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人類の敵対者

 とある鬱蒼とした静寂の森で複数人の者達の足音が響く。

頭上には密生した葉が覆う森は…昼もなお暗く、腐葉土を踏みしめる足音だけが不気味に響く。

そんな中…何の前触れもなく隣を歩く彼女が言い放った。


「ねぇ〜まだぁ、見つからないの〜?」


 静寂の空気を壊し呑気に話しかけてくる者が…。

声をかけられた先頭を歩くつり目でウェーブヘアーの茶髪をした女性が応える。


「うっさいわね…この近辺に反応があるんだから、黙って探しなさいな!」


 怒られた彼女は身長154cm程の小柄で、癖っ毛が目立つ黒髪短髪の女性。

唇を尖らせて怒りをぶつけてきた相手に物申す。


「なんだよ!ちょと愚痴っただけじゃないかぁ!」


「この…堅物!スルメイカ!!」


 先頭を歩いていたら彼女は足を止め、体を震わせ…後ろを振り向き怒号を向ける。


「何ですって!!(怒)」


 普段の彼女はこんな事では怒らないのだが…今回は違う。


「誰が!スルメイカですって!!」


 二人の会話を聞いていた隣にいた一人が応える。


「怒るとこそこですか…」


 呆れつつも会話を聞いていた女性は、眼鏡をかけた水色髪のツインテールの女性だ。


「美来!私がそう言われるの嫌がるの知っているでしょう!」


怒り混じりに美来に問うが…。


「柳木 寿留女…スルメ…スルメイカ…ぷぷ!」

 

 笑いを堪えて美来は話を続け柳木を煽る。


「柚子よ…寿留女は海洋生物だから、私達哺乳類とは価値観が違うのだよ…。」


「それに…中々可愛い名前じゃありませんか?」


 美来からは毒を吐かれ、さらに怒り心頭の寿留女である。


「あなたには分からないかもしれないけどね…わたしはこんな名前にした両親を恨んでいるのよ!!」


 憤慨しつつ自身の名前に不満を抱くが、美来の意見は少し違った様子。


「ですが…寿留女の名前は確か色んな意味もありますけど…幸福な生活が長続きします様にと言う縁起としての名だと言われていますけどね…何が不満なんです?」


「はぁぁ!私の実家は漁師やっているけど…いくら何でも!女の子につける名前じゃないと言う事によ!!」


 そう言うと美来はそっと目を背けた…。


「何で…目を背けるのかしら…?(怒)」


「いや…特に理由は…」


「何か?言いたい事でもあるのよね…(怒)」


 美来に言い寄りながら近づく…焦りながら柳木を褒める事にする。


「私も…その名前で確かに呼ばれたく無いなぁと思いましてですね…」


「続けなさい…(怒)」


「だ、だって…寿留女と言う名前だとなんか…イカ臭い人…じゃなくてイカ臭い名前だと思われてしまうなぁと…はい…」


 悲しくも何の慰めにもなっていない事に柳木は落胆してしまう。

さらに、追い討ちをかけるように…


「寿留女…お前…名前だけじゃなくて体もイカ臭いのか…不憫だなぁ…」


「どうしたらそう言う話になるのかしら!!」


 柚子からも追撃を喰らいさらに怒り倍増する寿留女である。


「あ…あんた達…そろそろいい加減にしなさいよ…」


 そんな柳木とは裏腹に朗らかな笑みを浮かべて仲裁に入る者が…


「こらこら…ダメですよー、今は任務中なんですから〜!」


 そう言う彼女は…柳の葉のような、明るく淡い黄緑色をしたお下げのツインテールをしていて身長は170cm近く女性にしては高身長である。


「はぁ…寧々止めるなら二人に何か言ってあげて欲しいのだけど…」


 柳木に言われたが…寧々は所持物の中から何かを取り出して見せた…。


「ふっ、ふっ、ふっ…こんな事もあろうと私が美味しいクッキーを作ってきましたー♪た〜んとお食べ〜」


 寧々は小袋に入ってる自前のクッキーを取り出し、柳木に食べさせる。


「まるで私達が常日頃喧嘩している口ぶりねぇ…」


「まぁ…ありがたく頂くわ、せっかく作ってきてくれたものねぇ。」


 何だかんだ言って柳木は寧々が作ったクッキーを気に入っているので、大抵喧嘩した時はこのクッキーで仲裁されるのも慣れていた。

寧々が作ったクッキーの味は、まるで…デメルのウィーン老店舗菓子店が作るアソートクッキーの様な上品な甘さがありバターの芳醇な香りがあるお菓子である。

 つまり…寧々の作ったクッキーは、かなりレベルが高い。


「相変わらず…なんでこんなにも美味しいのかしら…何だか腹立つわ…。」


 寧々は笑みを浮かべながら皆が美味しい食べているところを眺めるのが好きのようだ。

 そんな和やかな雰囲気の中から…通信が入る。


《あ、柳木さん聞こえますか?オペレーターの清水です。》


 突如と入った通信に柳木は耳を澄ませる。


「えぇ…聞こえてるわ。目標の地点わかったのかしら…?」


《はい…端末の方に位置座標を送りましたので確認してくれますか?》


「分かったわ。」


 清水に言われ所持していた携帯端末を確認すると不可解な事に気づく…


「ここ、先程と変わらないわよね…この端末壊れているのかしら…?」


《い、いえ!そうではなくてですね…えっと…ですね…》


「何だか…煮え切らないわね…何かあったのかしら?」


 柳木は少しばかり不安な気持ちになりつつも、清水の返答を待つ事にしたのだが…。


《ポイントはあってます。けど…地上ではなくてですね…地中なんですよねそれが…。》


「………」


 柳木は暫し黙り込み、清水に返答をする。


「そう言う事はもっと早く伝えてくれませんか清水さん…ねぇ…。(怒)」


《す、すみません!以後気をつけます!!ので…後の事は…お願いします。!!!》


 言うだけ言って通信を切られ任されてしまった柳木は、直ぐに臨戦態勢をとる事を皆に伝える事になり…。


「今の無線、聞こえてたでしょう?直ちに…」


 その瞬間…柳木達が立っている場所から地震が起きる。


「わわ、ちょっ!すごい揺れているのだが…!!」


「地中から接近してるみたいだから、各自この場所から散会しなさい!!」



『『了解』』


 柳木からこの場の散会命令出され皆、地を蹴り後方へ下がる。

先程いた場所を観察していると…地中から勢いよく飛び出してきた化け物…魔物である。

その魔物は…全長で13メートル程あり例えるなら、バスケットコート長辺の約半分くらいに相当する長さ。

尻尾だけで約3メートル程あり、見た目は山椒魚に似ている。

体の特徴は…色は黒に近いほど赤紫色をしていて、頭の方は…無数の複眼がある。

 その姿を見た際…想像より大きく大型クラスに近い程である。

大型クラスは全長15メートルから扱われるのが一般であるとされる。


「大型扱いではないのが驚きよ…これでもまだ、大型よりの中型扱いのサイズなんてね…。」


 柳木は相手大きさに対して苦笑してまうが…ここで怖気付いてはいけまいと己を鼓舞すると共に皆の士気が上がるように言葉を投げかける。


「皆、あの魔物を討伐すれば…私達の部隊(仮)が正式に少数部隊として認められるのはほぼ確定よ…何せ大型に近しい魔物を倒せる少数部隊は珍しいもの。」


「まさか…あの魔物に怖気ついた者はいないわよね…?」


 皆の表情を見ながら煽るが…


「ふん!誰に言ったいるんだ…僕はいつでもやる気十分だっつーの!!」


「私も柚子と同様。」


「もちろん!わたしもだよ〜♪」


 どうやらその心配は要らなかった事に柳木も安堵する。

直ぐに柳木は相手に目を向けて、立ち回りを考える。


「あの魔物は…四足歩行型だから、主に身体を動かすための必要な前脚を狙う方と魔物の注意を引く方二手に分かれて行動するわ。」


 柳木の作戦はこうだ…

二名が脚の片方を狙う訳だが…もう2名は向こうに攻撃が行かないための誘導をし注意を引き、その後…片脚を潰せば後は畳み掛けると言うシンプルな作戦。

 柳木は、美来と寧々に目を向けて指示を出す。


「ペアは、美来と寧々で願いね。」


「分かった、問題ない。いつものパターンだから。」


「了解〜」


 そう伝え…柳木は柚子と共に魔物の注意を引く為に動く。


「柚子…私が隙を作るから追尾攻撃お願いね。」


「まっかせんしゃい!!」


「はぁ…元気があってよろしい事で…」


 端的に用件言い柳木は攻撃を開始しようとするが…魔物は大口を開けて威嚇をする。

金属を切り裂く様な、耳に障る非常に鋭い甲高い声…金切り声を発する。

 柳達はは耳を抑さえ、体が振動で震えるが…待ってやるほど甘くない。


【二式:武装解除】


 柳木が胸元にある小型ひし形のクリスタルを握りしめてそう唱えた瞬間…彼女の周りからオーラ:魔力が出現する。

柳木の身体を覆う様にして、体の一部に武装が付け足され…最後に魔力が微粒子が武器の形へと変化する。

 彼女が手にした武器は槍である。


「よし、僕も!【二式:武装解除】っと!!」


 柚子も柳木と同様に身体に一部の武装と最後に魔力の微粒子が武器へと変わる。

柚子が手にした武器は…小型の短剣である。

 柳木は槍に魔力込めて魔物に向ける。


「うるさいから少し…黙ってなさい!!」


 魔力を込めた槍を腹部目掛けて突く。

魔物は威嚇声から悲痛な鳴き声に変わり、痛みからか…魔物の身体に緊張が走り小刻みに身を震わせている。


 「よし!柚子!!」


 柳木の合図と共に柚子は、持っていた武器を掲げてみせる。


「固有能力:【我儘エゴイスト】。」


 短剣だった彼女の武器は全長3メートルの大剣になり隙ができた魔物へ斬りかかる。

 柚子が使った固有能力:【我儘な剣】は彼女の固有の異能力であり、他人が真似する事はできないものである。

この世界では魔力を持って生まれた者または、後天的に身につけた者は皆…固有の異能力をもっている。


「くらえー!!!」


 狙った場所に大剣で斬りかかっても、粘液のせいで刃がとらえきれず…滑り落ちてしまう。


「あ、あれ?」


 その様子を見ていた柳木は…


「チッ…やっぱりね…魔物が体を覆っている粘液で、与えてくるダメージを分散しているようね。私も思った以上にダメージを与えられなかったわ…。」


 何度か柚子が斬りかかったいるが与えるダメージはイマイチである。


「柚子、一旦後退して!」


「まだ!まだぁ!!」


 ダメージを与える事に固執してしまっている柚子は柳木の指示を無視して攻撃を繰り返す。


「まったく!このお馬鹿は!!」


 一方…美来等は…


 柳木達が魔物の注意を引いている間に…美来も【二式:武装解除】をしていた。

美来の武器は弓である、そして…彼女がの作る弓矢は美来の魔力を集中させて矢の形状にし…魔力を圧縮して威力を上げて溜める。

 美来が魔力を圧縮し溜めている間、寧々はその護衛である。

寧々も既に【二式:武装解除】をしつつ、いつでも美来を護る様に待機している。

 一言も話さず魔力を溜め続けていた美来の口が開く…


「寧々こっちは準備完了です。あの二人に合図お願いします。」


「は〜い!」


 寧々は柔らかい返事をして、柳木等に合図をする。


「寿留女ちゃん〜!準備okだよ〜!」


 寧々の声を聞いた柳木は柚子に伝える…


「柚子、美来は準備できてるみたいよ。向こうに合わせなさい!」


「ムー!分かったよ…もうちょっと試したかったのになぁ…」


「はい、はい、さっさとやるわよ!」


 柳木と柚子は美来が狙いやすい様に片脚を向けて立ち回る。

狙える状況になった美来はさらに魔力を込めると、ビリビリと電流が弓矢から流れ周りの空気を震わす。

 美来は深呼吸して集中して狙いを定める…


「固有能力:【毒吐ポイズンきのストリング】。」


「一点集中…」


 美来がそう唱えた瞬間…柳木等はも上手く合わせる。


「射る!!」


 柳木等上手く合わせたお陰で…美来の矢は魔物の前脚に直撃する。 

矢が魔物に直撃し…けたたましく雷鳴が轟く中凄まじい衝撃音が鳴り響く。

 のだが…


「粘液以外も…装甲も肉厚で防御も高いです…少ししか傷をつけられなかったです。」

 

 不満な声を漏らすが…美来の表情は寧ろ笑っている、放たれた矢のお陰か…魔物の周りに電流が流れ完全に体を麻痺させている。


「寧々、後はお願いします。」


 そう言われた寧々は既に前に出ている。

美来はあくまで…麻痺させる為の要因であり、本命は寧々である。


「いっくよ〜!!」


 いつも通りの柔らかい声で宣言する寧々である、そして…

両足を開き腰を落とし脇を締めて唱える。


「固有能力:【反転はんてん】。」


 いつも温厚な寧々とは違って一気乱れぬ連打攻撃を魔物の脚に向けてぶつける。


「ぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺち」


 それは…あまりに弱々しい打撃音を奏でて打撃攻撃を繰り返す。


「ふぅ〜♪」


 一汗かいた寧々はそのまま地を蹴り、後退する。

その後…麻痺を解いた魔物は何事もなかったかの様に再び歩こうとするが…寧々が一言。


「爆散!!」


 その瞬間…魔物の片脚は肉片が弾き飛び散ったのだった。

 魔物は痛みのあまり絹を裂く様な甲高い声で叫ぶ。

 その叫び声を聞いて勝利を確信する美来。


「やりましたね。片脚潰せば後は楽勝です。」


 だが…そうは問屋が卸さない。

怒り狂った魔物の複眼が赤黒く染まり、その上魔力量が高まる。

身体全身から…青筋が浮き出ては、魔物から体温が上昇し陽炎ができるほどである。

 その後…破壊した片脚に魔力の微粒子が集まり、魔物の欠損した片脚を再構築し始める。


「げっ!?コイツの脚再生し始めてるし!特異型じゃん!!」


「厄介ね…」


 柚子と柳木は苦虫を噛んだ様な表情をしている理由は。

通常個体と特異個体では決定的に違うのは、特異個体は皆強力な自己回復能力を持っている事である。

通常個体は回復能力は持っていない。

 通常個体と特異個体では討伐できる難易度も当然変わる事になる。


「あまり…気が進まないけどあれ、やるしかないわね。」


「お!やるのか!!」


 柳木は気が乗らなさそうだが、柚子はやる気満々である。

彼女達がやろうとしているのは…


「三式を解除して高火力で私と柚子で一気に叩くわよ!」


「正気ですか…使用時間過ぎたらその場で動けなくなります自殺行為ですよ…。」


「そうだよ…わたしも美来ちゃんの言う通り一緒だよ…無茶だよ…。」


 美来と寧々は止めるが…暴走したこの魔物は、走るスピードもかなり向上している。

どの道逃げても追いつかれてしまうのは柳木は分かっていた。

 だから柳木は美来と寧々にお願いをする…


「もし…仮に、私と柚子でも仕留めきれなかったら二人は即撤退してほしいのよ…三式は私達しか使えないから…。」


「そんなお願い断ります!!」


 美来は柳木のお願いを間髪入れずに断る。


「そ、そうだよ…そんなお願い聞かないよ…寿留女ちゃん!!」


「美来…寧々…。」


 その瞬間、魔物は怒りに任せて暴れ回り、木々が押し倒される中…柳木達に向かって特攻してくる。


「くっ!時間がないわ、二人ともこれは隊長命令なの!聞いてちょうだい…お願いだから…。」


「ですが…」


「何も死にに行く訳でわないわ、あくまで仕留めきれなかったらの話よ…。」


「それに…そうならない様にちゃんとサポートしてくれないとね。」


 柳木は二人に茶目っけな表情を見せて安心させる。


「ふぅ…そうですね…仕留めればいいだけです。」


「………」


「まっ、僕がいるから安心しろ二人共!余裕余裕〜!!」


 あまり気を使わない事で有名な柚子が二人の気持ちを察してか…余裕綽々である。


《…あ、あの〜、柳木さん聞こえますでしょうか…?》


 清水から無線が入る…


「申し訳ないのだけど…今特異型魔物が暴走してる最中なのだけど…。」


「危な!!」


 魔物が特攻してきても冷静に避ける柳木達に、清水は肝がすわっているのかいつも通り説明してくる。


《す、すみません…。えっと…ですね…今からそちらに救援が来るみたいなのでそれまで足止めしてまらえますか…?》


「きゅ、救援って!こんなタイミングでよく見つかったわね!!」


《…それがですね…思った以上に早めに、討伐が完了した方がヘリコプターで帰還している情報を得ましたのでそちらに向かってもらっている状況なんですよね…》


 状況が状況なだけに…柳木もその救援を引き受けるのはやむを得ないのは分かるが…やはりなんとかして自分達の力であの魔物を討伐したかったと思う柳木。


「分かったわ…救援が来るまで足止めに専念します。」


 清水との通信を切り自分達の出番はここまでだと言う安堵感とやらせない気持ちが入り混じっているが、何事も生きている者が勝者なのは弱肉強食の世界では常識である。


「皆、今の会話聞いてと思うけど…私達は今から来る救援が来るまでの間足止めよ…。」


「ムー!何だよ!!せっかくいい見せ場つくれたのに!!!」


 柚子が拗ねるが皆、生存できる確率が上がったのは願ってもない事。


「まぁ…よかったですよ。これで二人が無茶しなくて済みますですし…。」


 流暢に会話しているが…現在進行形で魔物は柳木達等に突進したり暴れ回っている最中それらをなんとか上手く回避している状況である。


「………」


「ん?どうしましたか寧々…先程からあまり話さないですし…。」


「うえ!?いや…何でもないよ…ただ…救援しにくる人はどんな方達なのかな〜なんて思って…。」


 美来からの気にかけられた中、寧々は何やら焦り混じりで返答する。


「そうですね、少し気になります。早めに討伐してきて早々に帰還するほどの実力がある部隊なのでしょうか…。」


 その会話を聞いていた清水から返答がくる。


《あぁ…その事なんですけど…部隊ではなくてですね…個人で中型の魔物を討伐した方なんですよね…はい…。》


「こ、個人で、ですって!?」


 清水のからの無線を聞いていた柳木は驚愕する。

本来中型クラスの魔物を討伐するのには中隊クラスの戦力が必要とされている。

柳木達も本当ならそれほどの隊で挑まなくてはいけない相手をしている状況でもあるのにも関わらず個人で討伐とは凄まじい戦力と言う証拠である。


「清水さん…誰なの個人で討伐した人は?」


《えっと…で…第…あ》


「ん?なに?聞こえないわよ清水さん?」


 突然無線が混線してしまいまるで聞き取れない。

そんな矢先、美来が異様な状況に気づく。


「寿留女!あの魔物から蒸気がでて周り一体にを少しづつ煙が覆っています。もしかしてあの魔物が…」


「ッ…!視界が悪くなっているわ。この煙で無線を遮断したのかしら?本能で動くはずの魔物が自ら思考して動くなんて聞いた事ないわよ!」


 魔物は本来生物のみに捕食する本能しか持ち合わせていない。

それにも関わらず意図して魔物が無線を遮断するのは初めてのケースである。


「ただの特異個体ではなさそうね…」


 他のメンバーの姿も認識が難しくなる程に煙が視界を奪う。


「み、見えないよ〜…」


「こんな状況で襲われたらかなりマズイのでは…」


 美来の言う通り魔物は、視界が悪い中霧の中で暴れている。

木々を倒しながらこちらに迫ってきているのが分かる。


「あの魔物…何故こちらにいるのか分かるのかしらね…」


 柳木が徐に抱いた疑問であるが、何かそこに理由がある様に思う。


「暴れているのにそれはないのでは…」


 隣に立つ柳木の問いに美来はそんな事はと…返答するが…柳木は少し違った。


「暴れるだけなら…もっと尻尾を使って薙ぎ払うくらいしてみればいいのに…さっきからやたら頭で突撃したり突進したりしかしないのよね…。」


「…モンスターを狩るゲームでは良くありますねそう言うの…リーチが長くて今の視界が悪い状況であれば知能が低い者でも分かるとは思います確かに…」


 柳木が霧の中視界が悪い状況で魔物を観察していると…柳木と美来が立つ左側少し離れた場所から、寧々が何やら微かに黒く光るガラスの破片を持っているのが分かる。


「寧々持っているそれは何…?」


 無線越しに柳木が寧々に問う質問する。


「えっ!?あ、あぁ…これの事…?」


「うん、それは何?」


「…ん〜とね…これは…魔物から襲われる少し前に拾った物で…任務が終わったら皆んなに見せようかなぁ…って…持っていたんだけど…」


 柳木は鈍色に光るそれを見てある事を考える…


(あれから微かに魔力が感じられる…もしかしてあのガラスの魔力を辿って…いや、でもそれだと私達も魔力で身体を保護しているからどの道分かるはず…だとしたら…)


「誘導…かしら…」


 柳木はすぐさま寧々方へ移動する…


「寧々…それ、そのガラスから微量に漏れ出ている魔力が、あの魔物を手引きしている様に作られている人的要因が関わっている可能性があるわ…」


 それを聞いた寧々は目を見開いて…驚く…


「ふえっ!?そ、そうなの…気づかなかった…」


「仕方ないわ…冷静に観察しないと案外わからないもの…」


「ここまで分かった事は…このガラスはあえて寧々に拾わせて…その後、魔物と接触し…対峙。

それ以降は…恐らく…」


 そこまで言って少し言い淀む柳木…。


「ガラスを拾った寧々を喰わせるか…私達で何らかの実験をしているか…あるいはその他…ってとこかしらね…」


 少し怯えた表情をしながら寧々は柳木に問う…


「えっ!?わたしこれ持ってたら喰われちゃうの…」


「あくまで…可能性よ…けど…持っているのは良くないわ、私に預けてくれるかしら…寧々。」


 寧々は恐る恐る柳木に鈍色に光るガラスを渡す…


「寧々…今から、美来の所に合流して待機しててほしいの…いいかしら…?」


 そう言う柳木の表情は…これからどういう状況になるかを察していた…つまり…囮である…。


「で、でも…それだと寿留女ちゃんが、一番危険だよ!よくないよ…そんなの…下手したら喰われちゃうかもしれないんだよ…」


 寧々が不安そうな表情をしているが…柳木は既に覚悟を決めている。


「もしかしたら寧々を狙っているかもしれないし…あるいはこのメンバーの誰でもと言う理由なのかもしれない。または…このガラスが偶然落ちていたと言う線も捨てきれないのもまた事実…。」


 柳木は少し深呼吸してさらに応える…


「それでもこうなってしまったらどの道危険で…このガラスを捨ててしまっても…他の方法で関与してくる可能性がある事も考慮しないと…。」


「それでも…その方が危険では…」


 そこまで言って柳木が先に言う…


「いいえ…寧ろ…こちらも都合がいいわ…これを捨ててしまったらあの魔物はどうなるかとか、予測を立てれば今の状況ではキリがないのも事実。」


「要するに…分かっている状況の方が動きやすいのも利点って事よ…」


 寧々にあらかた柳木の考えを説明した後…寧々を美来の所に向かわせる事にした。


「美来もだけど猛反対するだろうから案外押しに弱い寧々に言う私はズルイのかもしれないわね…。」


 ついでに…柚子にも美来がいる所に合流してもらい…後は魔物との追いかけっこである。


「さて…こちらも準備万端!」


 気合いを入れて魔物を手引きする事に…


「このガラスに私の魔力を流せば…」


 その瞬間…ガラスはより一層光を放つ。


「これで…どうかしら…?」


 柳木がガラスに魔力を注ぎそれと同時に魔物は柳木の方へと勢い良く向かってくる。


「来たわね…こっちよ!」


 視界が悪い中美来達がいる反対方向へと柳木は駆け抜けて行くのであった…。






 寧々は美来の所に合流し…柳木の考えをかいつまんで説明していた…


「…って、事があって…もう寿留女ちゃんは魔物から私達を遠ざけるつもりなの…」


 あらかた寧々の話しを聞いた美来は…


「あの!堅物バカ!!」


 ここまで感情を…あらわにする様な性格ではない美来が声を上げて叫ぶ。


「見損ないましたよ…寿留女…そんなに私達を信頼していないのですか…。」


 美来は柳木に対して怒りと不安が滲み出ていた…その瞬間…


 遠くから柳木がいる方向から魔物がうめき声を上げながら地を這い何かを追いかけていき、魔物の存在が遠ざかっていくのが分かる。


「…行きましょう…私達も…」


「で、でも寿留女ちゃんは…」


 そこで思いがけない人物から制止される…


「待って!これはあいつが決めた事だよ…私等がでしゃばる事じゃないよ…」


 まさかの、柚子である…


「柚子…どうゆうつもり?何故貴方まで止めるのです…?」


「そりゃあ…そうだよ…あんな!自己犠牲思考で助けたつもりでいられても…いい迷惑だって言う事!!美来だって分かるだろ…」


 あまりの物いいに美来は柚子に対して不快感を抱いた…


「柚子…私が言いたいのはそう言うことでは無いのだけど…どうしてそこで、助けに行かないと言う結論になるのかを聞きたいのですこちらは!」


 二人の間に考えのすれ違いが生じてしまい亀裂が入り…困惑する寧々は…


「ちょっ!ちょと待って!!二人共今は、内輪揉めするのは良くないよ…」


 あたふたする寧々と今でも喧嘩しそうな二人に無線が入る…。


《あ、あの〜…今いいですか…》


『『何!!(怒)』』


《ひぃぃぃ…ごめんなさい!後もう少しで救援が到着するみたいなのでその報告を…と思いまして…》


 清水からの無線で…我に帰った美来は柳木のところに駆けつけようとするが…


「おい!まだ話しは終わってないぞ!!」


 怒り混じりに美来に噛み付く柚子であるが一方…美来と言うと…


「柚子…私はあなたにも見損ないましたよ…。寿留女が助かる可能性があるのにも関わらず…身を乗り出さないなんて正気じゃない。」


 美来は柚子に対して冷たく言葉を投げかける。

 だが…柚子の反応は少し違う…


「しってるよ…」


「え?」


「わたしが正気じゃない事を言っているのは!けど…このまま寿留女と合流したら…より一層わたし達に危害が行かないように、さらに自己犠牲するかもしれなくて怖いんだ…。」


「…それが原因で、寿留女の自身に取り返しつかない状況に陥るのがとても怖いんだ…」


「わたしは自分のせいで寿留女を失うのが怖いだけの…意気地なしなんだよ…わたしは…。」


 柚子は俯きながら…体を震わせ涙目になり自身の本心をぶち撒ける。

 美来は思う…いつも見ている柚子は、天真爛漫で無鉄砲な彼女だけどそれは…ただ…そう周りに思わせるように振る舞っているだけ。

目の前にいる柚子は…いや、柚子が本来小心者の彼女が本当の性格なのである事に美来は気づく…。


「柚子…あなたの気持ちは分かりますけど…ここで行かなかったら死ぬほど後悔するのではないでしょうか…?」


 それでも美来は引かない…柚子の本心を改めて分かったとしても後悔だけはしたくないのだから…。


「あなたは…ここにいて下さい。私と寧々で寿留女が助かる為のサポートをしに行きますので…」


 そう言って…後ろを振り向き歩み出そうとした瞬間に…


「きゃぁぁぁぁ!!!」


 無線から柳木の叫び声がした…

 美来が慌てて無線で柳木の応答を促す。


「寿留女!?どうしましたか!返答して下さい!!寿留女!!!」


 柳木からは返答が無く、状況は最悪の事態になりかけていた…。






 

























 







 




 


 


 








 


 












 






 


 






 




 


 



 









 


 











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