第122話 番外編・精霊と妖精の朝ごはん作り 大根のなめ茸あえ、エノキとシメジと舞茸の電子レンジ蒸し、ツナマヨ麺つゆうどん
みなさんおはようございます!
今日も清々しい朝ですね♪
え?私が誰かって?
私はこの家に宿る妖精です。
ちなみに名前はまだありません。
というよりも、まだ、姿かたちを取ることが出来ないのです。
妖精や精霊は、新たに生まれる場合があるのです。私もその1人。
私はこの木の家を依り代に生まれました。
2階建ててこじんまりとしていますが、日当たりのいいところに建てられて、とっても過ごしやすくて素敵なお家なのです。
日の当たる側には川が流れていて、時折家主が釣りをしていたり、家の脇に新たにはえた木の下で、バーベキューをしたり、子どもたちが裏庭で遊べたりもしちゃうんです!
あ、そうそう、川の前は農地にしていて、そこでたくさんのお野菜も育てているんですよ!今度鶏を飼うつもりらしいです。そんな環境が私を生み出したのでしょうね。
妖精や精霊というものは、万物から新たに生まれる可能性があるものなのです。
エッヘン!
──あ。そうこうしている間に、この家の子どもたちが起きて来ました。
今日も可愛らしいですね!
子どもたちはとても早起きです。
まだお父さんが朝ごはんを作る前から起きて来て、毎日1階で遊んでいます。
大抵は積み木で遊んでいます。子どもたちは積み木で遊ぶのが大好きです。でも、たまに絵本を読むこともあるんですよ?
あ、今日はご本を読んでとねだられたみたいですね。絵本はお父さんのお部屋にあるので、起こさないようにそーっと、取りに行くことにしたみたいです。
この家のお父さんは、とっても若くてハンサムな人間です。もう少し若かったら、メスのユニコーンにさらわれてましたよね!
ユニコーンは、オスはキレイな女の子、メスはキレイな男の子をさらっていく、とってもこわーい魔物なんです!
見た目がキレイで人間の言葉を話すから、人間が騙されちゃうみたいです。でもユニコーンに子育ては出来ませんから、ろくに食べ物も与えられずに衰弱死してしまうんです。
え?妖精みたいなもんじゃないのかって?
とんでもない!
妖精はいたずらはしますけど、子どもをさらったりなんてしませんよ!
お父さんはとってもモテる人間みたいですけど、あんまり自分と年齢の近い女性に興味がないみたいです。
よく、子どもは無理だとか言ってます。
自分もまだ子どもと言って差し支えのない年齢だと思いますけどね?
変わってますね!
この家の子どもの1人、カイアちゃん。
なんとカイアちゃんは少しだけ字が読めるのです!
と言っても、絵本の文字だけですけどね。
何度もお父さんに読んで貰ううちに、内容を覚えてしまって、そこに書いてあることを思い出して、読めてしまうのです。
子どもたちはみんな人間の言葉が喋れないので、このことはお父さんは知らない事実なのです。
あ、人間じゃないのかって?
そうなんです。カイアちゃんはなんと、精霊なのです!
精霊は妖精と似たようなものですが、妖精よりも上位の存在で、対象と決めたものを守護したり、力を与えることの出来るもの。
カイアちゃんはそんな精霊の中でも、なんと植物の精霊の中の精霊王である、ドライアド様なのです!
それも親株として、新たなドライアドを生みだすことの出来る存在なのです。
とっても特別なんですよ?
私は木の家の妖精ですから、カイアちゃんの眷属にあたりますね!
そんなカイアちゃんのお家の妖精になれたことは、とっても自慢なのです!
カイアちゃんがこの家にやって来てくれたことで、私は力を持ったようなものですね!
だって植物の中の精霊王のお家なんですから!家が妖精くらい産んじゃいますよね!
この家にはもう1人子どもがいます。
カーバンクルの子どもであるアエラキちゃん。アエラキちゃんは雪の精霊なのです。
ドライアドは土と水属性の魔法、カーバンクルは風と闇属性の魔法を使います。だけど力が強いと聖魔法も使えるんですけど、カイアちゃんはその聖魔法も使えるんですよ!
とっても凄いですよね!
精霊は守護する対象の、愛と信仰によって力を持つものとされています。
カイアちゃんはとってもお父さんに愛されていますから、こんなに力があるのも当然なんですよね!
そしてこの家にはもう1人。
忘れちゃいけないキラプシアちゃん。
私と同じ樹木の妖精です。
私は木の家の妖精ですけど、キラプシアちゃんは家になる前の木の妖精です。だから木のあるところが大好きで、特にこの家の脇にはやして貰った木が大好きです。
キラプシアちゃんは本来木の上で暮らしている種族ですけど、カイアちゃんたちのそばが大好きみたいですね!
私もカイアちゃんのそばが大好きです!
私たちは樹木の妖精ですからね。
植物の中の精霊王であるカイアちゃんのそばは、とっても安らげるんですよ!
キラプシアちゃんはカイアちゃんのペットとしてここで暮らしているみたいです。
いいなあ。私も早くみんなに見えたら。
でも、同じ眷属であるカイアちゃんとキラプシアちゃんには、なんとなく私の存在が気付かれてるみたい?
時折私の方をじっと見上げてることがあるんですよね!早くもっと力をつけて、みんなの前に姿を現したいですね!
あら?どうしたのかしら?
アエラキちゃんがお腹をおさえてますね?
どうやらお腹がすいちゃったみたいです。
でも、今日はかなり疲れているのか、お父さんがまだ起きて来ません。お父さんはいつも美味しいご飯を作ってくれます。
最近この家にはお客様がいらしてて、その人たちがご飯を作ってくれることもあるのだけれど、その人たちも今日はグッスリと寝てるみたいです。
昨日はだいぶ夜更かししてたみたいですからね!仕方がありませんね。
お客様はなんと聖女さまなんですって!
今はカイアちゃんの兄弟株である、ドライアドに守護された、コボルトという種族の人たちと、日々過ごしてるみたいです。
どうやらカイアちゃんが、朝ごはんを作ってみよう!とみんなに提案してるみたいですね!子どもたちだけでだいじょうぶかしら?
みんなもそれを聞いて、すっかり張り切ってるみたいです。お父さんをびっくりさせてあげるつもりのようですね!
何を作ろうかな?何なら作れるかな?と話していますね。
包丁を使わないとなると、作れるものが限られてしまいますからね。
包丁は危ないから、子どもたちだけで使っちゃ駄目だ、火も危ないから駄目だ、とお父さんに言われているのを、カイアちゃんたちはしっかり守ってますからね!
おや?どうやらアエラキちゃんが、包丁の代わりに風魔法を使うことを提案しているようですよ?
確かに風魔法なら、スパスパ物が切れますしね!でも、残念ながらアエラキちゃんは、野菜の皮は上手にむけないみたいですね?
大根の皮をむこうとして、失敗しちゃったみたいです。大根がズタズタになってしまって、みんなしょんぼりしています。
そこにキラプシアちゃんが、ピーラーを持って戻ってきました!キラプシアちゃんはとっても力持ちなのです。
カイアちゃんがピーラーで上手に大根の皮をむいていきます。お手伝いがとっても上手になったカイアちゃん。
お父さんのお料理のお手伝いをするのがとっても大好きなんですよ!
カイアちゃんが皮をむいた大根を、アエラキちゃんがスパスパと薄く細切りにします。
みごとにボウルの中に細切りの大根が入りましたね!そこにキラプシアちゃんが塩を振って、カイアちゃんがよくモミモミします。10分ほど放置したら、しっかり水切り。
カイアちゃんが冷蔵庫から取ってきた、なめ茸の瓶の中身を大根500グラムに対して大さじ4と、お醤油を少し加えて、スプーンで混ぜ混ぜしていますね!
大人の人はお好みで七味唐辛子を加えてもオススメだと、お父さんが作ってくれた料理ですね!器にキレイに盛り付けていますね!
今度はエノキとシメジと舞茸の、石づきをアエラキちゃんが風魔法で切り落とします。
それぞれ2袋使うみたいですね!
キノコは洗わずキッチンペーパータオルで拭き拭きします。
みんなとっても上手に出来てますね!
キノコはなんでもいいみたいですけど、加熱すると縮んでしまいますからね!
たっぷり使いましょう!
みんなで耐熱皿の上に小房に分けて並べたら、料理酒を大さじ2、カイアちゃんがそそいで、キラプシアちゃんが振りかけます。
ふんわりとラップをかけたら、電子レンジで2分間チーン!チューブの生姜とお醤油を大さじ1と半分加えて、スプーンで混ぜ混ぜしたら、冷ましながら予熱でも加熱します。
少し冷めたら手でもモミモミ!味を染み込ませてあげます。お父さんがやっていたのをちゃあーんと見てたんですね!
今度は電子レンジで冷凍うどんを温めるみたいですよ?1人前1玉を電子レンジで3分加熱します。
その間にツナ缶の蓋を……。おおっと、カイアちゃんにもアエラキちゃんにも、ツナ缶の蓋がかたくて開けられません!
これは大ピンチです!
予想外のことにカイアちゃんは既に泣きそうにウルウルしています。
アエラキちゃんが心配そうに見てますね。
そこにドヤ顔で戻って来たキラプシアちゃん。手には……、フォークを持ってるぞ?
ツナ缶のプルトップにフォークを差し込んで……。フォークの柄の上でジャーンプ!!
ツナ缶があきましたー!!パチパチパチ。
みんな大喜びです。ツナ缶のオイルを流しで切って……。麺つゆとマヨネーズを2対1でツナ缶と混ぜ混ぜします。
うどんと混ぜ合わせて、お皿に盛り付けたら、アエラキちゃんが風魔法で、小ネギと海苔を刻んで、上から振りかけて、最後に鰹節を乗せたら、かーんせーい!!
お好みでキムチをかけても美味しいって、お父さんが言ってました!
子どもたちも大好きな料理です!
お湯で混ぜるだけのインスタントなお味噌汁も添えました!とっても豪華で美味しそうじゃないですか?
今日の朝ごはんは、大根のなめ茸あえ、エノキとシメジと舞茸の電子レンジ蒸し、ツナマヨ麺つゆうどん、それとインスタントのお味噌汁です。
朝ご飯の支度が出来たので、さっそくみんなでお父さんたちを起こしに行こうと話しているみたいですね!早く見て貰いたいなあ。
カイアちゃんがお父さんを、アエラキちゃんとキラプシアちゃんが、お客さんたちを起こしに行きました。
お父さん、ちょっと服がはだけてセクシーなことになってます。キャッ。
気だるげな表情で起き上がり、あ、ああ、ご飯か、ちょっと待っててくれな。
なんて言って、パジャマから洋服に着替えだしました。見ちゃいけないけど毎回見ちゃいますね!お父さんは本当にカッコいい人間です。あ、お着替え終わりましたね。
過去には人間と結ばれた妖精や精霊もいるんですよね。私、いつかカイアちゃんのお母さんになれるかなあ……。うふふっ。
あ、お客さんたちも起きてきたみたいですね。テーブルの上にご飯が並んでいるのを見て、お父さんはお客さんたちに、作ってくれたのか?なんて聞いてますね。
聖女さまが、知らないわ、と首を振っています。コボルトの2人も同様です。
まさか……お前たちが作ったのか……!?
お父さんびっくりしてますね!
せーいかーい!大正解です!
とっても上手に出来てるでしょう?
火は……、電子レンジか。包丁は……、使わないように言ってあるから、使うわけがないし、いったいどうやって……。
なんてブツブツ言ってます。お父さんは、カイアちゃんたちが約束を守る子だって信じてくれてるんですね!
そこでアエラキちゃんが、風魔法でお野菜を切って見せました。そんなことが出来るのね!と聖女さまも驚いてますね!
まだ2人とも小さいのに、こんなことが出来るなんて……。俺が思っているよりも、成長してるんだな。ありがとうな。
お父さんは嬉しそうにカイアちゃんとアエラキちゃんの頭を撫でています。キラプシアちゃんもしっかり撫でてあげます。
でも、何があるか分からないからな、出来るだけ俺の目の届かないところでは、まだ料理はしないでくれ。電子レンジも中に入れたものが破裂することだってあるからな。
お父さんはとっても心配性です。
でも、みんなの為に頑張ってくれたカイアちゃんたちに、頭ごなしに叱ることはしません。カイアちゃんたちもうなずきました。
みんなで楽しく朝ごはんをいただきます。
みんなが口々に美味しいと褒めてくれて、とっても嬉しそうなカイアちゃん。
──ん?カイア、キラプシア、何を見てるんだ?なにかそこにいるのか?
3人とも、何か感じるか?
私のいるところを見上げているカイアちゃんとキラプシアちゃんを、お父さんが不思議そうに見て、聖女さまとコボルトの2人に尋ねています。3人が首を振っています。
この段階の妖精の存在に気が付けるのは、同じ眷属だけですからねえ。雪の精霊であるアエラキちゃんは、私に気付けませんしね!
早く私もみんなと一緒に食卓に並んで、おんなじご飯が食べたいですね〜。
その時は、カイアちゃんを挟んで、お父さんの隣がいいですね。うふふっ。
 




