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第3話 転移先はイケオジ聖騎士団とダンジョン深層・後編

 忠誠を誓ったあと軽く自己紹介をしてもらった。その結果、聖騎士団のポップアップ表記が変わったのだ。

 黒狐(ブラック・フォックス)聖騎士団、団長ランドルフ・ハーゼ様。

 この老聖騎士が団を纏めているみたい。


 眼帯を付けた盗賊のお頭みたいな黒衣の聖騎士がエイブラム・オドラン様と名乗ってくださった。三十後半のちょっと渋めの方だ。私の実年齢的に、十個上かどうかって感じね。

 この方が一番警戒していた気がする。


「モモカ殿、ここは聖都から離れた国境近くの地下迷宮(ダンジョン)です。モモカ様が現れたのは、98階層のボス部屋と呼ばれる場所でして、ボス魔物は倒しましたが安全区域ではありません。移動しながらの説明になることを、お許し頂けますでしょうか?」

「はい。もちろんです」


 ダンジョン深層内は薄暗い洞穴ではなく、神殿の跡地のような古代遺跡風で、石壁を削って作られたようだ。どちらかというとローマ帝国時代のメゾン・カレに近い。蔦や苔を見るにかなり古い時代なのかもしれない。

 それにしても魔物らしい爪痕や物々しい空気はあるのに、魔物が出てくる気配はないのが気になる。


 団長、副団長は年期が入っているものの、それ以外は結構若い子も多く、茶髪のジェラード様は眼鏡をかけていて弓と剣を装備している。薬草に詳しくて、その知識は凄かった。きっと薬草マニアなのだろう。


 碧色の長い髪で目を隠すフリック様は、戦闘狂らしくて武器を持つと性格が豹変する。一応魔法剣士らしい。戦闘が無いときは空気のように静かだ。ぼそぼそっと喋っていて聞こえない。武器を持った時は長文で喋るらしい。そういえば分析していたような?


 一番元気が良いのは、赤髪の「~ッス」が口癖のアルバート様。大きな斧を持ち、感情的に突っ走るような猪突猛進かと思ったら、彼は目と頭の回転が良いみたいで戦略的に戦いを見ている。すごく賢い子なようだ。ただ感覚派の天才っぽい。


 この三人は十代後半らしいが、それぞれ特化した能力を持っている。

 計五人、騎士職だけで深層に潜っているって、この世界では普通なのだろうか。

 魔法使い、斥候役、聖職者などがいない聖騎士という冒険者にしては、バランスが悪いのだが、彼らは教会に在籍する聖騎士様だ。


 なんだか色々事情がありそうな予感がする。そんな予感しかない。なぜなら全員の服装が聖騎士と言えるような装備ではないからだ。聖騎士と言うよりも言うよりも傭兵団とかのほうがまだ説得力はある。この辺りも後で確認しておこう。なにせこの世界のこと何も知らないのだから、迂闊な言動は避けなきゃ。聖女発言は不可抗力だと思う。うん。


地下迷宮(ダンジョン)は魔物が多くいるのでしょうし、深層というのなら詳しい説明は安全区域に戻ってからお願いします。私は足手まといにならないようハクの背に乗っておりますので」

『うん、僕の傍は安全!』


 安全? 自信満々で可愛いな。

 ランドルフ様は口元が微かに緩んだ。何か面白いことを言っただろうか。あ、ハクの仕草が可愛かったのかも。


「理解があって助かります。集落のある安全区域は、55階層なのですが、まずは我らが拠点としている90階層まで移動をします。戦闘に入ったら、こちらのエイブラムの傍から離れないようにいただけますか」

「はい。叫ばず、勝手に行動しないで、エイブラム様の傍にいます!」

「モモカ殿はいい子ですね。聖女殿と神獣様がいるせいか、魔物も寄ってこないのも有り難いです」

「そうなのですか?」


 前衛は団長のランドルフ様、その後ろにアルバート様と、フリック様、私の後ろにジェラード様、殿がエイブラム様だ。フォーメーション的に私が護衛対象的な感じで、普通の討伐や壇上攻略とは違う並びだと思う。


 足手まといが居る中で深層の地下迷宮(ダンジョン)を抜けるのは、たぶん命がけだ。団長と副団長は少し余裕があり、会話ができているけれど、他の三人は集中を切らさないようにしているのがわかった。


 こんな幼い姿で申し訳ない。せめてもう少し大人なら……いや戦力的にあんまり変わらないか。


『心配しなくても、安全区域まで魔物が出てくることはないよ』

「え!? さっきの安全って……。もしかして魔物が出てこないのは、ハクが神獣だから?」

『うん。地下迷宮(ダンジョン)の深層は危険な魔物が多いだろうから、僕が威嚇している感じ。正直、この戦力で君を護衛しながら階層を戻るのは難しいし!』

「(護衛が一人増えるだけでも、聖騎士たちの負担が多くなるのは当然ね)ハクは可愛いだけじゃなくて、頭も良くて魔物まで追い払ってしまうのね。有能だわ」

『桃花を守るのは、僕だからね!』

「ハクぅう!」


 頭をめいいっぱい撫でてあげた。この子は本当にすごい頭がいい子だわ。天才なのでは?


「やはり神獣様が魔物を遠ざけているのですね。ありがとうございます」


 ランドルフ様は私が聖女を名乗ってから終始笑顔だ。ハクは尻尾を沢山ふるって『スゴイでしょ。スゴイでしょ』と自慢気なのが可愛らしい。どっちも違う種類の可愛いなのだけれど、ここに可愛いが揃っていると心から思った。

 後日「団長さんも可愛いですね」と他の聖騎士団員に話題を振ってみたら、賛同を得られなかったけれど。



 ***



 少し歩くと日差しの当たる神殿の外に出た。生い茂る緑はクリスタルのように美しくて、思わず見入ってしまいそうだ。よく見れば苔以外にも、キラキラと光る草花が気になった。私の視線に気付いたのかハクが立ち止まった。


「ハク?」

『気になるなら、鑑定してみたら?』


 鑑定。

 そう言われて女神が、そういえば加護がどうのと言っているのを思い出した。今のハクの言葉から察するに、私には鑑定スキル的なものがあるみたいだ。


 もしかして最初に見えたポップアップが鑑定結果だった?

 意識して目を凝らしてみると、視界に何やらポップ画面が出て文字の説明が表記される。


 フェール・リコリス

 特殊な環境でしか咲かない貴重種。

 葉はポーションの材料の一つ、花、葉、茎に根に至るまで薬にも使える。

 入出難易度:星4

 相場価格:銀貨15枚


 フィール・セイヨウヒイラギ

 特殊な環境でしか咲かない貴重種。

 魔除けの効果あり、他に薬、素材などにもなる。

 入出難易度:星4

 相場価格:銀貨10枚


 おおお! これは素晴らしい能力(スキル)だわ。異世界の価値観を知るためにも鑑定って便利!


 視界に入る植物や木々を観るだけで、植物の名前やこの世界での価値なども書かれていた。これは今後、値段交渉する際にとても役に立つはずだ。なにより、その辺に生えているのが、お金になるなら小銭を稼ぎたい。ハクもいるので危険はない──はず。


「あのランドルフ様」

「はい、なんでしょうか?」


 一瞬、ビクってするのは私が無茶振りしないか緊張しているからかな?

 それとも聖女にトラウマあるいは因縁が?


「ハクが魔物除けをしているので、もしダンジョンで収拾する薬草や鉱物なんかがこのあたりにあるのなら、採取していきますか?(あくまでも私が欲しいと言わないところが大事!)」

「!」


 私の提案に五人はとても驚いていた。そこまで変なことを言ったつもりはないのだが。もしかして私が気になっているのに気付いた? そうなら結構恥ずかしい。正直に気になったって言ったほうがいいかな。


「……俺たち聖騎士団の事情を察して」

「さすが聖女様ッス」

「聖女様すごすぎる」

「「…………」」


 ごめんなさい、全然察せられていません。なんか訳ありってことしか、気づいてないです……。


 素直に分からないと言うべきか悩んだものの、「セイジョデスカラ」と言う言葉で乗り切ることにした。とにかく今は、彼らの信頼を得ることが優先だ。

 それに薬草や鉱物の採取と聞いて、全員の目が変わったところを見るに階層を突破するよりも、薬草採取が目的だったのかもしれない。


「実はこの95階層は見ての通り神殿前にあり、【慈悲の森】という貴重な薬草などが多く取れる場所なのです」

「そうなのですね。ですが、それなら最初にここを突破したときにも取れたのでは?」


 そう引っかかっていたのは、なぜこのタイミングなのか、だ。


「それは聖女殿と、神獣殿の存在によって状況が変わったからだ」

「私たち?」


 エイブラム様の言葉に私はまだよく分かっておらず首を傾げる。


「この階層はアダマンタイトゴーレム、オリハルコンゴーレムが定期的に巡回しているのです。ですので、ここを来た時はどちらかのゴーレムを相手にしつつ攻撃を防ぎながら進んだのですよ」

「さすがに五人では手に余る。だからこそ、聖女殿と神獣殿の存在と現状は、我々にとって喜ぶべきことなのだ」

「エイブラム」

「なるほど、そうだったのですね。さっそく皆様の役に立てたのなら何よりです」

「……それにしても聖女殿は、本当に六歳か」


 うっ……。それはそうですよね。



楽しんでいただけたのなら幸いです。

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