† はじまり**
AM 7:30。うるさいほどの目覚ましの音で目が覚めた。
相変わらずなんとも言えないほどのこの音に毎回ながら若干の苛立ちを覚える。
「 目覚まし、変えた方がいいかもな・・・」
目を細めながら先程止めた目覚ましを見下ろす十夜。
さすがに慣れたとはいえ、毎朝こいつのせいでテンションが下がるのは勘弁だ。
高三になって二代目の目覚まし。前のはベットから落としたためにその短い生涯を終えた。
そして、今、この目の前の目覚ましも十分に役目を果たしているにも関わらず、次のものに変えられようとしている。
まぁ、別にそんなにも重要なことでもないが。
大きなあくびをしながらも、制服に着替える。寝ぼけながらするネクタイはどことなく少し形が悪い。
別に毎日、服装に気を使ってるわけでもない。完璧に着るのも面白みがないと何かと理由をつける。
乱れた髪をかき上げながらリビングへと向かう。ソファーに鞄を投げ、食事が並べられた席へと座る。
いつもどおりの朝。何も変わりない朝。同じことの繰り返し。
「 十夜、早く食べちゃいなさい」
父は新聞を片手にコーヒーを飲み、兄貴の雅夜は普通に食事している。母はいろいろと動き回る。
これといって会話もしないまま、料理を口に運ぶ。
「 ごちそうさま」
雅夜は食べ終わった食器を流しへと運ぶ。
それから、数分後に十夜も食器を流しへと運ぶ。
AM 8:08
「 いってくる」
家を出て、空を見上げる十夜。
今日は特別嫌いなことが起こりそうな気がする。