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現在、僕は、体育館サイズの、
コンクリート倉庫に、閉じ込められている。
しかし、その中であれば、
自由に移動出来る。
つまり、新聞男の攻撃から、
逃げる事は、可能なのだ。
ところが、僕は、1歩も動けない。
実際には、動けないのでは無く、
僕は、なぜか、動かないのだ。
新聞棒を持った男が、
その棒を1回転させ、
ゆっくりと、僕に接近させている。
殴るのでは無く、
棒の側面で、僕に、ふれる。
そんな攻撃である。
かわす事は、簡単である。
その自覚があるのに、
僕は、それを実行しない。
次の瞬間、
ずっしりと、重さを感じた。
新聞棒で殴られた・・・
実際には、僕の身体に、
棒が、ふれただけ。
その程度の事である。
しかし、僕は、
その新聞棒に、重さを感じた。
普通では無い。
普通の新聞棒で、
この様な、ずっしりは、
発生しないのだ。
次に、男は、僕の目の前で、
新聞棒を2回転させた。
そして、再び・・・
僕は、先程よりも、
重い、ずっしりを感じた。
僕は、かわす事が出来なかった。
その発想が、浮かばないのだ。
今、目の前で、
男は、新聞棒を3回転させている。
僕は、先程、恐竜に、
首の骨を折られたのだ。
この新聞男は、
恐竜を使い、僕を殺す。
そんな人間なのだ。
クソである。
それなのに、
『僕は、なぜ、かわさない・・・!』
僕は、僕が、信じられなかった。
僕は、新聞棒を見ていた。
その棒が、僕の身体に、ふれた。
そして、僕は、
転びそうに成った。
新聞棒の重みが、
増しているのだ。
新聞棒の側面を、
僕の胸に、密着させる。
その程度の行為である。
殴られている訳では無い。
そして、僕は、理解した。
『回転させると、重さが増す?』
すると、男は、
棒をクルクルと回転させ始めた。
何回転もさせている。
つまり、次の攻撃は、
殺人レベルである。
『逃げないと!・・・』
と思ったが、
僕は、気付いた。
今なら、僕は、僕の口の中を噛んで、
その血を、男に吹きかける事が出来る。
と理解している。
ところが、それが出来ない。
僕の視線は、新聞棒に釘付けだった。
そして、男は、再び、
やさしく、僕の身体に、
新聞棒を、触れさせた。
その瞬間、僕は、後方に、
吹っ飛んでいた。
その距離、6メートル程度。
何と表現すれば良いのか?
大きな波・・・
実際には、棒の側面、
10センチの部分が、
僕に、やさしく密着した。
ただ、それだけである。
ところが、僕の身体の全てが、
押された。
流れるプールなら、
その流れに逆らう事が出来る。
しかし、そんなレベルでは無い。
この男は、一体、何者なのか?
僕は、新聞男を、マジマジと見た。
優しそうな、身長160センチ程度の、
眼鏡男である。
達人・・・
それは、間違い無い。
と思った時、後ろに気配を感じた。
もう1人居る・・・
どうする・・・
僕は、今、新聞男から、
攻撃を受けているのだ。
それなのに、次の瞬間、
僕は、新聞男から目線を外して、
振り返った。
すると、1人の男が、
そこに居て、2頭の恐竜に、
手を向けていた。
と同時に、恐竜は、
手向け男に接近。
恐竜は、僕の眷属である。
そして、僕を守る様に、
指示を出している。
つまり、この手向け男は、
恐竜に殺される・・・
と思ったら、恐竜は、
手向け男に、頭を、すり付けた。
2頭の恐竜は、
まるで、手向け男の、
ペットの様である。
『一体、何者?』
ここで、僕は、意識を失ったらしい。
気付いた時、僕は、
僕の、家の前に居た。
藤崎さんの、お父さんが、
車を降りて、僕のママに挨拶をしている。
どうやら僕は、
藤崎さんの、お父さんの運転で、
家まで、送ってもらった様である。
僕は、違和感を覚えた。
しかし、この時、僕は、
記憶の一部を失っていた。
今日、僕は、放課後、
藤崎さんの、お父さんに連れられ、
病院に行った。
そして、藤崎さんと面会した。
お医者さんと、話をした。
そこまでは、覚えている。
その後、僕は、
お父さんの運転する車で、
僕の家まで、送ってもらった。
それは、何となく、納得?できる・・・?
ところが、僕は、
お医者さんが、ペンを落とし、
その後、藤崎さんと、
両親が眠り、
僕が、睡魔に負け・・・
そして、恐竜に襲われ、
新聞男に、遊ばれ、
そして、手向け男が、
恐竜を、僕の眷属化から、
解放した。
その一大事の記憶が、
完全に消失していたのだ。
もちろん、僕は、
その事には、気付いていない。
何かが、変だ・・・
その事は、理解出来る。
しかし、
1度忘れた夢の出来事を、
思い出せない様に、
僕は、何か変な事が起きた。
その変な事を、思い出せなかった。
その為、この事に関して、
僕は、それほど、深く考えなかった。
実際には、
そんな場合では、無かったのだ。
今日は、ネコ太郎の、
血液検査の日だった。
『どんな結果が出た・・・』
僕が、家に入ると、
ネコ太郎は、アイドル状態である。
お爺ちゃんも、
お婆ちゃんも、
家には帰らず、
ネコ太郎と、遊んでいる。
その後、ママから、
無駄の多い説明を聞いて、
数分後、ようやく検査結果は、
明日、聞きに行く。
という事を、教えられた。
その為、お爺ちゃんと、お婆ちゃんは、
今日も、泊まる気、満々である。
別にイヤでは無いので、
僕は、お爺ちゃんの風呂に入り、
その背中を流した。
そして、僕が、風呂から上がると、
ママが、再び無駄に長い話を始めた。
重要な部分を要約すると・・・
僕が、風呂に入っている間に、
担任の、安田先生から、
電話があって、
藤崎さんの記憶喪失の件は、
他言無用との事であった。
実際、先生は、他の先生にも、
記憶喪失の事は、話していならしい。
もし、僕が、学校で話した場合。
つまり、藤崎さんの、
記憶喪失がバレた場合、
自意識過剰なヤツらが、
「私の事、覚えてる?」
「俺は、俺は?」
などと、質問責めに成るからだ。
ちなみに、藤崎さんは、
明日まで、家の都合という理由で、
休むらしい。




