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【7/29コミカライズ先行配信開始!】こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記  作者: 陰陽


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第149話 ホテルのバイキング風スクランブルエッグと、青じそドレッシングの海藻サラダと、大豆もやしのナムルと、豆腐と水菜の中華スープ

 俺は今朝の朝食を、絶対にボイルしたソーセージとスクランブルエッグと決めていた。

 突然食べたくなることのある料理のひとつで、ホテルのバイキングでは、この組み合わせばかりをお代わりすることもある、俺にとっての鉄板メニューなんだ。シンプルだからこそ腕が問われて、ホテルのスクランブルエッグって本当に美味いよなあ。


 俺は卵、ソーセージ、大豆もやし(豆もやし)、豆腐、水菜、大葉、海藻、カニかまぼこ、レタス、カイワレ大根、生クリーム、醤油、砂糖、塩、お酢、鶏ガラスープの素、ケチャップ、バター、胡麻油、にんにくチューブ、オリーブオイル、白いり胡麻を出して、ステンレスのボウルを準備した。


 材料は1人分につき、卵2個、生クリーム70ミリリットル、塩ひとつまみ、バター10グラム。たったのこれだけだ。水よりは牛乳、牛乳よりは生クリームのほうがコクが出てうまい。生クリームがなければ、牛乳を少し多めに入れて、コーヒーフレッシュを1つ入れてもそれっぽくなる。ようはコクだ。


 卵に生クリームと塩を入れて混ぜていく。

 卵が新鮮で卵黄が潰しにくい場合は、卵を混ぜるのにフォークを使ってやると便利だ。

 お箸よりも素早く卵を溶くことが出来るからな。泡だて器で混ぜると混ぜ過ぎになるから、混ぜるというより、溶くって感じだな。

 それを弱火で熱した鍋にボウルを浮かべて、湯せんでじっくりと加熱していく。


 卵のふちが固まってくるまで、じっと待ちながら、ゴムベラで優しく混ぜてやるのだ。

 おすすめはステンレスのボウルだ。熱が卵全体に伝わりやすく、早く仕上がるからだ。

 湯煎で作るスクランブルエッグは、鍋で直接加熱する方法よりも、より滑らかな食感に仕上げることができる。面倒に思うかもだが1人前ずつ作ったほうが結果早く出来る。


 加熱時間はやや長くなるが、温度はむしろコントロールしやすいから、実は子どもでも作りやすいんだよな。俺はある種のズボラ料理だと思って作っている。鍋やフライパンに卵が付着したり、加熱し過ぎが気になるのならば、むしろ湯せんをお勧めする。そこまで時間をかけたくなければ中火でも構わない。


 そんなわけで、お手伝いが大好き、かつ混ぜ混ぜが大好きなカイアと一緒に、じっくりゆっくり、ステンレスボウルの中の卵液を、固まってくるまでゴムベラで混ぜてやる。キラプシアがどうしても塩を振りたがるので、ひとふりだけな、と釘をさしておいてから振らせてやった。アエラキは卵を割る係りだ。


 ちなみに卵を入れる前に、ステンレスボウルの内側の、少し上の部分にバターを塗っておいてやると、卵の薄い部分のこびりつきを防ぐことが出来て、洗い物が非常に楽になるのでオススメだ。余熱でもたまごに火が通るから、だいたい7〜8割くらいまで固まってくれば、火から下ろして問題ない。


 ちょうどいい固さになる手前くらいがベストって感じかな。最後にバターを加えて予熱で溶かしてかき混ぜて、ホテルのバイキング風スクランブルエッグの完成だ。フライパンで加熱するなら最初に入れるんだが、湯せんの場合は最後に加えることで、バターの風味が残り、一気に上品な味わいになる。


 続いて乾燥タイプの海藻10グラムを、水で戻して水気を絞り、レタスを大なら3分の1、小さければ半分を一口大にちぎり、カイワレ大根は根を切って、カニかまぼこは適当にほぐしてやり、さっくりとまぜあわせる。

 そこに青じそドレッシングをお好みの量混ぜ合わせたら、海藻サラダの完成だ。これで大体4人前の分量だ。


 青じそドレッシングは、大葉を20枚細かく刻むか、ミキサーにかけたものに、醤油、砂糖、お酢、にんにくチューブを、9対4対4で混ぜ合わせたものに、オリーブオイルを120ミリリットルと、白いり胡麻をお好みで加えてよくかき混ぜて、ひと晩冷蔵庫で冷やしてやったものだ。底に大葉が沈んじまうから、かける直前によく振ってやる。


 大葉を洗った時に、水分が残っていると傷みやすいのと、水っぽくなってしまうので、キッチンペーパーなんかでしっかりと水分を拭き取っておくのがコツだ。

 俺、大葉の切り落とした根本の匂いが妙に好きなんだよなあ。いつもしばらく嗅いじまうんだ。うん、今日もいい出来だな。


 大豆もやし(豆もやし)200グラムを700ワットの電子レンジで4分加熱したら、大豆もやし(豆もやし)がまだ熱いうちに、砂糖2つまみと塩をひとつまみ、醤油を大さじ1加えて混ぜ、下味を付けておいてから、少し粗熱が取れたら、ごま油大さじ1、にんにくチューブ少々、白いり胡麻小さじ2を混ぜておいたものとあえてやるだけだ。


 これで大体2人前の量かな。俺はいつも面倒臭いので、ボウルの中で下味をつけた大豆もやし(豆もやし)をちょいとよけてスペースを作ってやり、ボウルの中でそのまま調味料を混ぜてから、そのまま大豆もやし(豆もやし)とあえたりなんかする。洗い物も減るから楽なんだ。これだけで大豆もやし(豆もやし)のナムルの完成だ。


 続いて豆腐と水菜の中華スープ作りだ。豆腐はさいの目切り、水菜は根元を切り落としてひと口大に切り、お湯を沸かしておいた鍋に鶏ガラスープの素を入れて、豆腐、水菜、塩をひとつまみ加え、水菜に熱が通ったら、盛り付け直前に白いり胡麻と胡麻油と香りつけの醤油を加える。これだけだ。


 ケチャップを添えて、熱湯でボイルしたソーセージを皿に乗せ、パンか、ご飯とモリモリ食べるのだ。ちなみに俺とカイアはご飯派かな。アエラキは今日はパン派のようだ。

 今朝の朝ごはんは、ホテルのバイキング風スクランブルエッグと、ボイルしたソーセージと、青じそドレッシングの海藻サラダと、大豆もやしのナムルと、豆腐と水菜の中華スープだ。ああ、早く食べたい。


 俺は海藻サラダが好きで、いつも2人前は食べるので、必ず4人前作ることにしてる。

「いただきます。」

「ピョルルッ!」

「ピューイ!」

「チチイ!」

 みんなで手を合わせていただきますをしたら、モリモリと朝食を平らげる。


「今日はお父さんの職場の人たちとピクニックだからな。お弁当を楽しみにしとけよ。」

 そう言うと、カイアもアエラキもキラプシアも嬉しそうにしていた。キラプシアも今日はお留守番じゃなく、一緒に連れて行く予定なのだ。樹木の妖精さんであるキラプシアは自然が大好きだからな。せっかくだから連れて行くことにしたんだ。


 今日は従業員の親睦を深める為に、希望者を募って近くの山にピクニックに行く予定なのだ。その内交代で遠くに社員旅行なんかも出来たらいいと思っている。山を登るから、家族連れ可にはしたが、大人たちと、ある程度大きな子どもたちが登ることになった。

 赤ちゃんは移動販売の馬車に乗って、親御さんたちが抱っこして登ってくるのだ。


 ちなみに以前にもカイアを連れて行った、割りとなだらかな山なので、ちょっと休めば小さい子どもでも登ることが可能だ。

 お昼ごはんを山で食べたら、王都に繰り出して、コボルトの店と、移動販売と、クリーニング店を利用してくれた人たちが行ける、お化け屋敷にも行く予定なのだ。初めて見るだろうし、きっと喜んでくれるだろうな。


 保育所の保育士さんたち、移動販売の冒険者たち、ハンバーグ工房の従業員、警備兵の人たち、馬丁、商店の従業員、コボルトのアンテナショップの従業員と、まあかなり大所帯だ。今日は移動販売の村々にも、事前にお休みだと伝えておいてある。つまりは有給で参加して貰っているのだ。俺は社員旅行やらは会社が金を出して有給でやるものだと思っているんだが、そんなところはこの世界にはないらしく、みんなにかなり驚かれた。


 月小金貨5枚、つまり5万とはいえ、風呂と家具がついている社宅、保育所等の補助金つき、安くて美味い社食に、夜も近所で買い物が出来る店もあり、有料だがコインランドリーなんかもある。現代人の俺には、暮らすには当たり前で必要なことなんだが、そんな働き口すら、そもそもないとのことだった。


 まあ、コインランドリーと保育所はそうだと思うが、社宅と社食は用意出来そうなもんだと思うんだけどな。ルピラス商会や、王宮にすらないのには驚いた。宮廷料理人であるロンメルも、仕事の都合で馬車が出る時間よりも前に出勤するから、家賃が高いが仕方なく王都に住んでいると言ってたっけか。


 子どもたちが頑張って山を登るさまを、親御さんたちが微笑ましく眺めたり、応援したりしている。花や虫に気を取られて、道を外れそうになる子もいて、ワチャワチャしながらみんなで山を登った。カイアも以前よりスイスイ登れるようになっていたのに驚いた。

 ……成長しているんだなあと感動する。アエラキも魔法で飛んだり、ピョンピョンはねたりして、登山を楽しんでいるようだった。


 みんなが開けた原っぱに到着すると、既に先に馬車で別ルートから登って来ていた、移動販売組みと、小さい子ども連れの親御さんたちが、手を振って出迎えてくれた。

 移動販売組みも別に馬車を操っていたわけじゃなく、今日だけ御者として人を雇ってあって、一緒に馬車に乗って来たってだけだ。

 子どものいる人は一緒に山を登っていた。


 その殆どが子どもがいないから、休みの日にまで徒歩で山を登るのは嫌だったらしい。

 クエストで散々登っているからだそうな。

 だがピクニックには興味を示してくれて、みんなと過ごしたいとやって来てくれた。

「さあ、ここでしばらく遊んだら、みんなでお弁当にしましょう!あ、遊びに出る前に、ちょっと待っててくださいね。」


 さっそく走り出そうとする子どもたちを、親御さんに引き止めてもらってから、俺は魔法陣を描いた清められた紙を取り出した。

「アスピダ!」

 魔法陣が発動し、周囲に防御魔法が展開してゆく。これはハンバーグ工房の敷地にも設置されているので、みんなも見たことがあるから特に驚いてはいなかった。


 以前、安全な筈のこの山で、カイアが襲われたことがあるからな。今はもうまた安全になったと、冒険者ギルドから聞いてはいるんだが、何があるかは分からないからな。念には念を入れた。移動販売を担当している、現役冒険者が大勢いるとはいえ、この人数を守り切るのはちょっと無理だし、子どもたちに万が一のことがあったら大変だからな。


「はい、もういいですよ。子どもたちだけで遠くに行かないようにしてくださいね。」

 俺がそう言うと、さっそく子どもたちが走り出して、めいめいに原っぱや森で遊び始めた。コボルトのアンテナショップの従業員のコボルトたちも、子どもを連れて来ている人がいて、コボルトの子たちもすっかり仲良くなって、他の子どもたちと走り回っている。


 カイアは女の子たちに、花かんむりの作り方を教えてあげてるみたいだな。キラプシアの大きさの花かんむりを作ってやって、頭に元々かんむりみたいな葉っぱが生えているのに、花かんむりを乗せて貰ったキラプシアがドヤッている。アエラキは他の子どもたちと一緒に、森の探検へと向かったようだった。


 普段は挨拶する程度の、別部署の従業員たちが、仲良く話をしたり、子どもたちの面倒を見てくれているようだ。日頃シングルファザー、シングルマザーで、子どもの世話に追われている人たちも、気楽に楽しんでくれているようで何よりだ。……というか、なんというか、職場に恋の花が咲いてないか?


 特にシングルマザーの女性に人気なのが、同じくシングルファザーの、ニールさん、テッドさん、ジェイミーさんだ。

 なにせ、子どもを大切にしてくれるのは、見てわかるからな。いいお父さんが確定していること、俺の商会勤めで稼ぎも安定していて、新しい人と家庭を持とうと考えたら、お互いに声をかけやすい相手なんだろうな。


 特にニールさんは、1番稼ぎのよい部署勤めなことと、本人が背が高くてシュッとしているので大人気だ。

 独身の保育士さんたちに人気なのが、なんとザキさん、マジオさん、聖魔法使いのアントンさんなんだが、アントンさんは……、ありゃあ、駄目だな。取り付くしまもない。


 ええ、とか、まあ、とか言うばっかりで、興味を持って話しかけてくる女性たちに、素気ない態度だ。マジオさんはモテてデレデレしているな。ザキさんはリンディさんと話したそうに、チラチラとリンディさんを気にしているんだが、1番若くて美人の保育士さんである──確かエルシィさんだったか──がグイグイ行くなあ。ザキさんが25歳でリンディさんが16歳、エルシィさんが19歳だから、エルシィさんのほうが自然ではある。


 そんなリンディさんを独り占め出来て、エイダさんはご満悦だ。最初こそあれだったんだが、すっかり態度を改めたエイダさんは、それなりにリンディさんと話せるようになったみたいだな。……というか、本当に本気なのかな?ランディさんはティファさんと楽しそうにしている。あそこはもう時間の問題かも知れないな。ラズロさんはそれを遠くで睨んでいるが、アズール村の村人たちに、まあまあ、と肩を叩かれていさめられていた。


 ひとしきり遊んだら、お弁当を食べて山を降り、馬車で王都郊外の倉庫へと向かった。

 ここでお楽しみのお化け屋敷だ。赤ちゃんがいる親御さんは、ここで1日だけ雇った乳母と合流し、2人ずつ面倒を見て貰うことにして、交代で中に入って貰うことにした。

 さすがに休みってことになってる保育士さんたちにだけ、休日出勤で子どもの面倒を見させられないからな。


 たまには育児から解放される時間をあげたかったから、赤ちゃんのいる人たちだけを途中で帰す発想はなかったんだ。

「腕によりをかけて精霊魔法をこめたから、とっても怖いわよ?」

 と、お化け屋敷のお化け作成担当のアシュリーさんが楽しそうに言う。


 精霊魔法にはイメージを投影する魔法があるので、それを使ってお化けというか、アンデッド、ゴースト、レイスなんかの魔物を投影させて、みんなを驚かせるんだ。

 俺もテストプレイとして1番はじめに入ったんだが、立体投影お化け屋敷とでも言うのかな。リアルな魔物が出てきて、現代人でも結構楽しめる作りだったな。


 一応対象年齢を3歳からってことにしたんだが、この世界の人たちは、大人でもそもそもお化け屋敷を知らないからな。1度大人だけで入って、安全だと判断したら連れて来てくださいね、とお願いすることにして、お子さんを連れて来たい親御さんたちは、必ず2回目を利用するために、なにがしかのサービスを利用するという好循環が生まれた。


 一応騒音を考慮して、王都からは外れた平民街の、ルピラス商会の倉庫を借りて作ったんだが、中に入った人たちの、うひゃあ!とか、ひいい!とかの声が聞こえてくる。近所の人たちが集まって、恐る恐る様子を見に来ると、みんな楽しそうに、怖かったねー、なんて話しながら倉庫から出て来るわけだ。


 そいつに興味を引かれた、たくさんの近隣住民たちが、お化け屋敷の入り口で入り方を聞いて、店に来てくれるというのもあったらしい。お化け屋敷さまさまだな。今日は一般公開の最終日の次の日で、俺たちの貸し切りということになっている。お化け屋敷の為に雇った人たちは、今日が最終日の契約だ。


 なので今回も、先に親御さんたちに入って貰うことにする。子どもたちは、大人だけが2回見られると知ってぶうぶう言っていたんだが、一応精神的抵抗は払拭しておきたいからな。大人が怖がり過ぎてても、子どもたちが不安になってしまうだろうし、それで泣いてしまう子もいるかも知れないからだ。


 先に入った大人たちの、キャーッ!という声や、うわあ!という声を聞いて、既にちょっと怖がっている子どもたちもいたんだが、親御さんたちに、笑顔で一緒に行こう、と手を差し伸べられて、こわごわながら、子どもたちもお化け屋敷に入って行った。


 続いて子どもたちの、わっ!とか、ウェーン、お母さーん、という声が聞こえたが、お化け屋敷から出て来た後は、泣いているお子さんを抱きかかえながら微笑ましげに見つめている親御さん、怖かったねー、けどすっごい楽しかった!と話している子どもたちを見ることが出来た。みんな今日の集まりはとっても楽しかったようだな。


 小さい子どもは、作り物と現実の区別がつかないことがあるから、普段テレビで見てるアニメのキャラクターが、きぐるみショーで出て来た時に、思っていた大きさよりも大きかっただけで、怖がって泣いてしまうことがあるんだが、泣いているあの子は、大人になってもお化け屋敷が怖くて泣くタイプの人間と、どっちに成長するんだろうな。


 どうしてもお化け屋敷が苦手な人はいるからなあ。かくいう俺も小さい頃は、東京の名を冠した千葉のアミューズメントパークのお化け屋敷ですら、ちょっと怖くてドキドキしたものだ。あんなの大人になると、怖くもなんともないって分かるんだけどな。大人が本気で怖がらせようと思って作ったお化け屋敷とは、恐怖度が雲泥の差だからな。


 みんなで今日の感想を話し合いながら、それぞれの自宅に戻り、またやって下さいねーと言われながら、俺も自宅に戻って休んだのだった。次の日、俺は再びお化け屋敷の前にいた。お化け屋敷の従業員さん、親睦会の馬車の御者を担当してくれた人たち、乳母を頼んだ人たちが、不思議そうに集まっていた。


「あの……、お礼をしたいとお呼ばれしたので来たのですが、いったいなんでしょうか?

 昨日の皆さんたちも……?」

 俺の後ろで笑っている、移動販売担当の冒険者たちを見て、みんな不思議そうにしていた。今日は移動販売に行くのは午後からの予定にして、みんなにお化け屋敷のお化け出しを手伝って貰うことにしたのだ。


「皆さんも、短期間ではありましたが、うちの従業員だったわけですし、ぜひともお化け屋敷を楽しんでいただこうと思いまして。」

 お化け屋敷の仕組みは簡単だ。精霊魔法を込めた魔法石を、お客さんが来るたびに地面に向かって投げつけるだけだ。

 それでしばらくの間お化けが出るというやり方で、もちろん誰にでも出来る。


 土を敷いて順路を作り、ほんの少しだけライトの魔道具で足元に明かりをもたせて、木や井戸やらを作って、従業員が隠れられるようにするのと同時に、道を歩いている感じを演出してあるから、中に入るとひと目で倉庫とはわからない、結構本格的な作りとなっている。こんな注文は初めてで楽しいと、作ってくれた大工さんたち張り切ってたっけな。


 それを聞いて、みんな顔を見合わせながら楽しそうな表情を浮かべだした。お化けをずっと出していてくれた彼も、お客さんとして来てみたかったんだろうな。実際休みをとってわざわざ来た人もいたらしい。

「ほ、ほんとうに、いいんですか?」

「はい、楽しんでくださいね。」


 そうして、移動販売担当の冒険者たちが各自配置につくと、みんながお化け屋敷の中に入った後で、ひとしきり、うひゃあ!とか、ギャーッ!という声が聞こえてきて、楽しそうにお化け屋敷からみんなが出て来た。

「ありがとうございます。お客さんとして見ると、また違いますね。とても楽しかったです。では、僕たちはこれで……。」


「まだ、終わりではないですよ?」

 帰ろうとするみんなを引き止めて、俺はお化け屋敷の従業員、馬車の御者担当、乳母をしてくれた人たちを、コボルトのアンテナショップへと誘導した。そしてみんなを4階のVIPルームへと案内し、テーブルについて貰って、料理の数々を並べた。


「凄い……。」

「美味しそう……!」

 みんな目の前に並べられた料理の数々に、ゴクリとつばを飲み込んでいる。

「これは俺からの奢りです。我が商会で働いていただいてありがとうございました。短いお付き合いでしたが、また皆さんとお会い出来る日が来ることを楽しみにしています。」


 俺がそう言うと、

「はい……!ぜひまた来たいです!」

「皆さんの仲間になれて楽しかったです!」

 と言ってくれた。

 それを見てアシュリーさんたちコボルトも微笑んでいる。代わる代わる給仕をしてくれるコボルトたちと楽しげに会話をしながら、彼らの1日は終わったのだった。

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