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第28話 有無を言わせない存在

 俺が布団を被って亀のようになって、しばらくして困り果てた職員さんが誰かに電話する声が聞こえた。

 そしてほどなくして戸を荒々しく開ける音がして、俺は我に返った。

 不味い。こんな姿を見られたら何を言われるか。慌てて布団から顔を出そうと腕を動かす前に、荒々しく布団を剥ぎ取られた。

「おう、起きたか」

 爺ちゃんはぶっきらぼうにそう言うだけで、職員さんが持ってきたパイプ椅子に座って腕を前で組むだけだった。

 てっきり喝を入れられると思ったら何も無くて、俺は足元にかけ直された布団の端を握って爺ちゃんの様子を伺ったが、爺ちゃんは何も言わずにそこに鎮座するだけだった。

「ええと、では残りを話しますよ?」

 職員さんは俺と爺ちゃんの顔を交互に見ながら気まずそうに続けた。

「イタリアとスペイン、フランスのみならず異世界での被害も同じでした。そして成体が確認されていないことから、検問所としては繁殖目的ではなく再現すること自体を目的としているのではないかという見解です」

 再現が目的。ならば再現をして何になるのか。ああ駄目だ、ヒトは人と違う。理解しようとするな。ヒトは理解の範疇を軽々と越えるものだから。

 俺がまた悶々と考え込みだしたら、爺ちゃんが眉間を親指でぐりぐりと押してきた。

「まずは全部聞け」

 反論しようと口を開けて止めた。爺ちゃんの方が正しいや。

 俺が大人しくなると、爺ちゃんは指をどけて職員さんに目配せした。

「指名手配犯を捕まえる為の方法が、確実な手段として……」

 職員さんの声が萎んでいき、唇が閉じられ項垂れた。俺は咄嗟に爺ちゃんを見た。

「まあ、あれだ。お前を餌にしておびき出す方法が上がっていてな、それをやるかで上層部連中で揉めている最中だ」

 爺ちゃんはまっすぐ俺の目を見て続けた。

「あいつがやらかした事の中で今も生きているのはお前だけだ。今までは契約と警告で守りっぱなしだったから気づかなかったかもしれんが、何もしないお前をほっぽり出したらあいつも気づいて来るかもしれん」

「でも来るかわからないよ。向こうは俺が拒絶したと思ってるんでしょ? 来ないかもしれない」

 別に生き餌になることに文句はない。むしろ俺のせいで犠牲になった方々を思えば囮なんていくらでもなる気はある。

 問題ははたして俺にそれだけの価値があるのかだ。

「それは問題ないさ。必ず来るように仕向けるからな」

 爺ちゃんは俺の左手を掴んで不敵に笑った。

「お前、利き手は右だったよな?」

 職員さんは項垂れたまま小さな声で俺のことを嘆いている。そして爺ちゃんのしっかり骨太くも皺やシミの多い無骨な手が、俺の貧弱な左手をより力強く掴む。

 俺は大体のことを察して頷いた。

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