第39話
王宮の大広間は、かつてない静寂に包まれていた。
高い天井。金装飾の壁。
だが、その輝きはもう、国を照らす力を持たない。
玉座に腰を下ろすはずの王――アルヴィン三世は、今や私室に幽閉されていた。
王族としての権威は剥がれ落ち、政務はすべて、リース家を中心とした新政庁に移されていた。
すでに数日前、王都全域で布告が出された。
「アストリア王国の新たな政は、神蛇の巫女とその血を継ぐ者によって導かれる」
この布告と共に、旧王家の排除が正式に完了したのだ。
一方、アリアナは書斎で静かに政務文書に目を通していた。
新王・カイルの即位に伴い、彼の補佐として影から支える役目を果たしている。
「……税制の見直し。王都の治安改革。
貴族の再編成……やるべきことは山ほどあるわね」
彼女の声に、乳母に抱かれた娘のエリシアが小さく笑い声を上げた。
「あなたのために、この国を変えるの。もう、誰も泣かないように」
左腕の神蛇が、静かにうねった。
それは祝福でもあり、警告でもある。
“選んだ道を進め”と。
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王宮地下の幽閉部屋。
そこに閉じ込められたのは、王アルヴィンとレオノール、そして第二王子、第三王子の四名だった。
王妃は祖国へ戻され、余生を母国で過ごすことになった。
そしてセレナはすでに、離婚手続きを経て隣国に“輿入れ”していた。
「我らの血が……政から消えたか……」
アルヴィンの声は弱々しかった。
「なぜだ……なぜ神は、我らを見放した……?」
だが、その問いに答える声は、もはやなかった。
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アリアナは、民の声を集めていた。
「貴族の横暴がなくなって、街が穏やかになった」
「子どもたちにパンが届くようになった」
「税が下がって、生活が楽になった」
小さな声でも、積み重ねれば、それは“希望”と呼ばれるものになる。
「この国は、生まれ変わろうとしている」
その変化の中心にいるのが、自分であると――アリアナは、ようやく自覚した。
(……王族ではなく、民が国を支える。私は、その道を導く)
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夜、新王カイルのもとへ。
「姉上……ありがとう。僕一人じゃ、到底ここまで来られなかった」
「違うわ。あなたの誠実さが、民を動かしたの。私はただ、神蛇の巫女として、少しだけ背中を押しただけ」
そして、アリアナは窓の向こう――月の光を浴びる王都を見つめた。
「これからが、本当の戦いよ。
今度は、国を、民を、永く護っていくための――ね」
長く続いた王家が終わり、新政が始まった。
新しい国はここから長く繁栄していくことになる。
次で最終話になります。




