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 "横殴り"


 MMOなどで見られる行為で、ゲームシステムによってはマナー違反となる。

その呼び名の通り対峙している相手を無視して横から獲物を攻撃するもの。


 NFLでは敵に与えたダメージ量によってアイテム獲得権利が決められ、さっきのはシロが8割近くダメージを与えていたので、当然アイテム獲得はシロに権利が渡った。チュートリアルでも冒険者ギルドでもマナー違反に関しての説明もあった。特に冒険者ギルドではその辺りが転身者プレイヤーに酷いと聞いてたけど、まさか一発目からとはなぁ。



 パーティログを確認しても、


【シロ 大ネズミの前歯×1、大ネズミの尻尾×1を獲得しました】


 と出ている。俺達の獲物だったわけだ。




「おい、何無視してんだよ?さっさとトレード出せよ」


「……うるさい」


「んだと!?」


 シロに喚くライオン頭に、目の据わった顔が向き直る。


「待てシロ!おいお前ら、横殴りってマナー違反しといてアイテム寄越せってどういうことだ?チュートリアルやギルド登録を受けておいてマナーも知らんなんて頭の悪い事言わんよな?」


「あ?んなのしらねーよ」


「横殴り……?」


 マジで覚えてないのかよこいつら……

そもそも、ネトゲ初心者か?


「知らないのなら今回は許してやる。どうしても引けないなら、そこらにいるGM交えて勉強会と行こうか。俺はそれでもかまわんぞ」


「……チッ、めんどくせぇな!おい、別の探そうぜ!」


「あ、待てよ!」



 GMも交えてと言った途端不利を感じたのか、顔を歪めて逃げて行った。流石にGMがそこらにいるってのはちゃんと知ってたのか。他の話も覚えておけってんだまったく。




「シロ、まーゲームってのはたまにマナーを守らないああいうのもいる。ここだと結構人多いから別の方向行こうか。な?」


「…………」


「よし、ここは南だからもう少し西行こうか!あっちなら人少なそうだからな。林もあっちの方が多いからきっと薬草もあるぞ!」


「……ふん」


 今回は話に乗ってやる、とでも言うかのように、

シロは俺が指差した方向に歩き始めた。




 右手の外壁に沿って30分以上は歩いたはず。

徐々に転身者プレイヤーの姿は減り始めた。


 途中で識別の訓練とばかりに色々と見ているうちに、たまにシロが手に取って齧り出した時は焦った。見れば薬草を齧っていただけでほっとしたが、採取依頼で必要な物をお前が真っ先に齧るってどうなのよ……?


「クロ、これあげるわ」


「これも薬草か?識別は……まだできないな」


 シロに渡された薬草と同じような草を、シロの真似をして齧ってみる。

初めは青臭いかなと首を傾げるが、やがて口にじわりと苦味が広がる。


「……って、にげえええええええぇぇ!?なんだこれ!?なんだこれ!?うぇっ…ぺっぺ!」


「ワタシのとこにはこう書いてあるの。ダメな気がして食べなかったけど、これは何て読むの?」


 鑑定結果のウィンドウを俺に見せてくる。


苦り草:雑草、調合素材

→どんな生き物でも齧ると渋い顔になる苦さ。毒はない。



「にがりそう……ダメだと思ったなら俺に食わせるな!」


 くすくすと楽しそうに笑う。


 俺に悪戯出来た事で機嫌を直したってか! 喉が渇いたわけでもなく水をごくごく飲む。くっそー、まだ口の中が渋い苦いああもう。

 悔しいからこれ採取してくぞ!調合素材って事は何かに使えるんだしな。後はシロに仕返しも出来るかもしれんからな!




 一度分かると薬草と苦り草は簡単に見つかるようになった。群生地ではないので、歩いている間にちょこちょこ見つかる程度だ。それでもすでに7束見つかってるから十分かね。


 それと、転身者プレイヤーや住民が遠くに見えてもマーカーが付かなかったのは、シロには200m以内の時俺は100m以内にマーカーが付いて見える事が大体だが分かった。まだ要検証ってとこかね。



 途中でまたシロがジャイアントラットを見付け、今度こそ1人できちんと最後までノーダメージで倒しきってすっきりしたみたいだ。こいつも俺にはすぐ発見出来なかったから、シロが優れているのかシロの

探知スキルが優れているのかちょっと分からんな



 うーん、と悩みながら自身のステータス一覧を開く。

装備品は変わってないから省略っと……あれ?



クロ 竜人族:LV1


HP:100/100

SP:100/100

MP:100/100

EP: 68/100


SkP:2P


スキル:【拳打篭手】LV1 【杖】LV1 【格闘】LV1 【光魔法】LV1

【闇魔法】LV1【付与魔法】LV1 【探知】LV1 【調合】LV1 【採取】LV1

【料理】LV1


アーツ:【一点突き】【溜め打ち】【ファーストエイド】

【ブラインド】【付与】


称号:なし



 なんでSkPが2Pになってんだ?もしかして、スキルを10個取ったから合計LVが10になって2Pついたとか?でもチュートリアルの時は確かに0Pだった。それは間違いない。

 てことは、チュートリアル中は反映されなかっただけで、教会を出た後にスキル取得が確定されてポイントが付いたって事かな?シロのステータスも見せてもらったが、同じく2Pついていた。



「何か1つスキル取れるな。あと1Pはまだ温存しとくとして……シロは何か」


「任せるわ」


「そっか。じゃあまた戦闘に役立つやつだと……隠密なんてどうだ?そっと敵に近づけたり隠れる時にも便利だぞ」


「ふぅん。それでいいわ」


 一旦歩くのをやめて2人でスキル取得を行う。まだどのスキルも上がっていないからこれなら探知の効果はシロと同じはずだ。ああ、種族特性って可能性もあったか。



 探知スキルの検証とばかりに探すと、俺も150mくらい離れててもキャラマーカーが付いて見えた。採取場所も見付けられるがやっぱりシロより遅い……気がする?

 魔物の発見に関してもまだシロの方が早いが、こっちも何となくシロと違う……気がする。感覚だから何とも言えないなぁ。


 ただ、スキル以外にシロだと種族特性が入ってると思う。同じLVでも性能に差があるんだから多分間違いないだろう。この辺りは掲示板を利用してるグンジョウやギルマスに聞いた方が早いかも知れないな。



「……あ。グンジョウに返事してないわ」


 タカキさんの問題やフィールド出たら横殴りのガキもあってすっかり忘れてたわ。うん、正直頭の中にまったく残ってなかった。すまんかった。


 個別チャットでそれを正直に伝えたところ、


『どうせそんなこったろうと思ったよ!悪いと思ってるならシロちゃんのSSくらいよこせよ!』


『なんだ、お前までクレクレ乞食か?』


『その横殴り野郎と一緒にすんなッ!』


『分かったから騒ぐなって。今撮って送るから』


 そう言ってネズミと戦闘中のシロを撮影して送る。


『なんだよ、それなら文句ねぇって。お、きたきた……って、戦闘中でブレッブレじゃねぇか!あ、でもこれはこれで』


『文句の多いやつだなぁ。ああそれとは別に聞きたい事が、』


「クロ。終わったわ」


「おお、今回も無傷で討伐か。初めてのゲームだってのにさすがシロだな」


「ふふん」


 自分がやりたいようにネズミを倒せてご満悦なシロがまた歩き出す。

途中の薬草採取もきっちりやってくれるから、戦闘以外も楽しめてるみたいだ。



『で、聞きたい事ってなんだ?』


『ああ、後でまたチャット送るわ』


『おいまた放置か!?』


『ちょっとまだ横殴り野郎が来るか警戒しながら移動してるから、あまり気が抜けないんだよ』


『プレイヤーのマナー問題はNPCってか住民の間でも問題になってるらしいな。掲示板でもマナー違反者は晒されてるみたいだぞ。お前もたまには掲示板くらいチェックしろよ』


『あの俺様目線なの好きになれんって言ってるだろ』


『分からんでもないが、一応外のチャットアプリの方にリンク貼っとくからちっとは見とけよ。じゃあまた後でな!』


 そこまでで個別チャットは切れた。



「この辺りはもう西エリアみたいだな。林が多くて見渡せない分警戒はしっかりしてくか」


「ワタシの方がうまく見付けられるわ!」


「おう、シロにはマジで助かってるぞ。俺も頑張らないとな!」



 ここからは俺とシロで交互にジャイアントラットに戦いを挑み、途中で休憩をしつつも薬草が33束、ジャイアントラットは8匹討伐出来た。2時環近くはこの辺りにいる。


「確か、ギルドの常駐依頼のジャイアントラットは10匹だったか。じゃああと2匹倒したら一旦街に戻ろうぜ」


「あと2匹ね、わかったわ」


 素直に言う事を聞いてくれるシロに、ゲームを楽しんでくれてるんだなってちょっと俺も楽しくなってきた。最初の戦闘が横殴りだったからどうなるかと思ってたけど、これなら大丈夫そうだ。




 この後2匹のジャイアントラットを討伐して街に戻る時、同時に2匹現れたので2人でどちらが早く倒すかの競争になってしまった。俺の方が早く倒したのが悔しかったらしく、また2匹いるのを見付けて勝負を挑んできた。2戦目はシロがかなり本気で挑み、ギリギリ俺の負けでその結果にシロは満足した所で、ちょうど昼になったので街へと帰ることにした。


「うん、やっぱゲームはこうじゃないとな!シロも楽しいだろ?」


「そうね。人の体で飛びつくのもいいわね」



 機嫌よさげに揺れる黒い尻尾もシロの気分を表している。

そんなシロを眺めながら道沿いに街の西門へと歩いて行った。



 ……あ。


 アーツス使ってスキル鍛えるの忘れてた。

次に出掛ける時はそっち試さなきゃだな。

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