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「真実を告げよ」第3章 第6話(後編)

その瞬間、時間の塵に覆われながらも、彼女にとって果てしなく尊い古い記憶が脳裏に映し出された。それは、小さなリョウの病を癒やすために、彼女が初めて村に姿を現した日の完全な記憶の断片だった。記憶の中で、パンドラは静かな雰囲気に包まれた一人の女性の声を耳にした。無限の愛情を込めて愛おしい新生児を抱きかかえる華奢な両手が、彼女に向かってゆっくりと差し出された。女性は愛おしそうに囁いた。


女性の声:「抱っこしてみるかい、パンドラ?」


パンドラは極めて慎重な手つきで、小さな赤ん坊をその腕に受け抱いた。幼子は激しく泣き叫んでいたが、悪魔の膝元に収まった途端、その小さな目をゆっくりと開いた。パンドラは彼をじっと見つめた。赤ん坊は美しい二色の異彩を放つ瞳――右目が青、左目が赤の瞳を持ち、そこには純粋無垢で、優しく、慈愛に満ちた光が宿っていた。パンドラの顔を見るなり、幼子はぴたりと泣き止んだ。そして、丸々とした小さな手を彼女に伸ばし、心から楽しそうに声を上げて笑ったのだ。


その魂の純粋さに胸を打たれたパンドラは、生まれて初めて彼の耳元で呟いた。


パンドラ:「リョウ様……」


突如として記憶の奔流が加速し、数世紀にわたって共有してきた様々な瞬間の断片が目まぐるしく駆け巡った。ある断片では、大きな屋敷の廊下を焦りながら歩き回り、痺れを切らしてあちこちを探し回るパンドラの姿があった。


パンドラ:「リョウ坊ちゃま! どこにいらっしゃるのですか、リョウ坊ちゃま!」


また別の記憶の断片では、笑いを噛み殺しながら彼を探し、困り果てたフリをして声を上げていた。


パンドラ:「リョウ! どこにいるの? ずるいぞ、リョーッ!」


……あたたかな記憶の温もりが一瞬で霧散し、彼女は再び影の中の冷たい現実へと引き戻された。濃密な薄暗がりの中、パンドラは切なさに胸を痛めながら一人身を丸めて漂っていた。己という存在の闇に呑み込まれるように固く目を閉じると、消え入りそうな掠れ声で、謎めいた言葉を呟いた。


パンドラ:「……できれば、忘れていてほしいけれど。だってあなたは……あなたはいつだって、別の過去に囚われて生きているのだから……リョウ」


◆


パンドラが影の中に沈み込んで部屋から消え去ると、リョウは緩やかな足取りで動き出した。壁の隙間から夕暮れのわずかな光が差し込む、小屋の小さな洗面所へと向かう。無骨な鏡の前に立ち、赤く輝くダイヤモンドが施された銀のピアスを指先でつまみ上げた。狂いのない手つきで鋭い金属の先端を耳たぶへと押し当て、小さな乾いた感触とともに皮膚を貫通させた。痛みに顔を歪める素振りすら見せない。留め具を固定し、角度を調整すると、宝飾は沈着する前に一瞬だけ微かな深紅の輝きを放った。直後、リョウは己の悪魔のエネルギーがじわじわと収束し、ある一定の領域で留まるのを感じた。しかし、その感覚は驚くほど軽やかだった。


メインルームへと戻ったリョウは、再びベッドの上に体を投げ出した。仰向けになり、両腕を両脇に広げ、小屋の静寂に身を委ねた。ゆっくりと首を左へと傾け、左手を顔の高さまで持ち上げる。その瞳は、薬指にはめられた一つの指輪に釘付けになっていた。まるで答えを追い求めるかのように、あるいはその小さな金属の輪の中に閉じ込められた失われた時を追体験するかのように、絶対の静寂の中でじっと見つめ続けた。それはあたたかく、同時に胸を締め付けるような切ない抱擁だった。やがてゆっくりと手を降ろし、天井を見上げて重く長いため息を吐き出した。


まさにその瞬間、ドアノブが激しく回転し、扉が勢いよく開け放たれた。


橙色の暖かな夕暮れの光が小屋の薄闇を一気に押し流し、リョウの物思いを打ち破った。敷居を跨いで入ってきたサムは、息を荒く切らせながら、様々な生地と色の新しい服が限界まで詰め込まれた巨大な木箱を抱えていた。横たわるリョウを見るなり、サムは満面の笑みを浮かべ、いつもの元気な声で挨拶を投げかけた。


サム:「よお、リョウ! 今日買ったものを見てくれよ!」


重い木箱をドスンと音を立てて木製のテーブルに置く。


サム:「市場で掘り出し物を見つけてさ、旅にぴったりの素晴らしい生地が手に入ったんだ!」


リョウはベッドから動こうともせず、面倒くささと無関心が入り交じった視線で彼を横目で見ると、制止するように片手を軽く掲げた。


リョウ:「いや……今は何も見せるな、後で見る。それより飯に行こうぜ。もう日が暮れるし、食い物を買いに行かないと」


サムは道半ばで立ち止まり、首の後ろをかきながら木箱とリョウを交互に見やった。「食い物」という words を耳にした途端、彼の腹が小さく鳴り、一日中市場を歩き回った疲労感を思い出させた。


サム:「まあ、お前の言う通りだな。市場を一日中連れ回されてこれだけの荷物を運んだんだ、腹が減って死にそうだよ」


リョウはベッドの上に体を起こすと、腕を伸ばして大きく伸びをし、何事もないかのように立ち上がった。


リョウ:「だろ? じゃあ何を食うか見に行こうぜ。行くぞ」


サムは大きな箱をテーブルに残し、服の埃を払うと元気に頷いた。リョウが先陣を切って外へ向かい、サムがその後に続いた。町に黄昏が完全に訪れる中、温かい夕食を求めて二人は静まり返った小屋を後にした。


こうして一日はついに終わりを告げ、村は星々の帳と共有された静寂の中に包み込まれていった。


一方、鍛冶場の薄闇の中、トーリンは炉の火照りだけで照らされた作業場にいた。集中で眉をひそめ、額に汗を浮かべながら重い金槌を握り締め、リラの構造を極めて慎重に修復しながら、規則正しく力強い金属音を響かせていた。


また別の場所、温もりのある仕立て屋では、店主がロウソクの灯りの下で専門家らしい素早い手つきで糸や針、上質な布のロールを扱い、リョウが身に纏うことになる新しい服の最後の仕上げを行っていた。


そこから数ブロック離れた地元の床屋では、数時間前にリョウの髪を切った男がそのまま業務を続け、床に散らばった客の髪の毛を横目で見ながら、静かに会話を交わす村人の頭上でハサミを滑らかに動かしていた。


その頃、隣町のレストランの熱気あふれる空間では、仲間たちがくつろぎの時間を過ごしていた。ヴィクトル、セレイナ、スリー、アカネ、そしてルシアが素朴なテーブルを囲み、グラスの触れ合う音や一日の疲れを癒やす笑い話に花を咲かせながら、共に夕食を摂っていた。


そして最後に、他人の喧騒から遠く離れた場所で、リョウとサムは点灯し始めた石造りの街灯の下を隣り合って歩いていた。静かな夕食の場所を求めて進むにつれ、二人の影が泥の地面の上に長く伸びていった。


ついに、完全な夜が村を完全に支配した。草木も眠る丑三つ時の静寂が隅々にまで行き渡り、住民たちはみな眠りについた。小屋の中では、サムの規則正しい寝息が彼が深い眠りについていることを物語っていた。


しかし、リョウは眠っていなかった。


しなやかで静かな身 poncho(身のこなし)でベッドから起き上がると、ゆっくりと外へ出た。木製の扉に背を向け、小屋の入口の真ん前に立ち、夜の広大さを見つめた。冷たい風に溶け込むような低い呟き声で、忠実な執事を呼び寄せた。


リョウ:「オロバス」


その瞬間、リョウの身体から黒い霧が解き放たれ、そこからオロバスが姿を現した。彼は即座に片膝をつき、深い忠誠心を込めて頭を垂れた。


オロバス:「仰せのままに、我が主……ご入用は何でしょうか?」


リョウは顔に冷徹な真剣さを宿し、彼を横目で見つめながら新たな任務を言い渡した。


リョウ:「今からの貴様の任務は、俺の両親を監視することだ。森の時のように、二度と俺の足跡を辿らせるわけにはいかん。奴らが俺を見つけるのが遅ければ遅いほど都合がいい。もし俺に近づく動きを見せたら即座に知らせろ。それと、奴らが下す決定のすべてを常に報告しろ。以上だ」


オロバスは洗練された動作で立ち上がり、荘厳で揺るぎないお辞儀をした。


オロバス:「御意のままに、我が主」


リョウ:「また用ができたら呼ぶ。下がっていいぞ」


オロバス:「かしこまりました」


一筋の音も立てず、オロバスは大空に向かって高く跳躍した。一瞬の迷いもなく任務を遂行すべく、夜の絶対的な闇の中へと亡霊のように消え去っていった。


リョウは一瞬だけ、何もなくなった天空を見つめた。それから静かに小屋の中へと戻り、慎重に扉を閉めると、体を休めるためにベッドへと横たわった。残された最後の猶予の日で力を回復しなければならないことを、彼は理解していた。何しろ、水曜日はすでに終わりを告げ、明日はもう木曜日なのだから。


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