彼女の故郷
【外面的要素】
争いもなく、科学と自然が完全に調和した平和な惑星
住人は常に僅かな笑みを湛え、煩わしいような大きな音もなく、ただ静かに穏やかな文化を持つ
【実態】
不必要な音や相手に時間的に束縛することを罪とし、会話も最低限しか交わさず、接触もない精神的ディストピア
彼らは足音も衣擦れも起こさず、ただ自分たちの一瞬の会話の音(クリック音や吐息)を交わしてすれ違う
助け合いや意見の衝突などといったものもなく、完全に住人全員がスタンドアローンで生きている
【この惑星での戒律】
・禁忌(追放、もしくは社会的消去)
「自傷、他傷(授かった命を傷付ける自傷の方が重い)」
死刑は他傷にあたるため存在しないが、存在を完全に無視される"無音の地獄"に送られる(衣食住は管理されているが、会話、視線の交わし合いはなく、全て機械が管理)
・逸脱(隔離)
「相手の自由意志を縛る、相手の時間を奪う」
頼み事(自由意志を奪う)、必要ない会話(相手の時間を奪う)、会話を被せる(聞き返す相手の時間を奪う)など自分の行動が相手の時間を奪う行為
住人たちが普段より深い笑みで対象に詰め寄り、対象者は外縁セクターへ送られる
・無言の拒絶
「不要な音を立てる」
物を落とす、足音を立てるなど会話以外の音を立てると、それを聞いた周囲の住人は一瞬眉を顰め、深い笑顔で音を立てた対象者から距離を取る
隔離などはないが、対象者がその場から去るまで住人は動かず笑顔で圧を与え続ける
【言語形態】
文章を組み立てる僅かなラグの原因である文法や助詞といった単語以外の要素を徹底的に排除された一見効率的な言語
しかし一つの単語に「状況、感情、行動」が超圧縮されているため、固有単語が何千万と存在する
有声音だけでは到底足りず、溜息や微かな吐息、クリック音などの無声音にまでびっしりと意味が込められ、それらを最大でも2つ組み合わせた音(クリック音+一瞬の吐息など)で会話する
住人は僅かな違いでさえ駆使している(声が高いか低いか、息がどのくらい長いか短いかなど)
【完全に消去された概念、言葉】
・「助けて」「一緒に」「~したい」「~したくない」「好き」「愛してる」
これらは相手の自由意志を奪う強制やエゴによって世界の調和を乱すとされて消去された
・「命令形、依頼形」
上記に同じく相手の自由意志を奪うとされたため
・「ありがとう」「ごめんなさい」
助け合うという概念がないため感謝するという概念がなく、何か失態を犯した際、謝罪をして歩み寄る隙すら与えない拒絶によって消去された
・「書くための文字」
文字を書く、読ませるという時間が相手の時間を奪うとされたため消去
そのためこの惑星には歴史が残っていない
【住人の習性】
・「出産及び育児隔離セクター」
母親が出産するためのセクターとその後の乳児を収容する隔離セクター
赤ん坊はまだ何も理解しておらず、際限なく音を立てるため、自我が芽生え、住人の言葉を話すまで隔離セクターに送られ、そこで機械に育てられる
ある一定ラインまで育つと脳に直接この惑星の言語を植え付けられ、習得した後は次の段階のセクターへ送られる
・「無音訓練セクター」
歩行、炊事、呼吸などの全ての必要動作を無音にするための身体の使い方に慣れ、習得するまで訓練する隔離セクター
育児隔離セクターから次に送られてくる場所
ここを完了して初めて住人のいる場所へ帰される
・「恋愛感情の一切ない繁殖行為」
好き、愛してるは相手に自分を愛することを強要するものとして排除した結果、一定周期で子供の産める男女を一か所に集め、集団お見合いのような形をとる
・「停滞した科学」
科学と自然が調和しているが、完成系ではなく停滞であり、新しい概念を生むとそれに伴って新しい単語を作らないといけないために新たなものが生まれることはない
・「短い髪と体にフィットした服装」
髪が擦れる音、衣擦れの音もノイズとされ、住人はみな短い髪かスキンヘッド
服装もノイズさえ生まなければどんなものでも住人は気にしない、視覚的ノイズには寛容であるが、通行の邪魔をする(相手の自由意志、時間を奪う)ものは拒絶する
極論全裸であってもいいが、自然の残る惑星で思わぬ事故によるノイズ(虫や怪我)を防ぐために服を着る住人がほとんど
・「防音ドーム」
機械による食の提供は自然との調和を乱すとされ、住人がそれぞれ調理をする
煮る、焼くなどはどうしても音が出るため、専用の防音装置のある防音ドームで自分の分の調理をする
(他人の分まで作ることは好みや栄養などの観点から押し付けのノイズとされる)
・「最低限の居住スペース」
個人の家にはカプセルホテルのように極限まで削ぎ落した、生活をするというよりは脳を休めるための機能(ベッドと滅菌シャワー)しかない場所




