ミルカマイナ伯爵とリーナス夫人にアウンの報告
ミルカマイナ・マーガレット・シャウザー辺境伯は自領内の城内の居間でリーナスと向かいソファに座りお茶を飲んでいた。
給仕の女性二人がワゴンの所に立っている。
扉の外から女性の声で。
〚イジーでございます。ただいま玄関に旦那様に火急の要件が有ると、イルリット第三王子殿下の蝋印の封書を持ったお方がいらしております〛
「その者の名は」
〚イルリット第三王子殿下の使いの男性でスレリー様と仰っています〛
「何だと。直ぐに私の執務室へ通しなさい」
〚畏まりました〛
「何か有ったか」
「何も無ければあの子から封書は届きませんよ。あなた落ち着いて。
あなた達も付いていらっしゃい」
「「はい」」
「執事のマギュレイを頼む」
「畏まりました」
執務室内。
「お連れ致しました。
スレリー様どうぞ」
「ありがとうございます」
「イジー。そこを締めて廊下を警戒なさい」
「畏まりました。失礼いたします」
アウンは入って直ぐに跪いた。
「久しぶりだな。アウン」
「ご無沙汰しております。ミルカマイナ伯爵閣下。リーナス夫人」
「まぁ座ってくれ」
「少々時間が差し迫っております故」
「そうか。そこで立って、書簡を見る前に端的に申せ」
「はっ。イルリットお坊ちゃんが廃嫡されました」
「何ぃぃ」「何ですってぇぇぇ」
「やはりご存じでは無かったのですね」
「知らんぞぉ「連絡も来ておりませんわよっ」
「先日のイルリットお坊ちゃんの十八歳のお誕生日の前日。王城の謁見の間。各貴族が招集された中です。正式な決定です」
「わたくし達を意図的に呼ばなかったのね」
「クソ豚野郎がぁ。理由は」
「マーリレス様の不貞の子供」
「バッカもんがぁぁぁ「バカなの。バカなの」
「証拠も何も無く、廃嫡を宣言いたしました」
「イルリット君は」
「こちらにございます」
「マギュレイ」
「はい。お預かりいたします」
「お願いいたします」
「旦那様。どうぞ。こちらがペー
「もういい」
「はい」
「ウォーガット領に騎士爵として追いやられたか」
「煙たがられたわたくし達と同じ事を」
「あのクソ豚野郎が考えそうなこった」
「それであなたこの内容は」
「ああ、間違い無い。イルリット君はやる気だ。おじさんは手伝うぞ」
「アウン。リットちゃんは元気なのね」
「はい。すこぶる元気であらせられます」
「もう。全く連絡を寄こさないんだから」
「ご心配を掛けまいと
「何があった。ここに書いていない事で何があった」
「書簡の内容を存じませんので」
「学校の事が一切書いていない」
「妖精を宿していないにもかかわらず、驚異的な異能。
そのため、この八年間。異端児。化け物と言われ殴る蹴るの暴行を教師を含めたほぼ全生徒から毎日受けておりました」
「バカやろぉぉがぁぁ」「なんて事をぉぉうっうぅぅ」
「助けに入ろうとしたのですが・・・きつく叱責を受け手出しできませんでした。申し訳ございません」
「アウンを責めている訳では無いの。判ってね」
「はい」
「待て。五年前に会った時は何も言っていなかった
「あの子の事です。心配させまいと。うぅぅぅ
「アウン。証拠は」
「モニターに撮ってございます。お坊ちゃんは知りません。ですが、見るに耐えかねるかと」
「そんなになの?」
「はい。犯罪者への拷問の方が温い程です」
「うぅぅぅ」
「判った。検証する」
「お預かりいたします」
「はい」
「それで、卒業は出来たのだな」
「はい。本来は三年間首席で挨拶をするはずだったのですが、校長と教頭の思惑で次席が行いました。登録上は首席ですが」
「クソ野郎達が」
「それと毎年恒例の卒業式に国王陛下の臨席をピグダット・ファム・ミウラール国王陛下は辞退。
理由はイルリットお坊ちゃんの顔が見たくないからと
「何処までクソ野郎なんだぁぁ「もう殺すしか治りませんね」
「その為、卒業生全員から暴行を受ける羽目になりました」
「ケガは無いの。リットちゃんは大丈夫なの」
「はい。妖精の力では無い防御か何かをご使用でした。
ですが、男女教員を含め二百名程で一方的で執拗な暴行でしたので衣服はボロボロ。意識も少々飛んだようです。
今は回復なさって、元気にお仕事をなさっています」
「なんでそんな事が出来るのだ」
「だ 誰も止めに入らなかったの」
「公安が止めようとしたのですが、お坊ちゃんにより制止されました」
「何故ぇぇぇもぉぉなんてことをぉぉあなたぁ行くべきでした。何を置いても行くべきでした」
「魔物達の出現のタイミングが悪かった。何故あの前日からぁぁ
「旦那様。奥様。悔やんでも仕方ありません。
お坊ちゃんは元気に生きておいでです。
そしてこのようにお二人を頼りにお願い事も」
「そうだな。前向きに考えよう。
だが、関わった奴らを許しはしない。なぁ」
「はいあなた。徹底的に」
「ああ勿論だ。慈悲は無い。
アウン。今年の卒業生の名簿は」
「こちらです」
「お預かりいたします」
「はい」
「そのシーンの撮影は」
「そちらにご一緒に」
「ありがとう。ご苦労だった」
「あなたにも辛い思いをさせたわね」
「一番辛かったのは のは お お坊ちゃん くっくっ
「あの子も小さい頃からマーリレスに似て頑固だったから。本当にもぉおバカさんね」
「本当に人を頼らなかったからな。だが、こうして書簡を寄こし『おじ様助けて』だと」
「ここにちゃんと『おば様。助けて下さい』と書いてございますわよ」
「私の方が数が多いだろう」
「あなたが七回。わたくしは十回ですよ」
「本当かぁぁ。ひぃふうみぃ
「それであなた。お会いになる?」
「リーナス夫人。ご確認がございますが」
「なぁに」
「ドーナッテン・ファイ・シラーケド子爵と妻のルシヘ。長男ナンデネン。長女のゴクマーズの件はご存じでしょうか?」
「東隣ですね」
「悪い事をしているとは聞いているが不干渉を貫いているよ。
西の魔物達を構っている間に背中を刺されても嫌だからな」
「昨日。イルリットお坊ちゃんによって家族全員が処刑されました」
「何ぃぃ「それは本当なの」
「はい。事実でございます。
長男のナンデネンが校内での暴力行為の筆頭。不敬罪を適用。公安が王城前広場で公開処刑。群衆は凡そ五千人。
ドーナッテンは陛下の名を無断使用。
ルシヘとゴクマーズは領内の女性を誘拐しては換金。
お坊ちゃんの証拠を以て陛下が処刑の指示」
「ようやったぁぁ」
「ちゃんとできるではありませんか」
「それで陛下も承認なさり、シラーケド子爵領はイルリット・ファ・ウォーガット騎士爵領になりました」
「うおっしゃぁぁぁ。よくやったぁぁ」
「ナイスよリットちゃぁぁん」
「他は」
「わたくしがお話しできるのは以上です」
「ご苦労さんだった。
マギュレイ。今日のこの後の予定は?」
「お休みとなっております」
「すまん。後を頼む」
「いえいえ」
「ラレット」
「奥様もお休みです」
「可愛いわね。お願いよ。
で、お父様とお母様を呼んで」
「どちらに致しましょう」
「アウン。リットちゃんのお城は?」
「申し訳ございません。存じておりませんのでハロマイネ様にご確認が必要ですが」
「今何処に居るの?」
「王都でございます」
「あの子届くのかしら。やってみましょうか・・・あら。ハロマイネちゃん?リーナスよ。ちょっと待ってね。
ラレット。相互通信用の拡声器」
「どうぞ」
「繋げるわね。
ハロマイネちゃん。確認したいのだけど、この距離届くようになったのね」
{はい。実はイルリット様に妖精様がお着きになりました}
「宿った。では無いの。どう言う事かしら?」
{アウンから聞いていませんか?}
「失態です」
「今からでいい。申せ」
「はい。ファーナ様。ご存じですね」
「ああ。一緒にお茶を飲んでいると聞いた事が・・・
「まさか」
「はい。イルリットお坊ちゃんがアクアスカイ女神様のお力をお借りなさってファーナ様が実体化。
身の丈十五センチ程で背中にトンボの様な羽根が有りますお可愛い女の子です。
普通にお食事もなさり、わたくしにもお声掛けして下さります」
「前代未聞の世界的快挙ではないかぁぁ」
「リットちゃん凄いわぁぁ」
「そして何より、今までの膨大な魔法に付け加えファーナ様の妖精の力も手になさいました」
「何故もっと早く言わぬのだぁぁ。こんな目出度い事が有るかぁぁ」
「十八歳のお誕生日も兼ねてお祝いよ」
{判って頂けたのでしょうか?}
「ああ。ごめんなさいね。で、この念話の距離は?」
{ファーナ様から祝福のキスを賜り、ウォーガット領まで転移も届くようにして頂けました}
「ファーナ様は凄いお方だったのだな」
「もしかして、ここに来れる?主人の執務室よ」
{少々お待ちください・・・一旦玄関前です}
「待ってね。ラレット。準備」
「はい」
「準備出来たわよ」
{行きます}
{ラレット様が目の前にいらっしゃいます}
{ご到着なさいました}
「直ぐに来て」
{{はい}}




