもお約束なやつだったし。

悪役令嬢だという事でお察しいただけるかと思いますが、末路はもれなく…ね。

うん、絶望したよね。

だけど、まあ、いつまでも絶望していられないし。

私にとってのバッドエンドは、すぐそこまできている。

そう、思い出したのが遅かった。

なぜそこはお約束どおり、幼少の頃じゃなかったのか。

小一時間問い詰めたい、自分に。

幼少の頃思い出してたらお約束どおりに色々対策練れたのに!

…まあ、過ぎた事をいつまで言ってても意味ない。

私は考えた。考えすぎて、一時期具合が悪くなったほど、考えた。

で、1つだけ思いついた。


ヒロインとヒーローの出会いを私が先にこなしたら良いのでは?…と。


幸い私と、私を破滅に導く婚約者のヒーローは、顔合わせをしていない。

何故なら、婚約者…シルヴィーノ様は政略結婚を嫌がり、顔合わせとなるお茶会やら、パーティーを尽くすっぽかしてくれたから。

だから、私の顔は知られていないはず。


なら…私が一年後に登場するヒロインの代わりにシルヴィーノ様の悩みを癒してあげたら、私を好きになってくれる?

毛嫌いしている政略結婚の相手ではなく、ちゃんと1人の女性として、見てもらえたら。

バッドエンドに、ならない?



そして、侍女や護衛にお願いして、シルヴィーノ様の行動を調べてもらった。


…案外簡単に情報は手に入り、出会うチャンスもあっさりと訪れた。


何故ならシルヴィーノ様はお忍び好きだったから。


うん、確かにヒロインとの出会いもお忍び中の町中でバッタリだったよね。

侍女たちごめん、私知ってたわ、出没ポイント。


まずはファーストコンタクトをとるため、出没ポイントにこっそりと訪れてみた。

その場所は庶民の憩いの公園で確か人が賑わっていたはず。

最初はすぐに探せるか心配していたが、あっさりと見つかった。


庶民の憩いの場所のはずの公園にやたらとキラキラしている人がひとりボンヤリと佇んでいた。

そして、彼の周りは不自然なほど、ポッカリと空いていた。

やだ、めっちゃ目立っている。

あの空間だけキラキラしている。

周りの風景に合ってなさすぎる。

それだけならまだ良いけど…あの隠れてる風の大量の護衛、怖すぎる。

王子のお忍びだから、護衛居るのはわかるけど…多すぎない?お忍びになってなくない?もう少し隠れられない??

え?マジ私これからあそこに行くの?

行った瞬間、護衛に切られない?

バッドエンド迎える前に、今日が私の命日になったりしない?


そんな感じで小一時間、自問自答していたけど。

意を決して彼に近寄って行った。


私の運命は私が自分で作る。

ゲームのシナリオになんか負けない。

そう決意をして、自分の羽織っていたストールを差し出して声をかけた。


「あの、大丈夫ですか?」




※※※



あれからシルヴィーノ様との密会らしきものは続いた。

お互いの護衛が多すぎて全然密会だとは思えなかったけど。


密会中の話の内容は、彼の愚痴がほとんどだった。

お互い名前も身分も伏せていたけど、彼の愚痴を聞くと、彼の身分はバレバレだし、それ以上話すと、お城の内情漏らすことになるよ?と途中でストップをかけたくなった。

この人が王子で大丈夫か?と何度思ったことか…。

話を聞くうちに、なんだか前世の時飼っていた、シベリアンハスキーを思い出した。

おバカ可愛いっていうやつ?

頭をヨシヨシってしたくなったのをグッと我慢した。


だけど、まあ…。

気持ちはわかる。王子様業って大変だよね。

優秀な人と比べられるって、辛いよね。

限界までやってるのに、認められないのは、しんどいよね。


情が湧いたのだろうか?

このおバカ可愛いハスキーもどきなシルヴィーノ様と話しているうちに、ドキドキする時がたまにある。

そして、ドキドキの後に訪れる罪悪感。


だけど、そんな事は二の次で。

私の気持ちなんてものは、どうでもいい…。うん。

まずは生き延びなければ何も始まらないし。


私は最後の仕上げとばかりに、彼にさよならを告げた。

もちろん、本当にさよならをするつもりは無い。


私が運命の相手であり、婚約者だという事をドラマチックに告げるために、私の家の家紋入りのハンカチを落としてそれを拾ってもらう。

そう、これが私なりの攻略。


…って私の家の家紋知ってるよね?大丈夫かな?

家紋だけじゃなく、名前をデカく目立つように書けば良かったかもしれない…。


ハンカチを落として逃げた直後に少し心配になった。

うん、大丈夫…ハスキーなら、家紋が読めなくても、匂いできっと辿り着くはず…。


そんな頓珍漢な事をしばらく考えていたけど。

数日後、大量のバラの花とともに訪れたシルヴィーノ様を見た瞬間、杞憂だったということが、判明した。






「カトリーナ、君は私の運命、私の光。愛してるよ。」



そんな愛の言葉を今日もシルヴィーノ様は私に捧げてくれる。

その度に、会うこともなくなったヒロインの事を思い出し、胸が痛む。

だけれど…。

ヒロインの分まで、シルヴィーノ様を大切にするから。

運命の人に成り代わった罪は。

神さま、どうか許してほしい。


そんな懺悔を心の中でしながら。


「私もです。シルヴィーノ様。」


そう返事を返した。

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