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第77話 新しい仲間?



『ワタクシ……は……』


 白い獣は動揺していたが、ミレイが少しくすんだ毛並みを軽く撫でると、最初はビクリと反応したが気持ちよさそうに目を細めた。そしてゆっくりと頷いた。


『そうか……。我が同胞じゃったか。それはすまないことをした』


 ロスは嬉しそうに涙声で謝り、サンボウは『同胞……?』と口にするとその蒼い瞳を凝視した。



 しかし『ワタクシもツレテいきなさい』

 そのひと言で全員の動きが止まる。


『いや、何を言っているのじゃ。

 もしお前が本当に同胞だったとしても、いきなり連れて行くことはできない。こちらも命がけなのじゃ』

『ワタクシにも……スコシだが妖力がある。チカラになれる』

『妖力が……? だとしても無理じゃ。我らは結界の突破と姫の安全確保で手いっぱいじゃ。お前に何かあったとしても平気で見殺しにするぞ』

『かまいません』

『なっ……』


 押し問答をしていると、少し前に来ていたウンディーネが口を挟んだ。


『かなり陽が昇ってるけどどうするの? 暗くなると水中で動きずらくなるわよ』

『ウンディーネ……』

『たしかに……。そろそろ出ねばならぬ。悪いがお前はこのまま置いていく。悪く思うな』


『ぜったいにヤクに立つからツれて行きなさい』

 何故か必死な獣に、妖精達の方が圧倒されてしまう。


『……なんで命令口調なのじゃ』


 ロスが呆れ口調で言うと、サンボウは『……そこまで言うなら。姫、涙を流してもらえるか』とミレイに願い出た。


 サンボウにそう言われてミレイは悲しいことを想像する。

 ──瓶に入れて運ぶ案が頓挫したので、準備期間中にできる限り泣ける努力をしたのだ。


 ツウーー……。

 ミレーの頬に涙が流れる。

 それをサンボウが掬い上げ、まずクウに一口飲ませた。そしてロスが飲み最後に白い獣にそのスプーンを差し出した。


『サンボウ? どうしたのじゃ?』

『……飲むのじゃ』


 わけがわからないまま獣はその涙をペロリと舐めた。すると獣の体がわずかに光を帯びて発光し、体の傷も癒やされたことで獣自身も驚いていた。


『ふむ。妖力があるというのは本当らしいな』

『……やはりそのニンゲンは水ヒメ……だったのか』


 白い獣はミレイを見つめ、意を決したように何か呟くと、その体がみるみる縮んでいった。


『これはいったい……』

『これならツレテいってもらえるだろうか。ジャマはしない、水龍……さまをたすけたいのだ』


 サンボウはみんなの顔を順に見ると、しぶしぶ分かった、と口にした。


『ただし! 命の保証はしないのじゃ。

 自分の命は自分で守れ。我らが一番に優先するのは結界の突破と姫の安全じゃ』

『わかりました』


 みんなの意思が固まって湖に意識を向けた時、ミレイはギュッと目を瞑り最後の一滴を絞り出すと、指の腹で涙を掬ってサンボウに差し出した。


「サンボウの分だよ。みんなで龍王国に入ろう」

『そうじゃな』


 サンボウは僅かに口角を上げると、大事そうにその涙を飲み干した。


『少し時間を取られたがこれから入水しようと思う。

 我らはこのあと突破するための準備に入る。

 ウンディーネは湖に入ったら姫の水牢を作り、何があっても護ってくれ。そして結界の隙間ができたらそこに姫を投げ込むのじゃ。手段は任す。

 その次に我らじゃが、三人無理なら当初の予定通りロスだけでも頼む』その白いケモノは……とじっと見つめて思案する。


「それなら私のウェットスーツの中に入れば平気じゃない?」


 ミレイはそう言うとウェットスーツのチャックを下ろし、手の平サイズまで小さくなった白い獣を水着の中に押し込んだ。

 その光景をまじまじと見ていたロスは『羨ましいの〜』と零した。すかさずサンボウがペシッと頭を叩くと『破廉恥(はれんち)なのじゃ!』とロスを(たしな)めた。


『破廉恥とはなんだ、破廉恥とは! 

 女子の胸の谷間には夢が詰まってるのじゃぞ!?』


 真面目に語るロスにウンディーネはあっさりした口調で『初めて知ったわ〜』と冷静に返し、その一部始終を見ていたミレイは苦笑いするしかなかった。


 これから凄く大変なことをするんだけどね……。

 なんなら国を救う的な……?

 まあ楽しいからいいけどね。


 クスクスと他人事のように笑っていたミレイに思わぬ方向からパスがきた。


『はぁ〜まったくロスは……。

 それなら生きて龍王国に辿り着いたら、姫の谷間を堪能したらいいの』

「…………はぁーー!?」


 グリン! と背後のクウに向きなおる。


『名案だ!! クウよ。ここ最近で一番冴えてるぞ!』

「どこがよ!?」

『姫。ロスがやる気になって結界突破できれば安いものなの。みんなの命も助かるし……? 名案でしょ?』


 コテンと小首を傾げて微笑まれた。

 ぷるぷるのホッペも揺れて、つい……

「それを言ったらおしまいでしょう〜!」と口にした。

 いや、そう言うしかなかった。


 ミレイは頭に手を当てると、深く深く息を吐いた。


『本当か!? 姫、約束だぞ!』

「……」


 小躍りするエロ妖精をジトリと睨むと、もう一度諦めの溜め息をついた。


『よし決定なの! サンボウ、これでロスの妖力が上がること間違いなしなの!』

『……そういうものか?』

『そういうものなの! エロパワーは時に何者にも勝るの!』


『……それは忠誠心よりも?』


 傍観していたウンディーネが興味深そうに口を挟んだ。


『……時と場合によってはね』


クウの一言に全員が笑った。



 いざ! みんなで龍王国へ!!

 待っててねーー。水龍さま!!




いつもお読み頂き、ありがとうございます。


突然の新メンバー加入……?


次話でいよいよ中央湖に入ります!


龍王国も目前です!





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