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第14話 婚約とか結婚とかデメリットしかない

 顔に出さないようにしていたが、心の中で絶叫する私を見て、ランドルフ様は言葉を続ける。


「……現在、聖都では聖樹生誕祭に向けて準備を行う所だったと思います。それに合わせて次期教皇猊下を決める教皇選手(ポルタ・コンクラーベ)が行われるのではないか、と噂もちらほら聞こえてきます」

教皇選手(ポルタ・コンクラーベ)? ……私の世界でも教皇選手(コンクラーベ)と言う言葉なら、耳にしたことがあるわ。先代の教皇猊下が亡くなった際に次の教皇を投票で選ぶと」

「はい。我が国でも似たような形で教皇猊下を決めるのですが、ただ一点。その選挙を行わずに教皇猊下となることができるのが、【聖女】との婚姻です。ちなみに他の聖女様は皆様、王族と婚姻関係にあります」

「…………()()()()()()()()()()()()

「その通りです」

「うわぁ……。それは最悪ね」


 言い切った私に、エイブラム様とオウカ様はお腹を抱えて笑い出した。何がそんなにおかしいのかしら?

 教皇猊下と結婚するって、私に何のメリットがあるのか。こっちは神々から頼まれた内容を考えると、聖都やら教会本部から出られない状態は非常に迷惑でしかない──という感じのことをできるだけオブラートに包みながら、ランドルフ様たちに伝えた。


「王侯貴族連中に聞かせてやりたいな」

「だな。いやはや痛快だ」

「はぁ。政略結婚とかそういうのは嫌ですし、女神様から頂いた【聖女】という地位で十分ですもの。それに教皇選手(ポルタ・コンクラーベ)での派閥争いなどに、巻き込まれたくもないわ。政略結婚、婚約は私の活動にとってもデメリットしかないですし、お金ならこれから自分で稼ぐ当てもありますもの」


 私が稼ぐという言葉に、ランドルフ様は苦笑する。


「地位、名誉、富を得るために、今までの聖女は、王侯貴族あるいは教会上層部と婚姻を強く望んでおりました。彼らもそれが当たり前だと思っているでしょう」

「だから6歳の姿なのね。この姿でできても婚約程度、それすら私にはデメリットでしか無いわ。ひとまず教会側が私のやることに手を出せないように、手を打っておきます。向こうが大好きな権力で圧力をかけるのなら──」

「なら?」

「こっちは本家本元。神々の天罰、怒りを見せて差し上げますわ」

「「「!?」」」


 向こうが自分の得意な戦い方をするのなら、それに則ってボコボコしてやろう。すでに切り札はあるので、どうにでもできる。あくまで私の勅命(オーダー)を妨害するのなら、だが。


「私の安全と行動の自由は保証されているので、今は黒狐(ブラック・フォックス)聖騎士団のみなさんが正当な評価を受けるために、もまずは装備の統一ですね」

「拙者……たち?」

「しかし」

「それよりも、すべきことがあるのではないですか?」

「ないわ。私の護衛をする聖騎士様たちの装備が超一流品かつ、その強さに見合ったものでなくてどうするの? 私の聖騎士になってくださるのだから、相応しい装備品を用意するのは当然でしょう」

「──っ」


 彼らの地位や扱いが最底辺だとするのなら、そこから切り崩してくる可能性は大いにある。私の護衛聖騎士(仕事仲間)に茶々を入れることを防ぐためにも、今から準備は必須事項となる。

 

 黒狐(ブラック・フォックス)聖騎士団の人たちは、普通の人たちよりも強い。少なくとも地下迷宮(ダンジョン)90階層までこの人数で到達しているのがすでに異常だと思うのよね。これはハク経由でこの世界の強さを教えて貰ったけれど、冒険者で言ったら全員SかA、新米組がBぐらいなのよね。魔法職や後方支援専門職とかなしで、しかも回復役の神官無しでこれはすごい。


「モモカ殿にはすでに勝ち筋が見えているような気がするのは、気のせいでしょうか?」

「気のせいじゃないわ!」

「……正直この地下迷宮(ダンジョン)内で装備って言っても、まともな工房もないのだぞ」


 現実的な意見をありがとう。でもその辺は大丈夫。抜かりはないわ。


「個々人の装備はそうだけれど、まずは黒狐(ブラック・フォックス)聖騎士団として足並みを揃えるために、制服とコートを新調しようと思っています。幸いにも92階層で強力な助っ人と縁を結べましたから!」

「92階層?」


 一緒に行動していなかったオウカ様だけが、小首を傾げている。ランドルフ様とエイブラム様もなぜか「え?」と顔をしていた。

 ん? あの場にお二人もいたのに、なぜその反応?


 92階層はうんざりするぐらい罠の多い森だったのだ。その中でも、蜘蛛の糸が張り巡らされた場所は、毒蜘蛛と大蜘蛛の縄張り争いの真っ最中だった。そんな中、最弱とされた織り蜘蛛(アラクネ)という種族が保護を求めてきたのだ。

 元々、織り蜘蛛(アラクネ)は穏やかで緑豊かな土地に住んでいたのだが、有るときに賭けをして負けてしまい罰として地下迷宮(ダンジョン)に閉じこめられてしまう。そこで聖職者の許しが無ければ、地下迷宮(ダンジョン)から出られないという呪いに掛けられていたとか。


 ここまで聞けばわかると思いますが、呪い解いちゃいました。

 彼女の身の上を聞き、私はある提案をすることで契約を結んだ。魔物としてではなく精霊としての契約。その内容は彼らの罪を帳消しにするために、私の力になって貰うこと、だ。


 織り蜘蛛(アラクネ)の織りなす糸で作られた衣服は美しく、何より防御力がSSSクラスという素晴らしいものだと鑑定結果が出たことで、一つの可能性を見い出したからでもある。なのでこう提案してみた。


『私の護衛聖騎士様たちの衣服を作ってくださいませんか? 彼らの名誉と、矜持と、尊厳を守りたいのです──仕事仲間として』

「♪」


 それに対して、織物は得意で誰かが着るという行為は数百年ぶりだったらしく、快く引き受けてくれた。そんな彼女の上半身は美しい美女で、下半身は黒い蜘蛛だったけれど、私と精霊契約したことで真っ白な蜘蛛に変わって神々しくなったのだ。しかも姿も変えられて、私の肩に乗るほど小さくなれる。


 若干、なんかとんでもないことをやってしまったような気がしたが、まあ良いかと思うことにした。

 それらの話をオウカ様と、その時は説明不足だったので改めてランドルフ様とエイブラム様に説明をした。


「──ということで、呪いを解いて精霊として契約済みです」

「あの蜘蛛の巣を抜ける間、そんなことが?」

「てっきり神獣殿と何か話しているのかと思っていたぞ」

「あ。もしかして皆様は織り蜘蛛(アラクネ)の姿が見えていない? ハクは見えているのに?」

「「「え」」」


 名前を呼ばれて、ハクは嬉しそうに尻尾を振って、私の腕に頭を擦りつけてくる。何その仕草可愛すぎる。頭を撫でていると、頬につんつう、とされて振り返ると小さなサイズのままの織り蜘蛛(アラクネ)、いや織姫(オリヒメ)がつぶらな瞳で私を見ている。これはどう考えても、私も撫でてほしいだ。そんな愛くるしさが可愛くて、頭をそっと撫でた。


「♪」

(本来の大きさだと女神かってぐらい美人さんになるのに、なんて可愛らしいのかしら)


 思わず頬が緩んでしまう。こんなこと契約ができて嬉しいわ。


「ねえ、織姫。貴女の姿をみんなに見せられる?」

「……っ」


 へにゃりと、困った顔をする。恥ずかしいというよりは、姿を見せたことで殺されないか不安なのだろう。それはそうだ。本来の場所を追い出されて、弱肉強食の世界に身を置いて誰もが敵だった中でずっと行き続けてきた。周りが全て敵に見えて怯えるのもしょうがないだろう。でも今は違う。


「織姫、ここには敵は居ないから大丈夫。私の仕事仲間になる人たちだから。それに貴女はもう精霊になったのよ」

「……!」


 ぽん、と姿を見せる。白銀の長い髪は床に垂れるほど長く、目鼻立ちが整った超美女で、空色の瞳が目立つ。上半身は人と変わらず胸元だけブラのような白い布を巻いていて、下半身は白い蜘蛛で足が六本有ある。


「女神様みたいに綺麗だわ」

「アルジ♪」


 頭を撫でようとしたが、背丈的に届かない。それに気付いた織姫は屈んでくれたので、頭を撫でさせて貰った。

 固まっていたランドルフ様たちだったが、すぐに聖騎士として膝を突いて傅いた。


「精霊殿。万が一、我々が力の及ばない敵と遭遇した際にはモモカ殿を第一に考えてお守りいただけるようお願いいたします」

「ランドルフ様!(嬉しいけれど死亡フラグっぽいのを立てるのは、やめてね!? 安全、平和なスローライフを満喫しつつ、グルメ取材したいの!)」

「……従僕(サビチュール)

「「「!!?」」」


 ぽぽん、とランドルフ様たちそれぞれの肩に、小さな白いもふもふの蜘蛛が現れた。凄く小さくて可愛らしい。


「織姫、あの子たちは?」

「加護♪」


 もう少し補足説明を求む。


『美精霊の加護だよ。精霊や妖精が気に入った人間にするもので、戦闘力はあまり高くはないけれど足止めとか防御は高い。あと』

「あと?」

『この時代、精霊や妖精が人間を気に入ることはめったにないから、それだけで名誉聖騎士になる』

「おふっ……」


 さらっと凄いことになって来た気がする。まあ、もともと黒狐(ブラック・フォックス)聖騎士団の知名度を回復させるつもりだったので、問題は無いけれど引き抜きとか起きそう。


『大丈夫。桃花と一緒に居るからこその加護だから、この聖騎士団を辞めたら加護も解消になる』

「まあ、それはヘットハンティングや引き抜き防止に最適ね」

「……モモカ殿、つまり我々三人に精霊の特殊条件下の加護が付いたということで、合っていますでしょうか?」

「はい。そんな感じです」


 三人は「おお!」と子どものように喜んでいた。思ったよりも好反応で安心する。その後、食事の時に、織姫を聖騎士団たちに紹介することで話を進め、次に資金調達に関しての話になった。

楽しんでいただけたのなら幸いです。

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