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これは魔法の書です。  作者: わおん
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当時、小学4年生・・・



僕は、2枚のガラス片を、 融合させ、


1つのシーグラスを、完成させた。



そう成る事を、信じて挑戦した。



しかし、本当に成功した事で、


僕は、動揺していた。



そこで、僕は、冷静に考える事にした。



まず、


2枚のガラスが、1つのガラスに変化した。



『これは、うれしい・・・』



『しかし、なぜ、そんな事に成る・・・?』



『2枚のガラスが溶けた・・・?』


『そして1つに成った・・・?』



『それなら、包んでいた新聞紙は・・・?』


『なぜ、変化しない・・・?』



『針金と新聞紙は・・・』


『1つに成って無い・・・』



変化無く、そのままであった。



ラップとテープだって、変化が無い。



『なぜ、ガラスだけが・・・?』



『僕の希望が、魔法に反映されたのか・・・?』



『僕が希望すれば、針金と新聞紙も・・・』


『1つに成るのか・・・?』



『いや、そんな事、本心では望まない・・・』


『針金と新聞が1つに成れ・・・!』



などと考えても、それは、演技である。


僕は、シーグラス職人なのだ。



僕には、その誇りがあった。



だから、馬鹿げた実験などには、


本気には、成る事が出来ない。



しかし、



『だったら、金属とガラスは・・・?』


『これは、作ってみたい・・・』



でも、僕の常識が、


それは「無理」だと思っている。



そもそも、金属とガラスは、違う物質である。



『異なる物質では「無理」だろう・・・・』



僕は、内心、その様に考えてしまう。



しかし、


実の所、金属とガラスの融合など、


どうでも良かった。



僕は、演技をしていたのだ。



僕は、恐れていた。



僕は、2枚のガラス片が、1つに成った事で、


ある事に気付いたのだ。



『こんなの、何でもありだ・・・』



そして、その時、思い浮かんだのが、


金属とガラスの融合だった。



しかし、僕は、それを「無理」と考えた。



ところが、



その時、もう1つ、思い浮かんだ。



『鉛を純金に変える・・・』



そして、その時、僕は、


それを「駄目」だと考えたのだ。



『では、なぜ、鉛を純金に変える事は・・・』


『「駄目」だと思う・・・?』


『なぜ、そう思う・・・?』



『なぜ「無理」だと思わない・・・?』


『なぜ「駄目」だと考える・・・?』



『・・・まさか・・・』


『出来るのか・・・?』



『鉛を、純金を変える事が、出来るのか・・・?』



『出来る事を、知っているのか・・・?』


『僕の無意識は、それを知っていて・・・』



『作っては「駄目」だと・・・』



僕は、生唾を飲んだ。



鉛の入手は、簡単だった。



釣りのオモリは、鉛である。


祖父の家に、それはある。



鉛と純金の成分が、とても似ている事を、


僕は知っている。



『純金を作れるのか・・・?』



冷静に考える。



2枚のガラスが、1つに成る事と・・・


鉛が純金に変わる事は・・・


根本的に違う事である。



『出来る保証など無い・・・』



普通に考えれば、出来る訳が無い。



しかし、僕は、



『金属とガラスの融合は「無理」・・・』


『鉛を、純金に変えては「駄目」・・・』



『その様に思う・・・強く思う・・・』



『それは、僕の道徳心なのか・・・?』


『それとも、僕の無意識が・・・』


『純金に成る事を知っていて・・・』



『それを作るなと、言っているのか・・・?』



『確かめたい・・・』



しかし、心のブレーキがかかる。



幸運だったのは、僕が、まだ、


小学4年生だった事であった。



大人なら、間違い無く、挑戦していたハズだ。



都会に住んでいたのなら、


その完成品を、買い取り業者に持ち込んで、


鑑定してもらったハズだ。



それが純金に成っていて、それが売れると解ったら、



『大人の僕は、何をしただろうか・・・?』



当時の僕は、


バスが1日、2本しか来ない。


冬場は、全く来ない。


そんな地域で生活していた。



親に育てられていた。



純金など、不要だった。


お金も、必要では無かった。



僕は、僕の意思で、買物が出来ない。



家族が、心配する。


家族が、反対する。



結果、僕は、買い物が許されない。


必要なモノは、親が買ってくれる。



つまり、当時の、僕には、


お金の使い道が、無かったのだ。



また、純金を作る事で、


世界が崩壊する事を、知っていた。



僕の魔法が、


世界の価値観を、崩壊させる事も、


世界を衰退させる事も、理解していた。



当時、僕は、その事を、知恵熱が出る程、


深刻に理解していたのだ。



だから、純金の製作には、手を出さなかった。


出せなかった。



『もったいない・・・』



それは、充分に理解出来た。



その結果、僕は、シーグラス作りを止めた。



僕の中で、価値観が崩壊したのだ。


何か嫌に成ったのだ。



しかし、僕は、病的な変人である。



何もしない・・・


そんな事は、不可能であった。


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