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14話 その友人キャラは関西弁であった

 オリエンテーションが始まったので憂と別れ、班のメンバーと合流した。憂はドラゴン班、私と香音ちゃんはこけし班である。こけし……名前的に弱そう。


「ウチは獅童(しどう)雷花(らいか)や! よろしゅうな!」


 元気の良い関西弁で言ったのは、腰まで届く橙色の頭髪が無造作にあちこちに逆立ってる少女であった。身長は小柄な香音ちゃんより更に小さいが、アホ毛分を入れると丁度同じくらいの大きさになる。私はこの人物を知っていた。


「香音チャンも一緒の班なんて嬉しぃなー! まぁ仲良うやろやー!」

「うん、よろしくねライカちゃん」


 あー! 私の前で雷花と香音ちゃんが仲良く話している! 入学してそんなに経ってないはずなのに、既に親しそうだ! 私はチリチリと嫉妬心を抱きながら彼女を見た。

 獅童雷花……乙女ゲーム【桜色ラプソディ】の登場人物の一人で、香音ちゃんの友人キャラだ。ムードメーカーであり人当たりはとてもよく、お金持ち学校に入学することになって心細い香音ちゃんを支えてくれるにぎやかせ枠……香音ちゃんが大好きな私にとってはめちゃくちゃ羨ましいポジションにいるキャラである。

 雷花は私の視線に気付いたのか、こっちにも声かけてきた。


「これまたどえらいべっぴんなお嬢さんやなぁ。そんなに熱く見つめられると照れるわー」

「べ、別に見つめてなんていませんことよ!?」


 なんと! 彼女は悪役令嬢たる私に対しても気安く話しかけてきた!? ど、動揺して思わずツンデレみたいな態度を取ってしまった。

 この雷花という関西弁のチビッ子ライオンヘアー娘は、乙女ゲーム内だと銀華のことを嫌いと公言しており、はっきり言って悪役令嬢にとっては敵対関係といっていいほど険悪だったはず……! 私は少し警戒しながらも挨拶を返す。


「と、朱鷺宮銀華ですわ。よろしくお願いしますわね?」

「おう、銀華チャン。よろしゅうな!」

「ちゃんづけ!?」


 いきなり悪役令嬢に対してちゃんづけしてきたわこいつ!? コミュ力のバケモンか!?


「なんや、アカンかったか?」

「いや、悪いというわけでは無いけど……わたくし、基本的に同年代からも年上からも『様』か『さん』って言われるので、あまり呼ばれたことないとゆーかなんとゆーか」


 というか前世でも私のことちゃんづけで呼ぶ人なんてあんまりいなかったような……前世の友人A(名前忘れた)からも呼ばれたことないわ、そういえば。え? 実はそんなに仲良い人いなかったの私? それはちょっとショックだわ。気付かなければ良かったわ……


「お嬢様やなー、銀華様って呼べばいいん?」

「いえ、別に好きなように呼べばいいですわ」

「ほな、銀華チャンで」


 気安っ! え? いいのその距離感で。悪役令嬢とかそんなもの以前に、私って日本有数のお嬢様だから普通に無礼なのでは!? ……いや、よく考えたら乙女ゲームの中でもこの子は銀華に対して、普通に喧嘩腰で無礼な感じでガンガン来てたからこれがデフォなのかもしれない。まぁ、乙女ゲームの銀華だったらライン越えてるけど、私は別に不当に嫌われない分には構わない。

 だけど、どうせなら香音ちゃんにも「銀華さん」じゃなくて「銀華ちゃん」って言ってほしいなー! そう思いながら香音ちゃんにチラチラ視線を送ってた。

 でも香音ちゃんは鈍感主人公なので全く気付かれなかった。うぅ、いつかこの気持ち、言葉にして伝えるんだ……具体的には親密度80%越えて個別ルート突入したら……!!!


「おう、オレは虎尾(とらお)大河(たいが)だ。同じ班同士仲良くやろうな!」


 次に快活な声で挨拶したのは、高身長のガタイのいい男だった。一見、強面(コワモテ)にも見える面構えだが、人の良さそうな笑顔を常時発生させていて安心感を与えている。

 私はその男を見て少しテンションが下がった。でおったよ。トラオがよ。


 彼は虎尾大河。金色の逆立った短髪に赤のメッシュが入っている派手な風貌の男で、【桜色ラプソディ】の攻略対象の一人だ。スポーツが得意で、筋肉もムキムキなやつである。

 こいつの最大の特徴。それは「ちょろい」ことだ。何もしなくても初期親密度が高く、3つほどイベントを起こしてやればすぐ落ちる。他のキャラは5段階くらい踏むのに。

 その特徴から他のキャラ攻略してたはずなのに何故かこいつのルートに突入したということも数知れずあり、プレイヤーから「このトラオがよ……!」とよく言われてる。別名クソチョロタイガー。


 そうだった。オリエンテーションの香音ちゃんはこいつと一緒の班だった。私が香音ちゃんと一緒の班になれたことが嬉しすぎて忘れてた。個別ルートに最も突入しやすい分、ある意味私の婚約者である御剣刀真(おれさまおとこ)より厄介な敵かもしれない。個別イベントが起きないように香音ちゃんを守護(まも)らないと。


「なんやトラオ、お前と一緒の班かいな」

「おいおいライカ、酷い言いようだな」


 雷花が若干うんざりした顔で言った。それに対して虎尾は慣れたような対応で返す。香音ちゃんはちょっと驚いたように言う。


「え? 二人とも知り合いなの? でもライカちゃん私と同じで高校入学組だよね?」

「腐れ縁みたいなもんや。一応親戚筋やしな。ウチもこいつがこの学園に入学しとってビックリしたわ。頭悪いし、大体この学園に相応しい品格ってのがないやん」

「その言葉そっくりお前に返るからな?」

「なんやとー?」


 幼馴染の気心の知れた者同士の会話が始まる。もうお前らでくっついちまえよ。そしたら香音ちゃんがフリーになるから。


 あともう一人班員がいたが、乙女ゲームにも出てこないザ・モブ一般男子なので省略する。ともかく私、香音ちゃん、雷花、トラオ、モブ男子の5人1班でオリエンテーション合宿が始まったのであった。

みなさんは乙女ゲームって実際にやったことありますか?

私は姉に借りて一作だけやったことあるのですが、その乙女ゲームは割と異端なので私の中の乙女ゲーム像は歪んでいるかもしれません。

【絶対迷宮グリム】というゲームなんですけど、中世ヨーロッパっぽいファンタジー世界が舞台で、主人公がロリで可愛くて仲間の女の子2人も可愛いという乙女ゲーなのに男性にもおすすめできる神ゲーです。

私の書いた作品でもその影響は強く受けており、乙女ゲームのヒロインである桜香音ちゃんはロリ気味で可愛いイメージで書いています。普通の乙女ゲーム基準ならヒロインはもっと大人びているかもしれません。

絶対迷宮グリムに関しては語るべきことが多すぎるので、また語ります

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