↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『僕の周りの怪異たち〜学校の怪談や都市伝説と、なぜか普通に友達やってます〜』  作者: ハジェリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/9

第一話 皆様に僕の彼女についてお話しします。

コンコンコン。


「花子さん、いらっしゃいますか?」


…。


………。


……………。


コンコンコン。


「はーな子さん!……配信中かな」


…。


………。


……………。


コンコンコン。


「花子ー!…さよならを言いに来たんだけど」


「ちょっ!!なんで!?なにがよっ!!どうしたらそうなるの!?なんでよ!?」


蹴破るほどの勢いで扉が開き、白い服を来た女が飛び出してきた。


トイレの花子さん。


伝承では、おかっぱでランドセル背負っていたり、赤いサスペンダー付きの吊りスカートを履いているパターンがお決まりだろう。

季節や地方によっては変わることもある。


また、親から虐待を受けていた少女が、おかっぱ頭に切り揃えられ、赤い服を着せられて学校のトイレに閉じ込められたまま亡くなったという説や、昭和中期頃に、学校のトイレに入ったところを変質者に襲われて殺害されてしまった少女の霊などという説などもある。


『三番目の個室』という具体性が、犯人に追い詰められた恐怖感をリアルに物語る要素として語られるが…実際は違う。


まず、見た目だ。僕の知る花子《この娘》はオーバーサイズの白いビッグシャツに、マイクロショートパンツ。

確かに髪の長さはおかっぱ位だが、シースルーバングの前髪にゆるふわボブ。現代的で僕の千倍はオシャレをかましてる。


そして、三番目の個室もあっているが、悲しい理由なんてない。

漫画喫茶に入り浸るオタクや家なき子が如く、なんとなくそこにいるだけだという。


しかも、ファッションや髪型然(しか)り、現代の流行まで反映されていて、学校の怪異相手に配信までしてるらしい。

毎日トイレで配信だなんて、代わり映えなさすぎる気もするが、本人曰く割と人気なのだとか。


痩せているのは、怪異だからとか不幸だからではなく、ただの運動不足だ。


「なんでって。わかるだろ?」


「わかるわけないじゃない!なんでなんで!?私何もしてないのにぃ!!!」


「いや、なんもしないからだろ」


「…え?」


――


僕こと、境《さかい》はじめと花子との出会いは突然だった。

とある日の夕刻、俺は探しものをして校内を彷徨っていた。

いたずらか、はたまた嫌がらせか。帰ろうとしたら靴が見つからなかったのだ。


散々隠されていそうなところを探したところ、夕方の誰もいない校舎で唯一、人気《ひとけ》(※妖気とも言う)のあったところが三階の女子トイレの三番目の扉だった。



念のため、腹を下して夕方まで苦しんでる可哀想な女子の可能性を考慮して、きちんとノックした。


そうしたら、なんと……。


――はぁーい。


本当に返事が返ってきてしまった。この時、俺はまだ苦しんでる幼気《いたいけ》な女子だと思った。


はぁーい、なんて間の抜けた声で返事されたもんだから、本当にそう思った。

なんたって、夕方まで苦しむくらいだ。

「はぁ~らいてぇよぉ〜」が声にならなかった可能性まで考慮してある。


とりあえず男子だとバレぬように、そっとトイレをあとにした。


その後も僕は靴を探し続けていた。

このまま見つからないと、新たな学校の怪談『靴探し坊や』になってしまう可能性が出てきた。


日も落ち、さすがに帰ろうと思ったが、唯一の可能性があった女子トイレが頭から離れなかった。


それが花子との出会いだ。


怪異のくせに慌てん坊で、初登場はそれこそドジだった。


配信する為に怪異の伝承的衣装に着替えようとしていたらしく(本人後日談)、赤い吊りスカートを履こうとしていた。

そこに僕が急に来たものだから慌ててしまい、サスペンダーがしっかり止まっておらず、トイレに引きずり込もうと飛び出したところ、見事にスカートがすとーんっ。


真っ赤な顔で扉を閉めたところから出会いは始まった。


靴を隠されたんだけど、知らない?と聞いたら少し待てと言われて、しばらく待たされた。

この時、配信で学校の怪異に聞いてくれていたようで、靴の在り処を教えてもらえた(本人後日談)とのことだった。

人間より怪異のほうが善行を行うという皮肉。


靴は、廊下のゴミ箱の底に隠されていた。生ゴミじゃないのが、せめてもの救いだった。


ため息とともに帰ろうとしたところ、遠くトイレの中から、「ちょっとぉ〜どうなったのよぉ〜、だいじょーぶなの〜」と聞こえてきた。


見つけてくれた恩も有り、しばらく話すことになってそれが数日続いたら、向こうから告白してきた。


これも後日談だが、この花子による世紀の大告白までの道程は、胸に取り付けられていた心霊的なカメラで配信されていたらしく、過去最高の視聴回数を記録されたとか。

学校中の女子怪異がソワソワしまくって、この人間×怪異の恋愛バラエティショーは大バズリ。

その晩はお祭り騒ぎだったそうな。


閑話休題。


「別に嫌いになったとかじゃないよ。こうして女子トイレまで毎夕刻に会いに来るリスクとリターンが合わないんだよ」


「……え?」


「せめてトイレから出られるならわかる。このままだと、僕達どこにもいけないじゃん。全デートがトイレだよ。先々の事を考えたら、僕達はトイレのままじゃいけないと思ったんだ」


事態を漸《ようや》く飲み込めてきたのか、先ほどまでの焦った表情とは違う、半べそをかきはじめていた。


「だだだだって仕方ないじゃない!私、世界の花子さんなのよ!?怪異なんだから、ルールがないと存在していられないのよ!はじめだって知ってるでしょう?」


「怪異なら恋愛配信してる場合じゃないだろ、とも取れる発言してるね。ルールなんだから僕の事を脅かせよ、ってリスナーにコメントされない?」


ジャーーーーっとトイレが流れた。

花子が便器の水流に飛び込んで、この空気から逃げ出したのだ。

少しでも劣勢になると直ぐこれだ。


「はぁ。そうやってすぐ逃げる。そんなだからいつまで経っても解決なんて出来やしないよ」


…。


……。


………。


まさか、下水道まで行ったか?


「もう!!女子トイレなんか意識してこないと、そうそう男の子は来ないんだからな!一生このまま会えなくてもいいのか!?」


――その時。


「ダメに決まってるじゃないのっ!!うわーーーーーん!」


天井から、ぽとりと水滴が落ちてきた。


それとともにゆっくりと、泣きじゃくる花子が背中から落ちてきた。


「飛行石付けてるみたいに降りてくるなよ」


「だったら、キャッチしてよっ!!」


「はいはい」


「…え?」


仕方なくキャッチしてあげた。

所謂《いわゆる》お姫様抱っこってやつだ。


うるうるとした瞳で上目遣いでこちらをみている。

黙ってればとんでもない美少女なのに。

ここまでの話の流れからして、まさか本当にキャッチしてもらえると花子自身も思わなかったのだろう。


「さっきも言ったろ?嫌いになったとかじゃない。リスクとリターンが合わないんだ。恋愛においてとても重要なことだと思うよ」


「リスクとリターンって…愛は無償じゃないの?薄情者!私とは遊びだったのね!!」


「遊べないから言ってるんだってば」


僕はまたしても、はぁ、とため息をつく。


「そのうち卒業だってしてしまう日が来る。それこそ、ここへ来たら僕が変質者にされるんだ。夕方に女子トイレに忍び込んで一人でしゃべってるんだから」


「…もうっ!しらない!バカ!バカはじめ!!わかったわよ!もう、さよなら!今日でお別れよ!こんな美少女トイレ系配信者彼女なんてもう金輪際出来ないんだからっ!!」


そう言い放つと花子は扉を閉めて、トイレの中に閉じこもってしまった。


このままちゃんと話せないで終わってしまうのは嫌だな、と思った。


まだまだ色々と話をしたい気持ちはあった。

だが現実を見て見てれば、問題は山積みだ。


学校取り壊されたら花子はどうなるんだ?会えるのか?

(※トイレが夏休みの間に工事が決まった時はどうなることかと思ったけど、それは希有だった。しばらく会えなかったが、洋式になった時には、世界観が変わる位に快適になったらしい。本人談)

とか、卒業したら会えなくなるとか。

(※人間は割とすぐ死ぬから、この世に未練残して会いに来い、と言われた経験有り。花子に)


まぁ、友達としてなら連絡は取り合えるわけだし。環境を変えられるのかは、怪異側にしかわからない。

人間である以上、僕にやれることはそれほどないのだ。死ぬほど努力して漸《ようや》く、先生や用務員さんの目を盗んでは女子トイレに籠る事くらいだ。


(また会いに来た方がいいよな。もしかしたら、しばらく泣いてるかもしれないし)


「……はぁ」


解決の糸口さえ見えない内容に頭を巡らせて疲れ果てた僕は、いつも鍵を開けたままにしてある窓から校舎の外へ出た。


重たいため息を吐いて、歩き出す。




すると――




――学校を出てすぐに、花子からラインが来た。




開いてみると写真付きのメッセージ。


「リスナーと意気投合♪音楽室のベートーヴェンと付き合うことになりました☆異国の人ガチイケメン!!!はじめも元気でね♥」

【二人のツーショット写真】


だってさ。びっくりだろ?


人間のものさえわからないのに、怪異の恋愛観はもっとわからないのだと、この日僕は思い切った。





不定期更新ですが、宜しければ読んで頂けたら幸いです。今後も宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。