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黄昏の夢  作者: ろっかふ
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私だけの場所

 あなたはリミナルスペースという言葉を聞いたことがあるだろうか。リミナルスペースとは、人と日常が消えたことで、現実なのに夢の中のように感じられる「境界の空間」である。簡単にいえば、恐怖を感じる景色ということだ。この話を初めて見た時は、そんなことがあるがないと思った。私はホラー映画などの怖がらせてくるものには慣れっこで、リミナルスペースも同じようなものだと思っていた。それは間違っていたのかもしれない。

 私が初めてリミナルスペースを体験したのは、夢の中であった。リミナルスペースに関する動画をSNSで見て、興味を覚えた夜のことだった。夢の中で私が目を覚ましたのは、どこか見覚えのあるショッピングモールのようなところだった。ホールの左右にある店はどれも見覚えがあり、並んでいる商品を見たことがあるような気もした。試しに服屋に入ってみると、そこはやはり近所のショッピングモールの中の服屋であった。しかし、不思議なことに人がいない。どこにもいない。いつもは平日でも、かなりの人がいて騒がしい場所が静かだと、少し背筋が冷たくなるような気がした。まあ私は先ほどにも述べた通り、ホラーものには慣れていたので冒険する勇気があった。普段のモールでは、できないことを沢山してやろうと思った。例えば、ショッピングカートに乗ってモール内を移動してみたり、店のバックヤードに入ってみたりなど。どれもこれも私の気持ちをスッキリさせてくれた。あの空間で遊んでいると、日々会社で感じているストレスの大部分が軽減されたような気がした。そこのホールには大きな吹き抜けの空間があり、外を見ることができた。外を試しに覗いてみると、非常に明るくて昼間だろうなと思った。モールの入り口はどこも開かなかった。まあ夢の中なのだからしょうがないと思い、あまり気にしないことにした。モールの中には自動販売機が何ヶ所かあった。私は夢の中でも財布を持っていて、かなりの小銭を持っていた。自販機の飲み物はどれもラベルがなく、ただ単に色がついているだけであった。水やお茶、炭酸飲料もあったがどれも味を感じることはできなかった。

 初めのうち、私は探検することに夢見ている間の相当の時間を費やした。店の中のバックヤードを覗き、いつもは入ることのできない店に入って店内を見て回った。誰もいないのでモール内を歩いていると、私の革靴が床のタイルを踏むが響いた。コツコツという軽快な音が私の冒険の友であり、私が行くところにはずっと付いてきた。しかし、ある時から少し異変を感じるようになってきた。どこからか視線を感じるのだ。ここは私しかいないはず。ここは私だけの空間だ。モールを歩いていると視線を感じるのは、神経過敏になっているからだと思うようにした。更なる異変を感じたのは、夢でその場所を訪れるようになってから1週間経ってからのことであった。モールには服屋もあるので、マネキンが30体ほどあった。バックヤードに放置されているのも含めると70体ほどあったのだろうと思う。そのマネキンが移動しているような気がしたのだ。やつらは決まって前日の夢の中で、私が訪れた場所に集まっていた。ある日はハンバーガー屋の調理場に、別の日にはおもちゃ屋のバックヤードに。日を追うごとにやつらの動きは細かくなってきていた。私が夢の中でモールに行き始めてから2週間が経つころには、つい5分前に訪れた場所にやつらが早くも集まってきていた。何も動いた音はしなかったのに、だ。そのことから察すに、おそらくらやつらは滑るように移動しているのだろう。でないと足音が私にも聞こえるはずであるから。もっと恐ろしいのは、やつらの顔が私の方を向くようになったことである。やつらは常に私を見ていて、私が移動するのに合わせてやつらも顔を動かして、常に追尾してきているのだろう。

 あのモールの夢を見てから1ヶ月が経とうとしていた。今や私は寝るのが怖くなっていた。いつも眠ると、あのモールに放り込まれる。マネキンが私の動きを追いかけて、私を常に監視しているのは今や明らかなことであった。彼らは、もはや動いているのを隠す気はないようだった。私を常に追いかけ、眼球のない窪みの目を通して私を監視している。一昨日の夢では、私の歩いている真後ろを奴らがついてくるようになっていた。やつらの息遣いが聞こえてくるようだった。()()()()()()()()()()()()()()()()()私は夢を見るのが怖くなっていた。昔のように冒険好きの私はいなくなり。マネキンを怖がる臆病な人間になってしまっていた。それが悔しかった。だから私は今夜やつらに対抗しようと思う。マネキンを一体一体ばらばらにしてどこかの棚にしまっておこう。そうすれば奴らは私に干渉してくることはなくなるだろう。


―私は馬鹿だったかもしれない。私には奴らを止めることはできない。やつらの息遣いが聞こえると言ったが、やつらは()()()()()()()()()。部品にバラすことなんてできない。彼らは人間だったのだろうな。私も彼らの仲間入りだ。ここに人がいない理由が分かった気がした。私はこの悪夢から覚めることができるのだろうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

「こんな話を読んでみたい!」というようなコメントもお待ちしています。

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