第2話〜梅雨時〜
あのカラオケ事件の時の天候が、1週間しぶとく続き・・・
「・・・いつまで降るつもりなのかなぁ・・・?」
美輝は、窓にベッタリくっついて大量に降り続ける雨をなんとか降り止むように努力していた。(どうやって努力するのか・・・)
そんな美輝のアホに近い行動を見ていた大輝は、大きく溜息をついて
「気づかねぇの?梅雨だっつーの梅雨。」
「梅雨?あ〜、アイツかぁ・・・」
大輝は、内心で「アイツってドイツだよ」とくだらないツッコみをしながら
「それよりさ、アイツ・・・拓海っつったけ?」
「え?拓海がどうした?」
「・・・何もないか?」
久しぶりに(いや、1週間ぶり)に出てきた拓海の名前に美輝は反応し、大輝の方を振り向いた。
だが、大輝はテレビに反映されている梅雨情報を凝視していた。
「・・・何って・・・別れたよ?」
美輝はまるで、「知らなかったの?」とでも言いそうな表情をしている。
そんな美輝の表情を、大輝は横目で見ながら・・・
「ふ〜ん。」
史上最高素っ気ない反応をし、またテレビに目を移した。
・・・心中、相当喜んでいる・・・ということは秘密。
「・・・って、お礼まだだったよねっ」
拓海・・・という名前で、カラオケの空室での出来事も序でに思い出した美輝は、窓から離れて声を裏返しながらそう言った。
「・・・お礼?」
大輝は、一瞬「お礼」という言葉に不知感を持ったが・・・やがて、あのムカつく場面を目の当たりにした時の空気を思い出し
「・・・ああ。アレね。」
少々イラついた声でそう言った。
また序でに、告白に近い発言をしてしまったことも・・・
『お前とアイツが一緒にいんのが―――ムカついただけ。』
『苛立ち』と『羞恥心』が、同時に大輝の中で交差する。
「ありがとねっ!ヒロ!」
気づけば、隣に美輝が座って、満面の笑みを浮かべている。
その声に、大輝は条件反射的に美輝の方を向いてしまった。
至近距離・・・にある美輝の存在に、大輝の動悸は途端に早まる。
「・・・それ、いつのあだ名?」
大輝はそう呟くと、赤面を隠すかのようにまた画面に向き直った。
「さぁ?久しぶりに引っ張り出したよーな気がする〜」
大輝の表情そっちのけで、美輝はそう言う。
・・・実を言うと、美輝の動悸もかなり上がっているのだが・・・
お互いの、そんな動悸の高まりを認識しない2人は・・・やはり、微妙な心境だった。
でも、その心境の実態は・・・やはり、「心の拠所」とはっきり言える。
『ヒロ』
そんなあだ名を、何年ぶりかに聞いた大輝は・・・あることを思い出していた。
それは・・・今のような現実ではなく、今では想像することができない・・・
―――どす黒く、壮絶な過去。
その過去は、こんな『シアワセ』な梅雨時ではなく・・・『カナシイ』梅雨時だった。
『比例×反比例』裏コント〜梅雨の対処法?〜
作者「・・・で、結局アンタは梅雨相手に何を努力してたんだ。」
美輝「ん〜・・・梅雨を一心不乱に見つめて、梅雨に羞恥心を覚えさせるように努力してたのっ!」
恵夢「アンタ、つくづくなアホねぇ〜っ!」
美輝「でもさっ!コレ意外と聞くんだよっ!台風なんか一瞬のうちに止んで・・・」
作者&恵夢「ウソつけっ!」
・・・この方法で梅雨を止ましてくれた人っ!100万ドル差し上げます(笑)




