二条城
「おおっ、皆逃げていく なんて薄情な部下たちなんだ」
信長は光秀の頭を眺め、同情した。
信長の激烈な攻撃を見て呆けていた蘭丸であったが、光秀の頭が転がっているのを確認し信長の前に出てひざまずいた。
「上様、お見事でございます。 光秀亡き今、明智軍はもうだめでしょう! ひとまず、信忠様のみえる二条城にむかいましょう」
「二条城? よくわからんが城か! そなたに任せる、案内せい」
信長は明智光秀の乗っていた馬の乗り、森蘭丸の案内で二条城に向かった。
「父上、ご無事でしたか」
二条城に向かう道中で立派な鎧を身にまとった若武者が信長の前に駆け寄ってきた。
「われは、そなたのような子を持った覚えはないが・・・・」
信長は目の前の信忠をじろじろ見て応えた。
「な、なんということをおっしゃる。さては火事で煙を捨って、おかしくなられたのか」
「とにかく、拙者が来たからにはご安心ください。父上には指一本触れさせません」
信忠はそういうと、信長を囲むように先導して二条城に向かった。
「上様、間もなく二条城でございます」
信長の馬を引く蘭丸が信長に声をかけた。
「城? そなたの言う城とはこれのことか?」
信長はとても二条城のことを城とは思えなかった。魔王時代の城といえば、巨大な洋風の城であった。平たい二条城は信長にとっては、ただの建物にしかみえなかった。
「んーっ、まあここで我慢しておくか!」
信長は渋々馬を降りて、中に入っていった。
「お疲れでしょう、しばらく寝所でお休みになられますか」
蘭丸は信長の顔をうかがった。
「そうじゃな、少し寝るか!」
信長は蘭丸の案内で寝所に向かった。
「きゅっきゅっ」
信長が歩くと床が音をだした。
「なんだ、この床は、こんなつくりのものを城というとは恥ずかしい。すぐに音がしないようにしろ!」
信長は少し怒り気味に命じた。
「そ、それは・・・・」
蘭丸とともに信長を寝所に送り届けるために付き従っていた信忠は説明しようとした。
「は、すぐに」
信長の様子を見た蘭丸は信忠を制止した。
「こちらでございます」
蘭丸は寝所のふすまを開けた。
そこには立派な布団が引かれていた。
「な、なんじゃ、これは!」
信長はその光景を見て激怒した。
「われに、こんな床に直接寝ろというのか!」
「エッ?」
一瞬、蘭丸は信長の言うことが理解できなかったが・・・・
「本日は何分急なため、魔王様には誠に申し訳ありませんが、本日のみは平にご容赦を・・・・」
蘭丸は膝をついて誠心誠意、信長に話をした。
「うむ、今日だけだ!」
信長はそういって、おとなしく床に就いた。
「蘭丸よ、父上はどうされたのだ?」
信忠は明らかに以前とは違う信長について、蘭丸に質問した。
「上様は、本物の魔王になられた由・・・・」
蘭丸は真面目に答えた。
「魔王だと・・・・?」
信忠はそれ以上言葉を発しなかった。




