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当時、小学4年生・・・
僕は、以前、ステンドグラスを、
埋めた場所に、向かっていた。
しかし、僕は、その場所を素通りして、
さらに、2分程、進んだ。
そして、僕は、自分の背丈よりも高い、
草むらの中に到着すると、
チラシで、紙飛行機を折り、
そして投げた・・・
結果、紙飛行機は、草に当たる。
しかし、落下しない。
草に当たりながらも、無理矢理に飛んでいる。
そして、少し、開けた場所に出た。
その紙飛行機は、まるで、
高性能な、ラジコン飛行機の様であった。
無音で、自由自在に、飛ばす事が出来た。
宙返り、背面飛行、ジグザグ飛行も可能だった。
空中での停止は無理だが、
極端に、ゆっくり飛ばす事は出来た。
娯楽としては充分である。
これを自分の部屋で、楽しめたなら、
大満足である。
しかし、不安を感じる。
草に当たり、痛んでいるハズの機体が、
『何事も無い・・・』
折れたり曲がったり、していない。
『これが普通なのか・・・?』
『それとも、強化されているのか・・・?』
『チラシが、丈夫なのか・・・?』
『魔法の影響で、丈夫なのか・・・?』
確認の為、草むらに突撃させる。
「バサバサバサ」と、草に当たりながらも、
力強く進んで行く。
『確実に、強化されている・・・』
それは、明らかだった。
『それじゃあ・・・』
僕は、紙飛行機を操作すると、
開けた場所に出し、急上昇させた。
その後、全力で、垂直落下させる。
結果、紙飛行機が、地面に激突する。
通常の落下では、ありえない勢い・・・
紙飛行機の先端は、押し潰されていた。
地面には、目立ったダメージは無い。
内心『ほっと』する。
『もし、地面に、刺さっていたら・・・』
それは、もう未知の兵器である。
紙吹雪だって、殺人手裏剣に成ってしまう。
いずれは、そのレベルに、
達するのかも知れない。
しかし、まだ、時間がある。
僕が成長するまで、まだ時間があるのだ。
その間に、安全策を考える必要があった。
『僕が、紙吹雪に驚いた瞬間・・・』
『周囲の人が、ズタズタに成る・・・』
『そんな事は、許されない・・・』
その後、ステンドグラスを掘り出す為に、
場所を移動する。
1年振りなので、草が生えていた。
そこで、土を分解しながら、草を抜く。
以前、隠して置いた植木鉢スコップで掘り進め、
葉書サイズの、ステンドグラスを2枚回収。
そして、その場で、
その2枚の、ステンドグラスを壊して、
用意した紙に、ガラス片を包んだ。
その後、残りを埋め直し帰宅。
当時の僕は、すっかり、シーガラス職人だった。
まだ、24個しか作った事が無いのだ。
まだまだ、素人なのだ。
しかし、気持ちの上では、
こだわりの職人を、気取っていた。
実際、この趣味は、大成功だった。
この趣味が無ければ、今頃、
紙吹雪手裏剣の、練習をしていた事だろう。
僕は、変身ヒーローが好きだった。
当時、小学4年だったが、
ヒーローに成りたい願望が、残っていた。
僕には、魔法があるのだ。
その気に成れば、本当に敵を倒せるのだ。
しかし、現実世界で、敵とは、人間である。
人を殺す練習をして、
『それが成長したら・・・』
『それを使いたく成ったら・・・』
僕が、僕の価値観で、
『正義の味方を、始めたなら・・・?』
『その先には、何が待っているのか・・・?』
心臓だって動いているのだ。
僕は、動いているモノを、動かせるのだ。
目だって、
腕だって、
喉だって、
『動いている・・・』
『それを、吹っ飛ぶ勢いで、動かしたら・・・』
『簡単に、悪人を倒せる・・・』
法律上は、違法では無い。
魔法を使った殺人を、取り締まる法律など、
日本には無いのだ。
しかし、
『目を吹っ飛ばされた相手は・・・』
『どう考える・・・?』
『その家族は、どう考える・・・?』
『世間は、どう考える・・・?』
『不自然な出来事が、多発する・・・』
『突然、眼球が飛び出す、出来事・・・』
『突然、腕が千切れる、出来事・・・』
『突然、喉がつぶれる、出来事・・・』
毎回、その現場には、僕が居る・・・
誰だって、怪しむ・・・
『もし、僕が・・・』
『目を吹っ飛ばされた人間だったら・・・?』
『法律的には、無罪の相手・・・』
『それを、許すだろうか・・・?』
『放置するだろうか・・・?』
『僕の家族は、その相手を放置するだろうか・・・?』
魔法を使えば、知られる。
異常な出来事なのだから、
それは大きなニュースに成って、多くに知られる。
目撃者を全員殺しても、世間は馬鹿じゃない。
その異常な誰かを探し出す。
テレビの、変身ヒーローは、
『殺しても許される何か・・・』
それを殺している。
その多くは、怪人である。
だから、殺しても、許されているのだ。
『変身ヒーローが殺す相手・・・』
『それが、もし、熊や猪であれば・・・』
作り話であっても、問題に成る。
それが世間の目である。
世の中を舐めては、いけないのだ。
『ヒーローを目指しては、いけない・・・』
『現実の世界に・・・』
『魔法を使うヒーローなど必要無い・・・』
『紙吹雪手裏剣など、試しては、いけない・・・』
『本音を言えば、紙飛行機で敵を倒したい・・・』
『トランプで戦いたい・・・』
『コマだって、ヨーヨーだって、武器に成る・・・』
『使いたい・・・』
僕は、相変わらず幼稚であった。
しかし、その事を理解している僕は、
前もって、準備をして置いたのだ。
『心のブレーキ・・・』
僕に、その自制心を与えたのは、
大切に育ててくれている、家族である。
僕は、家族に愛されている。
だから、僕は、
その家族に、迷惑をかけたく無いのだ。
それが、心のブレーキに、成っているのだ。
そして、そんな僕には、現在、趣味がある。
今、僕の魔法は、
シーグラスを作る為に、使われている。
つまり、僕にとって、
家族や趣味を守る事が、大切なのであり、
力の誇示など、必要無いのだ。
僕は、残ったチラシを、ランドセルに戻した。
紙吹雪手裏剣の、練習を、我慢する事に、
成功したのだ。




