金貨100枚
「お前さんたち、お金が必要みたいだね!」
女は元春達のことを、ずっと見ていたように事情を把握していた。
「われらが金銭を必要だとして、なんだというのだ?」
部下の一人が女に尋ねた。
「その腰の物をお売りください。そうすれば金貨100枚はだせるでしょう」
腰の物とは刀の事である。武士のとって刀は命に等しく到底売ること等あり話である。
しかし、いまや本当に金がなくて命にかかわる事態である。部下はしばらく考えたのち返答した。
「わかった金貨100枚じゃ」
そういって自らの刀を差しだした。
「ありがとうございます」
女が刀を受け取ろうとしたとき、元春が口をはさんだ。
「刀ならば、わしの物をつかえ!」
そういって自らの帯刀を差し出した。
これを見た部下たちは主君に刀を差しださせるなどあっては、ならんと我先に自らの帯刀を女に差し出した。
「これは困りましたね」
女はそういいつつ、笑いながらある提案をしてきた。
「では、皆さんの短い方の刀を撃っていただけますか。 全部で金貨100枚だしましょう」
確かに、それなら長刀は残ることになるため戦えることにはなる。しかし短刀1本金貨15枚にもならない。ずいぶん足元をみられている。
元春たちは女の提案に熟考した。しかしここで拒絶したところで先がない! 元春たちは苦渋の決断で短刀を7本女に差し出し金貨100枚を受け取った。
「ありがとうございます。ついでといっては何ですが、皆さんにお値打ちな宿をご紹介いたします」
元春たちは毒を食らえば皿までと女についていった。
「こちらにございます!」
女は蔓で覆われた、2階建ての建物を指さした。
おそらく築数百年は経っているであろう建物の外観を見て兵士たちは首を横に振った。今や少なからず金貨を持っているのである、わざわざ主君をこんなぼろ屋に泊めることはないと判断したのであった。
「女、ここはいくらになるのだ?」
元春が部下たちが立ち去ろうとしている中、女に尋ねた。
「負けに負けさせていただいて、一泊食事付きで金貨1枚で結構です」
価格はこれ以上なく魅力的であった。
「よし、ではわれら7人こちらで頼む」
元春は即答した。元春としてもこのボロ屋については躊躇するものがあったが、先が見えぬ現状で少しでも支出を抑えたかった。
兵士たちは元春の鶴の一声でそれ以上何も言わず、従った。
宿屋に入ると、やはり思った通りの古く汚い宿であった。しかし、それについて触れるものは誰一人いなかった。部屋は7人の雑魚寝であった。しかしそれでも相当疲れていたのだろう元春たちは部屋に入るなり、熟睡したのであった。
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