第2巻・第2話『冒涜』第1分冊
正義の眼が曇る処、人間の意志の最も歪んだ果実が芽吹く。憩う者たちは幸いなり。しかし、すでに静寂に帰したものを奪わんと、墓穴へと降りていくその手は呪われよ。魂なき身体の聖堂を冒涜することは、限界を知らぬ惨懆の証明であり、人間の魂が塵と灰の上に君臨せんとする怪物を生み出し得るという証左なり。それは虚無に自らの痕跡を残そうとする影であり、聖なるものへの畏怖を忘れた生彩の、最後の悪行である
修道女は孤児院の回廊の網の目を、なおも緩慢な足取りで進み続けた。彼女の修道服が床を擦る規則的な音だけが、その墓穴のような静寂における唯一の定数だったが、ある invisible(目に見えない)な境界線を跨いだ瞬間、建物の建築様式が劇的に変貌を遂げた。
彼女が現在前進している通路の区画は、直前までのものとは明らかに一線を画していた。このセクターは遥かに清潔で、調えられ、そして新しかったのだ。壁面には下層の無骨な石造りに見られたような塩害の痕跡も湿気もなく、代わりに完璧に切り出され、非の打ち所のない職人技で磨き上げられた石ブロックが整然と誇示されていた。
この画廊のような回廊をかなりの距離進んだ後、女性は深いオリーブグリーンに塗装された頑丈な木製扉の前で制動をかけた。リョウの生気のない肉体をしっかりと肩に固定したまま、修道女は空いた手を真鍮のドアノブへと伸ばして回転させ、構造体を押し込んだ。
扉は微かできしむ音を立てて内側へと開放された。敷居を跨ぐと、そこには複合施設のさらに上層の、制限区域へと上昇する険しい石階段が露わになった。確固たる、かつ単調な足取りで、女性は暗がりの中で均衡を維持しながら、一段ずつペダルを踏むように階段を登り始めた。
階段の終端に到達した彼女を迎えたのは、田舎の教会としては極めて異例なセキュリティシステムだった。部屋を保護する主たる木製扉の手前に、重厚な鍛造アイアンの格子障壁がそびえ立っていたのだ。それは古いホテルのエレベーターに使用されているような、伸縮式の蛇腹ゲート(アコーディオンシャッター)と同一のメカニズムであり、主導線に接触する前にまずその鉄格子を側面にスライドさせる必要があった。
修道女は足を止め、黒い修道服の折り目の中に手を差し入れて重い鍵束を抽出した。その中から一本を選択して酸化した金属の錠前へと挿入し、金属特有のエコーを響かせる乾いた回転音とともに鉄格子のロックを解除した。間髪入れず、彼女は別の異なる鍵を選択して木製扉の鍵穴に適合させ、同様のプロセスを反復した。
重厚な木製の扉が内側へと開き、数分前にアカリを残してきたあの部屋と完全に同一の構造を持つ空間が露わになった。その寝室には、両側面に整列された二台のシングルベッド、私物を格納するために壁面に左右対称に埋め込まれたいくつかの木製キャビネット、そして天井から吊り下げられた一台のランプが存在し、隅々の影を霧散させるには到底足りない、濃密で今にも死に絶えそうな黄色の光を放射していた。
修道女は揺るぎない足取りで室内へと侵入し、その生気のない視線を一見して無人の空間へと固定しながら、右翼側の空いたベッドに向かって直線的に前進した。
**修道女:**「……おい、ケンゾ。この子をここで休ませますよ」
無関心なトーンでその音節を吐き出しながら、女性はリョウの満身創痍の肉体をマットレスの上へと慎重に横たえるべく、上半身を傾斜させ始めた。まさにその、最大の脆弱性が生じた刹那、室内の静寂が暴力的に破砕された。内側へと開放されていた扉の死角――最も濃厚な闇が沈殿する隅の領域から、一瞬の火花のように一瞬で「一人のシルエット」が具現化したのだ。
それは十三、四歳ほどの少年だった。彼は野獣のような獰猛さで修道女の背後へと突進した。その右腕には鋭利に研ぎ澄まされたナイフが握られており、宗教者の頭部を直接刺突せんと、下方へ向かう弧を描いて刃を振り下ろした。その襲撃は隠密であり、致命的であり、通常の人間であれば奇襲の極みとなるはずだった。――しかし、彼女にとっては違った。
金属の先端が彼女の皮膚に接触するわずか一ミリメートル手前で、修道女は視認不可能なほどの超速度で運動を実行した。上半身を完全に翻すことすらなく、空いていた手を上方へと駆動させ、その武器の軌道を完全に停止させたのだ。少年の手首は、空中で彼女のアイアングリップ(鉄の掌握)によって完全に捕捉されていた。女性が少年の関節に加えた圧力は、手袋越しでも骨がきしむ音が鳴り響くほどに凄まじく、かつ常軌を逸したものであり、少年は痛みのあまり歯を食いしばりながら、即座に武器の手放しを余儀なくされた。
**ケンゾ:**「っ……あああ……っ!!」
ナイフは彼の感覚を失った指先から滑落し、木製の床へと金属特有の鋭い音を立てて落下した。修道女は一秒の間を置いてから、襲撃者の手首を蔑むように解放した。少年は負傷した部位を抑え、荒い呼吸を刻みながら一歩後退した。恐るべき平然さのまま、女性は身を屈めて床からナイフを回収し、ランプの黄色い光の下でそれを検証した後、自らの衣服の奥深くへと格納した。
**修道女:**「これからはもっとあなたへの監視を厳しくし、このセクターのセキュリティを強化する必要があるようですね。本当に懲りない子」
修道女は直立し、その場を離脱すべく緩慢な足取りで出口へと向かった。敷居を跨ごうとするまさにその瞬間、彼女はドアフレームの下で歩行を制動させ、襲撃者を最後に見据えるべく頭を僅かに回転させた。ランプの残光の下、少年の容貌が完全に鮮明化する。――彼は野生的な印象を与える、トゲトゲと逆立った燃えるような「赤髪」を宿しており、その固定された、貫通するような鋭い眼差しからは、純粋な憎悪と敵意が放射されていた。
**修道女:**「……くれぐれも、私が連れてきたその子を襲うような真似は厳禁ですよ。獣のようになりたくないのなら」
反論を待つことなく、女性は室外へと退出した。重厚な木製扉が内側へと激しい音を立てて閉鎖され、直後に鉄格子の伸縮ゲートが元の位置へとスライドする不快な摩擦音が響いた。通路からは、第一の鍵が木を固定し、次いで第二の鍵が鉄の構造体をロックする明確な機構音が聴取された。修道女の足音は石階段へと移行し、清潔な通路の彼方へと段階的に減退していき、やがて完全に遠方へと消失して、そのセクターに再度静寂を還元した。
ケンゾは部屋の中央に一人取り残された。彼は入り口の木製扉に視線を固定したまま、麻痺した手首をしばらくの間マッサージし、それから自らの注意を、新たな同居人が横たわる隣のベッドへとゆっくりと移行させた。
彼は忍び足で接近し、ベッドの端に立って腕を組んだ。死に絶えそうな黄色の光の下でリョウの子供の肉体を精査すると、彼の瞳はその凄惨な損耗状態を克明に捉えた。衣服は泥濘によってボロボロに引き裂かれ、両腕は広範囲の皮下出血に覆われ、背中の皮膚は激しい摩擦による裂傷と引っかき傷で埋め尽くされていた。それは、自然治癒のプロセスが外因的に開始されたばかりの、過酷な衝撃の爪痕だった。
**ケンゾ:**「……ふん」
赤髪の少年は唇の間から蔑むような鼻鳴らしを漏らし、リョウの意識のない顔面を眺めながら、好奇心と皮肉の入り交じった感情で片眉を跳ね上げた。
**ケンゾ:**「おい……お前、一体何にひき逃げされたらそんな風になるんだ?」
少年は暗がりの中に微動だにせず佇み、新参者の呼吸のテンポを長い間凝視し続けた。この孤児院の制限区域にこれほどの状態で搬送されてくる人間の素性を解読しようと試みているかのようだった。やがて、侵入者が当面の間覚醒する兆候がないと判断し、これ以上この件に思考を割くことを打ち切った彼は、身を翻した。
**ケンゾ:**「……お前が本当に何者なのかは、明日になれば分かることだ」
彼は壁のスイッチへと近づき、部屋の電流の供給を遮断した。天井のランプは瞬時に消灯し、精密に削り出された壁面を濃密かつ絶対的な暗黒へと沈降させた。機械的な動作のまま、ケンゾは自身のベッドへと移動し、毛布の下へと滑り込み、眠りへと就くべく両眸を閉じた。
#### 【場所:地球|日時:2026年6月15日 午後8時30分】
日本の過密な首都・東京の天空には、巨大かつ暴力的な嵐が容赦なく cernir( cernirse / 渦巻く)していた。プルトニウム(灰黒色)を帯びた鉛色の濃密な雲層からは、アスファルトを圧倒的な破壊力で叩きつける豪雨の奔流が投下されていた。その猛烈なダウンバーストゆえに、普段であれば過密を極める大都市のアベニュー(大通り)は完全に無人と化していた。ネオンサインの光が道路の巨大な水たまりに歪んで反射し、この天候の下を行軍する者が誰一人として存在しない、孤独でメランコリックな都市のランドスケープ(風景)を形成している。
その冷酷な気候の敵意のただ中、外部の豪雨の轟音は、ある小さな店舗の内部に鳴り響く「全く異なるサウンド」と静かに同期し始めていた。――それは、一日の最終的なメニューをフライにする、沸騰したオイルが激しく泡立つ持続的なシセオ( siseo / 摩擦音)だった。
メインカウンターの真裏に腰掛けた一人の少女が、顔面に完全な退屈の表情を刻みながら、自らの顎を手の平に預けていた。彼女の視線は断続的に壁面の巨大な時計へと逸れ、閉店までの残された分数をカウントしている。彼女は店舗の規定フォーマットである制服を着用していた。前髪を格納した暗色のキャップ、腰部に強固に結ばれた清潔なエプロン、そして肩へと滑らかに垂れ下がる長い黒髪。
対応すべき顧客が存在しないため、若い女性は店舗の上部コーナーに吊り下げられた小型のテレビ画面へと視線を移行させた。そこでは夕方のニュース番組が、単調でありながらも緊迫したトーンで最新の情報を発信していた。
**ニュースキャスター:**『地質学者および気象研究所の警告によれば、現在の嵐は夜通し継続し、明日の終日(まる一日)にわたって延伸する可能性が極めて高いとのことです。主要クアドラントでは約6キロメートルの持続風速が観測されていますが、午前2時ちょうどを境に風速および嵐の強度が劇的に増大するため、一般市民の皆様におかれましては、午前2時以降の不要不急の外出を厳に控えていただくよう強く推奨いたします……』
レポートは衛星マップや追加の警戒事項を解体し続けていたが、少女はその反復されるトランスミッション(放送)に辟易し、長い溜息を漏らして注意を逸らした。
**少女:**「本当に退屈な嵐……。ただ仕事(客足)が減るだけじゃない」
無人の店舗の真空へとその音節を放った後、若い女性は公道に直接面した巨大なガラス窓へと視線を固定した。――その場所はまさに、リョウがその運命を悲劇的に改変される前、かつての人生(前世)において日常のルーティンと労働シフトを共有していた、まさにあのファストフード店(飲食店)であり、彼女はその同僚の少女だった。
窓のガラスを凝視していくと、彼女の注意はある特定のポイント、下層のコーナーへと収束した。そこには、粘着テープで強固に貼付された一枚の長方形の紙が存在していた。その用紙には、カラー印刷されたリョウの顔写真とともに、彼の「行方不明(失踪)」を告げる公的な宣誓文が巨大かつ明瞭なフォントで刻まれていた。彼の謎めいた不在のニュースはすでに周辺地域のパブリックドメイン(周知の事実)と化していたが、現在に至るまで、いかなる管轄当局も彼の死亡、あるいは遺体の発見を公式に確定させてはいなかった。
しかし、その紙面は残酷な時間の経過を冷酷にデノート(指示)していた。外縁部は著しく摩耗し、インクは日中の太陽光線によって微かに退色しており、素材は環境の湿気によってよれ、歪んでいた。それは、何の方針転換もないまま、その場所に一ヶ月以上も放置され続けているという事実を視覚的に証明していた。
少女はかつての同僚の写真を数秒間見つめ、脳裏を通過していく共有されたシフトの記憶とともに、胸部に微かな痛みを感知した。
**少女:**「お前、一体どこに行っちまったんだよ……? あるいは、一体何が起きたんだ、リョウ?」
調理場のオイルの音と、外部への雨の乱打音だけが残され、空間に再度静寂が定着した。無人の店舗でパルシモニオス( parsimonioso / 緩慢)に時間が経過していったが、突如として、鋭い電子音がその静けさを破砕した。
――ピリリリリ! ピリリリリ!
それは少女の携帯電話にセットされていたアラームの金属的なメロディであり、デジタルクロックはまさにその瞬間、午後9時ちょうどを指し示していた。そのシグナルを聴取すると、少女は座席から機敏に起立し、硬直していた背中の筋肉をストレッチして、タッチスクリーンへの迅速な接触でデバイスを消音した。
**少女:**「よし……帰る時間ね」
確固たる足取りのまま、若い女性はカウンターのエリアを離脱し、キッチンへと侵入した。彼女が最初に実行したのは、インダストリアル(業務用)バーナーのセーフティバルブを回転させ、オイルの沸騰を維持していた熱源を遮断することだった。金属製のトングを使用し、黄金色に揚がったばかりの最後のナゲットを慎重に抽出し、過剰な脂を数秒間切った後、それをテイクアウト用の小さなカートンボックスの中へと格納し、ラップした。
パッケージされた温かいボックスを腕の脇に抱え、彼女はメインホールの歩行を開始し、壁面のスイッチをシステム的に作動させていった。店舗の照明が一つ、また一つと消灯し、テーブル、椅子、そしてカウンターを濃厚なペンumbra(半影 / 薄暗がり)へと沈降させていく。全区画が暗黒へと還元されたのを確認すると、若い女性は入り口の扉を跨ぎ、東京の冷酷な夜へと進出した。
彼女は踵を返し、扉を金属フレームに適合させ、南京錠(高セキュリティパドロック)を鉄のアイレットに巧みに噛み合わせ、店舗の完全な閉鎖を確定させる乾いた金属音とともにそれをロックした。間髪入れず、少女は豪雨のデリュージ(豪雨)から身を護るために暗色の傘を開放し、激化し始めた冷酷な風の突風に対抗すべくコートの襟を首元まで引き上げ、孤独な歩道を行進し始めた。絶え間ない雨の下を急ぎ足で遠ざかるにつれ、凝縮された水蒸気の濃密な霧が彼女のシルエットを段階的に希釈していき、やがて彼女のフィギュア(姿)は、日本首都のインメンシティ(無尽蔵の広がり)の中へと完全に消失した。
このエピソードの今回のパートを読んでいただき、本当にありがとうございました!明日は、リョウが冒険を続ける一方で、地球で一体何が起きているのか、その『真実』とともにお会いしましょう。それでは、また明日!




