第5話〜家族の権限〜
両親を失った頃の大輝には、拓哉や美咲の死因は“交通事故”としか翔一郎から知らせられてなかった。
だが・・・その事件は、ただの“交通事故”という文字では表せれない。
そのことを知ったのは・・・妃鶴が、神楽家のベビーシッターとしての期間が終わりを告げ、中学1年生の時の元旦。
「・・・ヤバ。」
深夜0時。大輝は自分の寝言で目を覚ませた。
「・・・ケータイ、リビングに置いたままじゃん。」
大輝はこの日、お年賀メールをサッカー部部員全員(顧問やマネジャー含む)に渡す仕来りを成すため、ケータイを目の前に置いて、リビングで紅白歌合戦を鑑賞してたが・・・やがて厭き、「0時に起きりゃいーや。」とB型特有のマイペースな提案をし、寝床についていた。
だが。肝心のケータイを、リビングに置いたまま・・・ということを、よりによって0時当時に気づいた。
ケータイを取りに行くため、1階までの階段を踏みしめる。
踏みしめる度・・・異様な声が、だんだん聞こえ始めた。
「・・・・っ!」
「だ・・・・・・ろっ!」
その声は・・・辛うじて、正月のために帰ってきた芸能人2人。美輝の両親・・・翔一郎と、麗沙のもの。
それは、リビングに近づくにつれ、鮮明さを増していた。
「だから、違うって言ってるでしょっ!?」
「ふざけんなっ!これ以上否定する気かお前は!」
リビングのドアの隙間に、大輝は視力Aの目を当てた。
そこには・・・言い争っている2人の姿。週刊雑誌だったらスクープもの・・・といっても、こんな深夜に報道陣がうろつく訳がないが。
「お前みたいな妻を持って俺は不幸だよ!」
「酷い・・・酷いわ翔一郎!」
「酷いのはどっちだよ!・・・こんのタラシ!」
・・・大輝は、目を見開いた。
翔一郎の手には・・・銀色に光る物体があるではないか!
それを“果物ナイフ”だと認識するのには、然程時間はかからない。
大輝はすぐさまドアを開け・・・麗沙を庇うように、立ちはだかった。
いきなりの大輝の姿に反応した翔一郎は、寸止めはしたものの・・・そのナイフは、無残にも大輝の頬の上をスイングした。
「・・・大輝君・・・?」
大輝は、頬から滲み出る血を拭いながら
「何があったんですか?―――“家族”として、聞く権限ぐらいあると思いますけど。」
いつもは、冷静でクールな翔一郎(と、大輝の中で印象づいている)が、果物ナイフを振り翳すなんて、考えがたい行為。
大輝は、落ち着いているも・・・冷たい目で、そう翔一郎に問い質した。
「・・・分かった。麗沙。お前は下がってろ。」
「・・・えぇ。ゴメンなさい。大輝君。怪我させて・・・」
大輝は麗沙の方を向き「いえ。」と答えると、すぐに翔一郎の方に向かい合った。
翔一郎は、窓の外の風景を眺めると・・・
「・・・あれは、こんな雨の日・・・と言っても、梅雨の頃のことだった。」
「まぁ、これは雨ではなくて雪だけどな。」と付け足すと、あの『オトナの四角関係』事件を、切々と語り始めた。
―――・・・
「・・・そうですか・・・」
“交通事故”という死因の裏に、そんな物語があったことを始めて聞いた大輝の声は・・・途方に暮れている響きがあった。
「・・・翔一郎さんは・・・」
大輝は、翔一郎の目をしっかり見て
「麗沙さんを、本当に好きなんですか?」
そう、問い質した。
翔一郎は、しばらく考えると・・・
「・・・一生を誓った仲だ。好きに決まっている。ただ・・・不安なだけなんだ。」
「不安?」
「麗沙は、何歳だと思うかね?」
今度は、大輝が考えた。
歳は、大輝には知らされていない。
「最高齢でも・・・23歳ですか?再婚かなんか・・・」
大輝は、思ったことを包み隠さず答えた。
13歳の息子を持つ23歳なんて、いないのだが・・・本当に、大輝の目には麗沙はそう映っていた。
「そう思うだろう。麗沙は・・・23歳で我が娘・・・美輝を産んだ。今は30歳だ。」
予想外の年齢に、大輝は目を丸くする。
「一目見ただけでは30歳とは思い難い容姿を持っている麗沙が・・・また、拓哉とのように・・・いや、大輝君のお父さんとのように、あんなことをしているとしたら・・・不安で仕方な・・・」
「・・・あの。」
大輝は、怒ったような低い声で、そう呟き、翔一郎の言葉を遮った。
「即ち、翔一郎さんは・・・麗沙さんを信じてないんですか?好きだったら・・・信じるなんて、常識じゃないんですか?」
「・・・え?」
「麗沙さんは、違うと否定しているんでしょう?だったら、それをなんで信じないんですか?」
口調は、敬語だが・・・目は冷たいものだった。
“13歳の少年”は、益々目の力を強めて
「・・・俺だったら、本当に好きな人は信じますけど。嫌いな人は、信じません。」
・・・ほんの数秒、2人の間に沈黙が駆け巡った。
すると、翔一郎が強張っていた頬を緩ませて
「・・・やっぱり君には、完敗だ。」
俯き加減になりながら、そう呟いた。
「・・・だよな。信じなかった俺が・・・バカだったよ。好きなのにな・・・逃げてばっかだった。信じてなかった。・・・俗に言う、矛盾だな。」
「・・・すみません。」
自分を自嘲する翔一郎の表情を見て、大輝はさっきの生意気に近い発言を悔やみ、咄嗟に謝った。
「いや、いいんだよ。全ては俺が悪かった。・・・すまんな大輝君。帰って早々、迷惑かけてしまって。」
「いえ・・・」
翔一郎は、「よっこらせ」と言いながら立ち上がり、果物ナイフをナイフケースに入れる。
ケースの蓋をパタンと閉じて・・・
「時に・・・大輝君は、美輝を信じれるか?」
「え?美輝を?」
大輝はほんの一瞬、言おうかどうか迷い、複雑な表情をしたが・・・
「・・・勿論。信じれます。美輝は・・・抜殻だった俺を、救ってくれたから。」
『ずっと一緒』
その言葉が・・・彼を、救ったのだ。
翔一郎は、凛々しい表情に『相違ないな。』と思いながらフッと笑った。
「美輝のこと、宜しく頼んだぞ。じゃ、俺はもう東京に戻るな。」
「・・・はい。」
部屋を、後にした。
1人残されたリビングに・・・幾つもの着信音が鳴り響いた。
ディスプレイを見ると・・・
「・・・着信12件かよ。」
その着信は皆、サッカー部部員からのものだった。
「・・・年賀メール、忘れてた・・・」
雪がしんしんと降り積もる元旦・・・少年は、綺麗に年賀メールのことを忘れていた。
大輝は、黙って頭をガシガシ掻いた。
『比例×反比例』裏コント〜ヒロLOVE度は?〜
作者「3話続けてのシビアゾーン、やっと抜け出せれるような予感・・・です。今日はお忙しいところ、マルチタレントの神楽麗沙さんにお越しいただきました。」
麗沙「こんにちは。よろしくお願いします。」
作者「では、早速質問ですが・・・幼少の頃の美輝と大輝、どれくらい仲がよかったんですか?」
麗沙「いや〜、本当に仲がいい2人です。本当にほぼ毎日水瀬家にお邪魔させて頂いて・・・」
作者「では、その当時の美輝のヒロLOVE度はおいくらかと」
麗沙「そりゃあもう100%中120%ですね。今もそうであってほしい・・・」
作者「・・・そうだったら、大変なことになりますよ・・・」
麗沙「そうですね(汗)」
2人は幼少の頃、本当に仲がいい〜っていう設定です。




