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マイペースに異世界暮らし 小話集  作者: 汐琉


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ハロウィン実況してみたwwwの末路

タイトル通りです。


話題になっていた迷惑系動画配信者さん視点です。


書いてて頭が痛くなりそうな方でした。(合掌)

●ハロウィン実況してみたwwwの末路



 俺は動画配信を生業としている、ビッグになる予定の男だ。


 世間はまだ俺の偉大さがわからないようで、アップした動画はほとんど閲覧数が伸びず、登録者の数もやっと三桁に手が届くぐらいしかいない。


 二十歳を過ぎて十回を越える誕生日を迎えた後も定職に就かない俺に、両親の目も厳しくなってきた。


 ここはひとつどデカく話題になるようなビッグな動画を撮るしかない。


 そうすれば俺を馬鹿にしている周囲の奴らの鼻もあかせるし、有名になって両親を安心させてやれる。


 思い詰めた俺の目に入ったのは、お隣りさんへ回しておいてと母親に頼まれていたのに回すのを忘れていた回覧板だ。


 そこに書かれていたのは数日後に迫るハロウィンの注意事項だ。


 それは幼い頃から耳にタコが出来るほど何度も聞かされていた、くだらない注意の言葉。


『ハロウィンの日は外へ出てはいけない』


 そのくだらない一文は、今の俺には天啓に光り輝いて見えた。


 そう! そうなんだ! 動画配信者ってのは、他人がしないような事をあえてする生き物なんだ!


 俺が素晴らしい仮装をしてハロウィンの行列へ紛れ込み、皆が見たいであろうハロウィンの生の映像を届けてやる。


 そう決めた俺の脳内を占めるのは不安ではなく、皆が俺の素晴らしい行動を讃える妄想……ではなく、すぐ現実になるはずの光景だ。


 たくさんのテレビが取材に来て、俺の顔写真や動画がニュースを彩り、友人でなかったような元同級生達が俺との思い出を声高に語る。


 想像するだけでアドレナリンが出まくる光景に、俺はいそいそと仮装と動画配信の準備を進めるのだった。



 ──そしてついに迎えた決行日当日。



 突撃の時間は午後四時だ。


 本当は夜の映像が欲しかった。だがしかし、残念ながら暗い所で撮影出来る機材の用意が間に合わなかったのだ。


 決して怖気づいたからではない。


 まとう仮装は無難にゾンビだ。


 自画自賛となるが、なかなか男前のゾンビになった。


 疑う事を知らない無知な両親は、あのくだらない注意に従って家の奥にこもって静かにしている。


 おかげで俺を邪魔するものは何もない。


 それでも細心の注意を払って玄関の扉を開け、静かに外へと出る。


 頭に着けたカメラはすでに録画を開始している。


 マイクは襟元に仕込んであるが、最悪音声はまとめ映像のみに編集で後付けするのでもいいだろう。


 出来ればスマホを使ってリアルタイムで俺の美声による実況をしたいが、そこは臨機応変にするのが一流というものだ。


 昨今のハロウィンに対する恐怖を煽る報道が政府とメディアによる策略だとすると、あまり最初から目立ち過ぎると何者かによる妨害があるかもしれないからな。



 俺はシゴデキだからな、先の展開もきちんと読んでいるんだよ。



 移動は車を使いたかったが、うちには親の車しか無い。……そもそも、俺は免許を持っていないので、車での移動は出来ない。


 親には何度も「免許ぐらい取ったほうが」と口煩く言われたが、俺ぐらいになると運転免許なんて要らないんだ。

 車での移動が必要なら、タクシーを呼んだり運転手を雇えばいいんだからな。


 今日も早速スマホを使って電話でタクシーを呼ぼうとしたが、


「はぁ? あの今日の日付わかってます? そちらの地域で本日車での移動なんて出来るとお思いなんですか? 何考えてます?」


とかいう頭の悪そうな若い男の声で罵られた上、こちらの言葉も聞かずぶった切られてしまった。


 一体どういう教育をしてやがる!


 苛立ちを隠さず盛大に舌打ちをした俺は、今電話をかけたタクシー会社のレビューに星一つの低評価をつけ、口コミサイトに『電話対応が最悪だった。お客様は神様だという言葉を知らないらしい』という書き込みをする。

 相手が俺のように心優しく理性溢れる大人だった事に感謝して欲しいものだな。

 心の広い俺じゃなければ、理由のわからない罵倒の書き込みだけされてしまい、自分達の何処が悪かったなんてわからずに終わっていたぞ?

 声から想像して脳裏に浮かんだ頭の悪そうな『若い男』へニヤリと嘲るような笑みを向けてから、俺は改めて移動する手段を考え始める。

 荷物は最低限まで減らせば、リュックサックに詰め込めるだろう。

 俺は軟弱でヒョロヒョロした今のガキとは違って、体つきはいいからな。


 そう結論づけて、俺はカメラとマイクを身に着けたまま、自らの肉体と道具を使っての移動をする事にしたのだ。



 つまりは、自転車だ。



 もちろんママチャリと呼ばれるダサい自転車ではなく、俺にぴったりのロードバイクと呼ばれる速度の出るタイプの自転車だ。


 俺が「自転車があれば外へ出る気になるかもしれない」と言ったら、母親が嬉々として買ってくれた物だが、初めて乗って外へ出たところ近所のガキに笑われてから乗っていなかった。


 それが今日という日に役立つとは。


 俺にはやっぱり先見の明があるのかもしれない。


 それとも風向きが俺に来ているのか。


 乗るしかないよな、このビッグウェーブってやつに!


 気合を入れて自転車のペダルを踏むが、油が切れているのかなかなか上手く前に進まず、ふらついてしまう。


「クソ、メンテナンスぐらいしとけよな」


 小声で毒づきながら、それでも何とか走り出した久しぶりの外の道路は、人気(ひとけ)が全くなくまさに俺の天下への覇道のようだ。



 自転車の状態の悪さは俺のポテンシャルでカバーして何とか走らせる事数十分、やっと俺は『ハロウィン御一行』を見つける事が出来た。


 奴らがいたのは住宅街を抜け、両側に田んぼが広がる田舎臭い所だ。

 どうせならもっと映像として映える場所にいて欲しいものだが、素人相手にそこまで求めるのは酷だろう。

 それに今回のメインは、俺がこの華麗なるゾンビの仮装であの集団にバレずに紛れ込んで、その姿を間近で撮影する事だからな。


 フンッと鼻息を荒くした俺は、自転車を適当な所へ乗り捨てて、ゆっくりと移動している集団の背後へと近づいていく。


「……これが真実の光景だ。俺様が視聴者に見せてやろう」


 スマホを構えながら小声で実況を始めている俺は、あの集団はただの仮装して危険地域で悪ふざけをしている集まりだと。


 それを真似る者が出ないよう政府が警告を出しているだけなのだと。


 自分の考察の鋭さに酔ってしまい、口元が緩む。


 俺がその偽りをバラしてやる、そう思っていた。


 声が聞こえるほど近づいてはっきりとした彼らの姿は、俺の仮装なんて幼稚園児のお遊戯にしか見えなくなる程のクオリティの仮装にしか……いや、本物にしか見えない。

 ガヤガヤとした話し声に混じり、ゲハゲハやグハハなど個性的な笑い声のようなものも聞こえてくる。


 まるで、それは、化け物の嗤う声のようで……。


 俺は脳裏に浮かんだ想像を頭を振って追い払おうとして、頭に着けたカメラの存在を思い出して動きを止める。

 これをすると録画している画像が乱れてしまう。


 突入直前にスマホは服のポケットに隠してそのまま撮影を続けていて、リアルタイムの配信を続けている。

 これは母親のお手製だ。

 見た目はダサいが機能性が良いので使ってやってるのだ。



 そんな事より、ハロウィンが危険な化け物の大移動なんてのは、政府の出したインボー論というやつだ。


 いくら危険地域に住んでいるからと言って、そんなのを信じている奴らと俺を一緒にして欲しくない。

 それに我が家は中央寄りだ。モンスターや危険な動物が接近する事などまずあり得ない。

 その為に防衛隊という組織があるんだ。

 もし我が家にモンスターが近づいたりしたなら、俺の次の動画のテーマは『役立たずの防衛隊』にしてやる。



 目の前の現実から目を逸らしてつらつらと思考を巡らす中、やたらと汗が垂れているのは、自転車を漕いで来たせいだ。決して恐怖のせいじゃない。


 思い切り汗を拭いたいが、あまり拭うとゾンビの仮装が剥げてしまう。



 ──そうしたらバレてしまうじゃないか…………目の前にいる本物の化け物達に俺が人間だと。



 俺は理性的な人間で、一流の動画配信者だ。怯えて逃げ回る三流とは違って、きちんと推測して導き出された目の前の現実を認められるのだ。



 し、しかし、十分撮れ高は出来た。今頃配信は大騒ぎだろう。

 ここで欲をかくのは馬鹿のする事だ。今から踵を返して逃げ……いや、帰る算段をするか。


 そう思っても足が思うように動かない。自転車を漕いだダメージだ。


 何とか目立たないように集団の後ろを付いていく事しか出来ない。


 そうしてしばらく進んでいると、別の方向から現れた集団が背後から合流し、さらに逃げ場がなくなる。


 ………違う、これは、撮れ高が増えたんだ。新たなチャンスだ。


 新たに合流した集団は、全員額に角があり、肌色もどう見ても人間のものではない。


 め、珍しく、政府はきちんと本当の事を言っていたようです。


 心の中で後でつける予定の編集での台詞を丁寧な口調で呟いておく。

 乱暴な言葉遣いは馬鹿に見える。きちんとした言葉を使わないといけない。


 それに俺は罵倒するだけの能無しではない。


 ここは政府を罵倒するのではなく、事実だったなら事実として認め、検証しました! という体の動画にすればいいだけだ。


 俺がこうしてここへ潜入してリアルタイムの動画配信という他の誰もなし得なかった事を実行しているという事実は揺らがない。


 幸いにも俺の素晴らしい仮装はバレていない。


 後は上手くタイミングを見計らってこの行列から抜け出せば……。


 逃げる訳では無い。


 このおどろおどろしい空気を肌で感じた俺自身の生の声を愚鈍なマスコミに語ってやらないといけない。


 ゆっくりと徐々に歩く速度を遅くし、集団から離れようとしていた俺の耳に、シャンシャンという鈴のような音が聞こえてくる。


 おそろしい音や声ばかり聞こえてきていた中、不意に聞こえた清涼な音に惹かれてそちらへ顔を向けてしまう。


 そこには俺の混ざっていた集団を待つように、着物姿の色っぽい女が狐の面をした気持ち悪いガキ共と一緒に佇んでいた。


 その辺の微妙なアイドルなんかより遥かに美しく色気溢れる女の姿に、逃げようとしていた気持ちが消える。


 こんな女が混ざっても大丈夫なら、俺のような完璧に仮装をしていればさらに問題ないだろう。


 どうせならさらに撮れ高のありそうなこの女の正体を明かしてやる。




 確認は出来ないが、きっと今俺の生配信はとんでもなくバズっているだろう。



 帰って反応を見るのが楽しみだ。






 そう考えていたであろう、とある迷惑系動画配信者。



 しかし、彼が自身の生配信の反応を見る事は一生叶わない願いとなったのだった。



 次に彼の姿を見つけたのは動画を見た視聴者……などではなく、ハロウィンの為巡回強化をしていた防衛隊の隊員だ。



 正確には見つかったのは、血に塗れたスマホと、彼だった(・・・)肉の欠片。



 これがハロウィンを実況しようとした彼の末路だった。



 そして、彼はある意味夢を叶えた。



 有名になって、テレビに出るという夢を──。

いつもありがとうございますm(_ _)m


動画配信とか全く知らない奴が書いておりますので、細かいツッコミはオブラートに包んでお願いいたします。


この後どうなったか視点……はたぶん白狐さん視点となります。

気が向いたら書きます←

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