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わたしのスキルとファミリー(前編)

 わたしは今、職業統括の鑑定室?とか言うところにいる。

ここの建物に来るのは二回目で、一度目は運び屋の職業登録に来た時だった。その時は案内板に沿って入り口から左側にあった就職所に行って、登録して直ぐ出たからよくわからなかったけど、その隣には鑑定所なるものがあったのね。


 うん、全然見てなかった。


 鑑定所の主な仕事は「魔獣鑑定」「アイテム鑑定」「スキル鑑定」と大きく分けて三つで、ここの職業統括以外にも協会の中にもあるけど、「スキル鑑定」だけはここにしか無いみたい。リンダさんがなんでここにしかないのか言ってた気がするけど、よく聞いてなかったからわかんない。

 

 まっ。知らなくても死にはしないから大丈夫でしょ!


 それで、普通鑑定は鑑定所のカウンターでやるみたいなんだけど今回は何故か部屋に通されたの。


 why?なんで?うん。あたしもよく分かんない。


 リンダさん、レイナと一緒にここまで来て、リンダさんが鑑定所の受付で声を掛けたらある程度の話がついていたようで、犬獣人の可愛らしい女の子がここまで案内してくれた。

 部屋の中は至って簡素で、ぱっと見応接室にしか見えない。ただ、中央にあるテーブルとソファーは外観の宮殿ちっくな建物と雰囲気ピッタリなとっても豪華な作りの物だ。この部屋の内装だけおかしい気がする。


 で、わたし達は今三人横並びにソファーに座って鑑定長なる人が来るのを待っている。受付の人が飲み物を出してくれて、これはハーブティーのようでとっても香りがいい。きっと高いお茶なんだろうなぁ。


 そうやってぼんやり考えていたら、鑑定長なる人がやってきた。


「いやー。すまない。大変お待たせしました。あ、リンダ!もいるんですね……。」


「ええ、いますわよ。もちろん。あら、でも居たらまずかったかしら?」


「い、いえ、そういうわけではありません。」


「あらそう。ならいいんですけど。」


 二人は仲悪いのかな?


「それで、今日はどうされたんですか?わざわざこんなところまで。リンダは今更鑑定なんて必要ないでしょ?」


「ええ。もちろん。紹介するわ。こちらはレイラとミミリー。」


 リンダに即され、わたし達は挨拶をする。

「レイラです。」

「ミミリーです。」


「どうも、初めまして。私はここの責任者。鑑定長のガリアです。見ての通りエルフです。それで、鑑定して欲しいのほどちらかな?それとも二人?」


「鑑定して欲しいのはミミリーよ。実はね、うちに来てた仕事で…。」


 と、リンダが経緯を話す。まだ駆け出し運び屋であるわたしが石を投げつけ、あのウィンドリードラゴンを一撃で仕留めた事。その仕留めた力は恐らく「怪力」のスキルだと言う事。しかし、その「怪力」のスキルがなんの怪力か分からないし、わたしには全く自覚が無いため鑑定に来たとのことだった。


それを聞いたガリアは思案する。

 (普通はそんな事でわざわざクエスト課課長であるリンダまで出張ってきて、別室にまできて鑑定するようなことでは無い。ウィンドリードラゴンは確かに普通のドラゴンに比べて特殊だしこの辺では珍しい。ではなんで?今日きたのか?うーむ。)


「ウフフ。ガリア。考えてるわね?確かにそうね。わざわざ何で?って思うわよね。私もそう思うわ。」


「ならどうして?」


「考えてもみなさい。この子ミミリーはまだランク一つ星で15歳の駆け出し。しかも特に誰かに訓練を受けただけではなく、咄嗟に力を出して石を投げたらドラゴンの硬い頭蓋を貫通したのよ。しかもレイナの話だとその石は勢いを無くさずその後ろにあった岩をいくつも貫いたみたいよ。どう考えてもおかしいでしょ?」


「なっ!!石を投げたって、本当に正しく投げただけ?貫通属性を載せたり、硬化をのせたりしたとかじゃなく…。」


「ええそうよ。ねっ、ミミリー?」


「あ、はい。えいって投げただけです。あ、でも力を込める時ほんのり光ったような気もしたなぁ。」


「ははははははは。はーーー。そうですか。ただ投げただけですかー。」


「ねっ。普通じゃないでしょ?」


 二人のやりとりにわたしが質問する。


「あ、あの。そんなに普通じゃないことなんですか?確かに怪力以外のスキルは使ってませんが、怪力ならそのくらいできるものなんじゃないんですか?」


 それにガリアが答える。

「それは私が説明しよう。確かに怪力のスキルは常人よりも多くの力を出せるため、普通は持てない重たい物を持ったり投げたり出来るし、威力も上がるだろう。けれど怪力にもランクがあってその種類に、よって全然違う。多くの人に見られるのはゴブリン、オーガ、オークなどが代表的だね。ランクにするとDからFにあたる。もちろん一番下はFになるよ。ここまではいい?」


「はい!」


「それを踏まえた上で今回の事を考えると少なくともFはもちろんDランクのスキルでもウィンドリードラゴンの頭を貫けない。せいぜいちくっと当たるくらいだね。人間やゴブリンなどの低級魔獣相手なら話は別だけどね。上位魔獣やドラゴンのような上位モンスターには通用しない。じゃあ貫けるランクはどの程度か。自力を抜いて考えると最低でもA以上は無いと無理だね。例えば石でなく、槍や剣などを投げて貫通させるくらならDランクでもできるかもしれない。もしくは、剣を奮って倒すならもしかしたら。とそれでも、確実では無い。そのくらいドラゴンは強敵だし、皮膚は硬い。それを踏まえた上で考えると。」


 ガリアは頬を紅潮させて熱く語ってる。これがリンダだったら絵になるのに………


「ミミリー。君の持つ怪力スキルは最低でもA。もしかすると、それ以上の可能性もある。君は駆け出しでまだ知らないだろうから説明すると、もし、そのスキルがS以上とかになってくると、王国専属で雇われる事になる。」



「えええええええええええええ!」


 流石のわたしでも分かる。それはとても、面倒だ。

 だって、そうなるときっと城に住む事になって、礼儀作法が煩くなって、自由が無くなるってことでしょ?前にいた日本の政治家みたいに、ミスしたら記者会見とかして頭下げたりして、国会で追及されたり、国民やマスコミから叩かれて。えええー。そんなの嫌ーーー。


 


「ミ、ミミリー。ど、ど、どーするの?」


「えっ?そんなの決まってるよー。絶対に嫌!!」


「はああああ?なんでーー?王国の専属だよ?永久就職だよ?威張れるんだよー?」


「だって、そんなの面倒だよ。」


「威張るのはともかく、ほぼ生涯安泰だとは思いますよ。」

 と呆れ顔のガリア。


「ウフフ。私もお城はいやですわね。」


「ちょっ。リンダまで。名誉な事なのに。」


「だってガリア慣れない人には窮屈なだけですわよ。まぁ、いい暮らしがしたい人にとっては最善かもしれませんけどね。」


「うーん。そうかなぁ。まぁ、それは置いておいて、そもそもまだ鑑定してませんから、皆さん落ち着いて下さい。」


「あら、そうでしたわね。ウフフ。」


「じゃあ、ある程度の説明は済んだので鑑定してみましょう。」


 ガリアはそういうと、空間から一つの魔力紙を取り出す。その紙に血判を押しながら触れる事でその人が持つスキルを念写のように映し出す事が出来る。


「ミミリー。これに触れて自分のスキルを感じるようにイメージしてみてください。」


「う、うん。分かった。」


 そう言ってわたしはその紙に触れ、自分の中をイメージする。


 その瞬間、紙がパッと一瞬光ると段々と文字が浮かび上がってくる。


名前 フローレンス ミミリー

出身 ……フロ…

スキル 〈陽の姫〉…怪力A+ 探索E 空間収納B 

    浮遊付与B 

職階 運び屋

称号: ドラゴンバスター

種族 …人

階級 

家族 …

「おおー。これがあたしのスキルかー。なんか少し増えてる。しかも、出身とか名前とか色々出てるー。すごーい。」


「ガリアさんどうですか??ミミリーは城に住めますか?」


「まぁまぁ、落ち着いて。えーっと。んーーーー。所々抜けてるし、ちょっと変ですね。うーむ。まあ、とりあえずいいでしょう。それで…スキルは…リンダどう思います?」


「そうねえ。確かに普通なら全部でるのにおかしいですわね。特に出身地が…どこかで見たような。抜けてるからなんとも言えませんが…。スキルは…うん。とりあえず城には住まなくてすみそうね。ただ、この〈陽の姫〉と言うのが分からないわね。初めて見るわ。」


「やはりそうですか。長い間鑑定してきた私も初めて見ます。ただ一つ言えるのは怪力がこの〈陽の姫〉に付随したスキルだと言うことですね。恐らく称号のようなものに見えますね。魔法使いにも〈闇のもの〉とか〈聖女〉とかありますし、剣士にも〈剣聖〉や〈師範〉とかありますからそれと似たようなものでしょう。そのため、ランクはAとあるようですし。とりあえず、これなら上への報告は必要無いですし、ミミリーさんが嫌がっている王国専属ならなくて済みますよ。」


「ほんとー??よかったーーー。」


「ただ、一つ気になる事があります。」


「え?なに?」


「それは恐らくリンダも感じてるかと思いますが、ミミリー、レイラがまだ半人前という事です。」


「ええ。私は二つ星だけど、まだまだだし、ミミリーもそうなのは分かります。でも、それがどうしたんですか?」


「ウフフ。それは私から話しましょう。いいかしらガリア?」


「ああ。お願いするよ。」


「此度の依頼が協会で騒ぎになっていたのは貴方達も知っているわね?」


頷く二人。


「その騒ぎになった仕事が、新米二人の女の子によって完遂された。その事で騒ぎは更に大きくなる。それと今回倒したウィンドリードラゴンが希少種のため、驚異度がAクラスになるから倒したミミリーには、王国からドラゴンバスターの称号を受ける事になる。」


「「ドラゴンバスター??」」


「そう。Aクラス以上のドラゴンを倒した者に与えられる称号。剣聖や魔導聖や勇者などと肩を並べる称号。それを新米の女の子が得たとなると、大手ギルドや大手商会、大手ファミリーから目をつけられるでしょうね。」


「えーーー。わたしは気ままがいい!!」

「私も!ミミリーと離れたく無い!」


「ウフフ。そう言うと思いましたわ。ガリアもそこが心配なのでしょう。そういった右も左もまだよく分かってない若者が周りにいいように使われ、騙され利用されるのは私も見たくありません。なので、一つ提案があります。」


「提案?なんですか?」


「二人でギルドもしくは、ファミリーを組んでみるのはどうかしら?」


「「????」」


 何のことか分からなくて顔を見合わせる二人。








 



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