057
当時、小学4年生・・・
僕は、2枚のガラス片を、 融合させ、
1つのシーグラスを、完成させた。
そう成る事を、信じて挑戦した。
しかし、本当に成功した事で、
僕は、動揺していた。
そこで、僕は、冷静に考える事にした。
まず、
2枚のガラスが、1つのガラスに変化した。
『これは、うれしい・・・』
『しかし、なぜ、そんな事に成る・・・?』
『2枚のガラスが溶けた・・・?』
『そして1つに成った・・・?』
『それなら、包んでいた新聞紙は・・・?』
『なぜ、変化しない・・・?』
『針金と新聞紙は・・・』
『1つに成って無い・・・』
変化無く、そのままであった。
ラップとテープだって、変化が無い。
『なぜ、ガラスだけが・・・?』
『僕の希望が、魔法に反映されたのか・・・?』
『僕が希望すれば、針金と新聞紙も・・・』
『1つに成るのか・・・?』
『いや、そんな事、本心では望まない・・・』
『針金と新聞が1つに成れ・・・!』
などと考えても、それは、演技である。
僕は、シーグラス職人なのだ。
僕には、その誇りがあった。
だから、馬鹿げた実験などには、
本気には、成る事が出来ない。
しかし、
『だったら、金属とガラスは・・・?』
『これは、作ってみたい・・・』
でも、僕の常識が、
それは「無理」だと思っている。
そもそも、金属とガラスは、違う物質である。
『異なる物質では「無理」だろう・・・・』
僕は、内心、その様に考えてしまう。
しかし、
実の所、金属とガラスの融合など、
どうでも良かった。
僕は、演技をしていたのだ。
僕は、恐れていた。
僕は、2枚のガラス片が、1つに成った事で、
ある事に気付いたのだ。
『こんなの、何でもありだ・・・』
そして、その時、思い浮かんだのが、
金属とガラスの融合だった。
しかし、僕は、それを「無理」と考えた。
ところが、
その時、もう1つ、思い浮かんだ。
『鉛を純金に変える・・・』
そして、その時、僕は、
それを「駄目」だと考えたのだ。
『では、なぜ、鉛を純金に変える事は・・・』
『「駄目」だと思う・・・?』
『なぜ、そう思う・・・?』
『なぜ「無理」だと思わない・・・?』
『なぜ「駄目」だと考える・・・?』
『・・・まさか・・・』
『出来るのか・・・?』
『鉛を、純金を変える事が、出来るのか・・・?』
『出来る事を、知っているのか・・・?』
『僕の無意識は、それを知っていて・・・』
『作っては「駄目」だと・・・』
僕は、生唾を飲んだ。
鉛の入手は、簡単だった。
釣りのオモリは、鉛である。
祖父の家に、それはある。
鉛と純金の成分が、とても似ている事を、
僕は知っている。
『純金を作れるのか・・・?』
冷静に考える。
2枚のガラスが、1つに成る事と・・・
鉛が純金に変わる事は・・・
根本的に違う事である。
『出来る保証など無い・・・』
普通に考えれば、出来る訳が無い。
しかし、僕は、
『金属とガラスの融合は「無理」・・・』
『鉛を、純金に変えては「駄目」・・・』
『その様に思う・・・強く思う・・・』
『それは、僕の道徳心なのか・・・?』
『それとも、僕の無意識が・・・』
『純金に成る事を知っていて・・・』
『それを作るなと、言っているのか・・・?』
『確かめたい・・・』
しかし、心のブレーキがかかる。
幸運だったのは、僕が、まだ、
小学4年生だった事であった。
大人なら、間違い無く、挑戦していたハズだ。
都会に住んでいたのなら、
その完成品を、買い取り業者に持ち込んで、
鑑定してもらったハズだ。
それが純金に成っていて、それが売れると解ったら、
『大人の僕は、何をしただろうか・・・?』
当時の僕は、
バスが1日、2本しか来ない。
冬場は、全く来ない。
そんな地域で生活していた。
親に育てられていた。
純金など、不要だった。
お金も、必要では無かった。
僕は、僕の意思で、買物が出来ない。
家族が、心配する。
家族が、反対する。
結果、僕は、買い物が許されない。
必要なモノは、親が買ってくれる。
つまり、当時の、僕には、
お金の使い道が、無かったのだ。
また、純金を作る事で、
世界が崩壊する事を、知っていた。
僕の魔法が、
世界の価値観を、崩壊させる事も、
世界を衰退させる事も、理解していた。
当時、僕は、その事を、知恵熱が出る程、
深刻に理解していたのだ。
だから、純金の製作には、手を出さなかった。
出せなかった。
『もったいない・・・』
それは、充分に理解出来た。
その結果、僕は、シーグラス作りを止めた。
僕の中で、価値観が崩壊したのだ。
何か嫌に成ったのだ。
しかし、僕は、病的な変人である。
何もしない・・・
そんな事は、不可能であった。




