第2話 バグ?案内人は訳ありの騎士団?
終わった……。
異世界グルメ旅行ブログ、SNS、動画配信。面白そうな企画だと思った。異世界転移の理由も理解できたし、異世界観光というのも刺激的でワクワクもした。まあ、説明を端折られた感じはしたが、概ね行っても良いとは思っていたのだ。
転移先を知るまでは。
な、な、なんでダンジョンに転移しているのよ!!!
チューリアルのような浅い階層ならまだ許せる。でも今私が転移した場所はなんと ダンジョン深層だ。
え、なんで深層なのかがわかるか、だって? フッ、私の目に【地下迷宮98階】ってゲームウインドウのようなものが、表示されているからです!!
まさかこれが案内人!? いや人じゃないんかい!?
普通なら神殿や王城の大広間的な開けた場所が鉄板なんだろうけれど、まさかのダンジョン深層。しかもボス部屋一つ前の宝箱が出口とか、どうしてピンポイントで、そこを選んだ!?
どう考えても詰み。ゲームオーバーだと思うでしょう!
不幸中の幸いだったのは冒険者がいたこと。いやウインドウ表記的には【聖騎士団】とある。この人たちが恐竜みたいな魔物を討伐した後で本当に、本当によかった。いや全くもって良くはない。この人たちが善良だという確証はない。未だ危険な状態であることは間違いない。
「深層に……子ども!?」
あーーー、ですよね。私もどうして幼女化したのか、どこぞの女神様に一時間ぐらい問いただしたい。でも言語自体は日本語に自動翻訳されているのか聞き取れるので、その分に関しては良かった。本当に。
異世界で意思疎通が出来ないなんて、かなりハードモードだもの。観光スポットを作る場合は特に。そうなったら女神様に連絡を入れて何とかして貰うか、言語を習得するまで数カ月ほど待ってもらうしかないもの。言語の壁って大事よね。
まあ、言葉がわかるのはよかったけれど、一番の問題は姿が幼児化していることだ。しかも6歳! この6歳とピンポイントで分かったのは、ステータスウインドーが表示されているからだったりする。
モモカ・スズハラ(6歳)
異世界転移による副作用、あるいは転移エネルギーが足りなかった。そもそも女神様が意図的に幼児化させたのどれかだろう。
この状況で仕事しろっていうこと?? この国の労働基準法は機能しているの? それともこれバグ時な?? 急に異世界転移とかするから??
ここまで脳内思考で僅か3秒だったと思う。
ふと視線を感じて顔を上げると冒険者風いや聖騎士団の一人と目があった。とりあえずにこやかの笑って挨拶をしてみる。
「初めまして。私は他の世界から来た者です」
「!?」
聖騎士団の方々はギョッとしていた。いや分かるよ、こんな危険地帯に私のような女性、というか幼女がポツンといたら罠かって思うよね。それにいきなり他の世界から来たなんて言われたら胡散臭いだろう。けれど事実だし、この場所に幼女が突然現れた理由とか考えると悪くない発言なはず。
「他の世界? ……いやだがそれでもなぜこの地下迷宮の深層にいる? まさか魔物が変化しているのか?」
魔物扱い。魔物やっぱり人型になれるのとかいるのね。おー、怖い怖い。私は未開拓領域を開拓する冒険者じゃなくて、観光スポットを楽しむ旅人のような者なのだけれど。正直に言って信じて貰えるだろうか。幼女だし。
「んんん~~~、でも見た感じ魔物って感じはしないッスけど?」
「いやいやアルバート氏、ここは戦うしかないのでは?」
「……敵なら、殺すのみ」
怖っ!
若そうな青年の二人は、やる気満々だ。
警戒心は大事。簡単に信じちゃいけないと思う。思うけど私の場合は信じてほしい。うーん、どう伝えるべきか。
「ガルルルッ!」
「魔物が巨大化した!?」
白銀の狐は私よりも何倍も大きくなって、眼前の聖騎士たちを睨みつける。威嚇する父狐みたいで、とっても頼りになる。それに今は毛が逆立っているけれどすごくモフモフな感じだ。
絶対にあとでハグしよう。そう心に誓った。
「ハク!」
「きゃうう」
私のほうに振り返るといつものように甘えた声で頬を舐めてきた。尻尾もぶんぶん振っていて可愛らしい。
「ハクも一緒に来てくれたのね。とっても心強いわ(少なくとも独りぼっちじゃない」
「きゅう!」
威嚇していたのに、急にデレデレになってかわいいわ。うちの子可愛い。世界一可愛いに違いない。思わず抱きいてしまった。
「モフモフ、ふわふわ良い匂い」
「──っ」
「待て、エイブラム」
「だが」
場の雰囲気を変えたのは、リーダー格っぽい風格を持った聖騎士様だ。私とハクのキャッキャウフフの空気を読まないハグのおかげかもしれない。
しかし若い騎士が食ってかかる。
「団長、もし罠だったら……っ」
「そうです!」
「剣も納めなさい。隣にいる神獣を見るに罠はないでしょう。魔物であればなおのこと、神の加護を纏うことなど不可能なのですから」
ハクが可愛いのは認めるがハクが神獣? 白いから?
「……確かに今まで感じたことのない強いオーラだ」
「魔物にあんな神々しいオーラは出せない。なにより今まで魔物に囲まれていたのに、彼女らが現れた途端、魔物の襲撃が途切れた」
「それは……たしかに」
「そうッスね! 今まで間断なく魔物が追ってきたの嘘みたいッス!」
「団長……結論を求む?」
風向きが変わったらしい。自然とリーダー格の聖騎士に視線が向けられる。彼は確信に満ちた目で私を見返していた。
もしかしてこの人は私が転移した存在だって女神様たちから聞いている?
「神獣と共に現れたのなら、間違いなく聖女様でしょう!!」
「え(えええ!? どうしてそうなるの!?)」
想像の斜め上発言に、心の中で思わず叫んでしまった。声に出すのを抑えたのだ、頑張った方だと思う。私以上に衝撃を受けたのは仲間と思われる騎士たちだ。
「聖女様!?」
「聖女様ッスか! 奇跡みたいッス」
「そうですな! アルバード氏!」
「……敵、違う?」
「聖女それならば、納得だ!」
満場一致で聖女判定がでた。この世界の聖女って神獣(白い生き物)を連れていたら自動的に聖人、聖女扱いになるのだろうか。そういう所もちゃんと説明しておいてほしかった。
ふとリーダー格の騎士様がどこか遠くを見て語り出す。
「時折、神々の使者として異世界の者が召喚されるという伝承を聞いたことがあります。その時には必ず聖なる獣を連れていた──と。また召喚場所は常にランダムかつ、その国でふさわしい者たちの前に現れるという」
「「「「おおおお!!!」」」」
なんかチュートリアルっぽい世界の解説が始まった。しかも本当にそれっぽい理由だ。もともと私のような異世界転移者が来た時を考慮して広めた伝承なのだろう。その当たりは有り難い。
敵認定されない要素が増えるのは有り難い。けれど聖女扱いはやめてほしい。
「聖女様のご光臨ッスね!」
「それも我らのような者に! やはり神々は我らを見捨ててなどいなかったのですぞ!!」
「……奇跡」
「エイブラム」
「団長」
「あ……」
聖騎士団の方々は勝手に盛り上がってしまって、訂正する機会が失ってしまった。ハク以外にも自分に聖女と思わせる要素があっただろうか。自分の服装を改めて見ると、白い修道服に見えなくはない。とりあえずこの体に合わせた服装なのは、助かるけれど。
聖女ねぇ……。この世界にグルメ旅行の取材で来たのだけれど、肩書き的に【聖女】って名乗っていいのかしら? 偽ったとかで、処刑されたりしない?
そっちのほうが長期的に見て不味いのでは?
『桃花は間違いなく聖女だよ。神様からの使者を、この世界では【聖女】とか【聖人】って言うんだって』
「ふーん(正直聖女という大それた肩書きはいらないのだけれど……。いやいや、異世界で立場がないと危ないかも)」
『桃花、褒める? 僕物知りでしょう? えらい、えらいして?』
「……………」
白銀のモフモフで大きくなったハクは尻尾をブンブンと振って、説明してくれた。そう説明をしてくれたのだ。
会話している相手がハクだと認識した瞬間、固まった。
「──ってハク、あなた喋れるようになったの!?」
『んー? あ、うん。そうだよ!』
「まあ! それは心強いわ」
『桃花。すき。ぎゅーも好き』
とぼけた顔をするハクも可愛いので、首に抱きついてみた。モフモフでふわふわだった、最高。できることなら現実逃避してしまいたい。そもそもどうして私の姿が6歳なのか、ハクが喋れるようになったのかなど、考えることを挙げれば切りが無いのでとりあえず後回しだ。
私がハクと話をしている間に騎士様たちは騎士様たちで落ち着いたらしい。なにやら黙っている。
あ、これ違う。私が話し始めるのを待っているんだ。ハクからも聖女判定を貰えたので、名乗ることにしよう。異世界の取材者よりも神様に認められている存在のほうがなにかと融通が利くはずだ。
「コホン。私は鈴原桃香と申します。そちらの騎士様の言葉通り、女神から使命を依頼されてこの世界に訪れました。大変申し訳ありませんが、自立する少しの間で構いませんので、私を保護していただけないでしょうか」
「「「「「ハッ!!」」」」」
ひゃう!?
今後の足場を作るために提案をして見たのだが、全員がその場で片膝を突いて片手の剣を地面に刺し、もう片方の手を聖騎士っぽく胸に当てて、頭を下げた。
ビリビリと空気が震えている。
か、かっこいい!!!
これぞ騎士だよ。忠義の騎士ーーー。武将も好きだけれど、騎士道精神もまたいいわ。ああー、完全武装した感じで改めて忠誠を誓ってほしい。
最年長は団長と呼ばれていたシルバー髪の壮年の聖騎士のようだ。見るからに三十後半か四十代で体格がよく、お人好しな顔をしている。そして歳を重ねたからこそ醸し出す大人の雰囲気、いわゆるイケオジの部類に入るだろう。
え、かっこよすぎる。目鼻立ちも良いし、上流階級っぽい雰囲気もある。
「我ら最底辺の黒狐聖騎士団に、そのような大役を選んで頂き望外の喜び! 謹んでお受けいたします!」
バリトンボイスはそこまで大きくないのに、よく響いていた。
色々不穏当なワードが聞こえたけれど、快く迎えてくれた彼らのためにも、お世話になるのだから聖女として、それなりに役に立たつところを見せておかないとダメね。
そう私は心に誓ったのだが、彼らの忠誠を甘く見ていたことを知るのは、もう少し先のことだ。
楽しんでいただけたのなら幸いです。
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今回は異類婚姻譚、和シンデレラです。
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※内容を2026年3月20日微調整しました。




