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第21話 不思議・イン・ザ・七不思議

 俺たちは一度〈カッパー〉の教室に戻って情報を整理することにした。腹が減ったというロックたちが途中の購買部でお菓子や飲み物を買ってきて、机の上に広げる。


「ちょっと、しょっぱいもの多過ぎじゃない?」

「文句があンなら自分で買ってこいよ」

「さっきの実習室でお菓子焼いてくればよかったねぇ」

「ハトリさん、お菓子作れるんですか?」

「うん。ご飯もお菓子も得意だよぉ」

「ハトリの焼き菓子は絶品ですよ。味は私が保証します!」

「アオイさま、屋敷に遊びにくるたびに持って帰ってたっスよね」


 わいわいがやがやと、いつになく教室が賑やかだ。そんな皆の様子を見ていると、シロンが俺の顔をのぞき込んでくる。


「どうした?」

「ご主人さまが笑っていらっしゃるので、眼に焼き付けておこうかと」

「大げさだな。家に居るときも笑ってるだろ」

「それはそうですが、なんというか……」


 シロンは少しの間考えて、


「欲しかったものをやっと手にしたような、そんなお顔をしています」


 と言った。


「そっか。そんな顔してるのか、俺」

「ええ、とても可愛らしいです。写真に収めておくべきでした」

「あのなぁ……」


 なんだかくすぐったい気分になってしまった俺は、咳払いをして気持ちを切り替えつつ、黒板の前に歩いていった。そして、


「七不思議の話、あらためてまとめるぞ」


 とみんなに声をかけた。お喋りしていた連中が、一斉に俺の方に向き直る。

 その視線を受けても、不思議とイヤな気持ちはしなかった。


 俺はみんなから聞いた話を黒板にまとめていく。


「学院の七不思議は第2実習室、第3美術室、屋外演習場の裏、屋内演習場の女子更衣室、第1音楽室、新校舎の4階南階が舞台になってる」

「ん? 6カ所しかないっスよね? 七不思議なのに?」

「ああ。エテルの言うとおりだ。7つめの怪談は謎で、こいつを知ると霊の世界に連れ去られるらしい」


 〈前世〉では定番のネタだけど、こっちの世界では珍しいのか、カーラとミジィルは「ひっ」と小さな悲鳴をあげて身を寄せ合っている。


「ロック、準備室に仕掛けられていた【魔法具】は、いつごろ仕掛けられたものかわかるか?」

「部品の消耗から考えて、だいたい1ヶ月くれェだな。ただし、似たようなもんを何度か交換してる可能性はあるぜ」

「なるほどな……アルカ、例の怪談って最近のものなのか?」

「うーん、詳しくは知らないけど、けっこう前からあるみたいだよ。用務員のおじさんが教えてくれたんだ」

「そうか……」


 俺は黒板に「怪談→仕掛け」と記きこむ。


「んーとぉ……それって、どゆことぉ?」

「仕掛けが先なら、あの映像をもとに怪談が生まれたことになる。逆に仕掛けが後なら、犯人は〈別の目的のために怪談を利用してる〉可能性があるんじゃないか?」

「愉快犯という可能性は? 怪談と同じ映像を見せて、驚く様子を愉しんでいる……とか?」

「否定はできないけど、線としては薄い気がする。あの部屋に仕掛けられたのは映像を映し出す【魔法具】だけで、実習室の様子を外から盗み見る仕掛けはなかった。視覚を強化するにしても、ずっと外で待機するわけにはいかないだろ」

「たしかにね……だとしたら目的はなんだろう」


 アルカは顎に指を当てて考え込む。ほかのみんなも、それぞれ考えを巡らせている。

 そんななか、アオイが手帳を取りだして何かを確認しはじめる。


「アオイ、なにか思い当たることがあるのか?」

「ええ。最近、体調を崩して休む生徒が普段より少し増えているのです。もしかしたらと思ったのですが、やはり1ヶ月前からでした」

「【魔法具】が仕掛けられた時期と一致するのか……」

「アオイさま、その方たちは七不思議の場所に行ったのでしょうか?」

「そこまでは調べがついていません。でも、可能性はありますね」


 アオイが手帳を閉じて立ち上がる。


「私、学友の皆さんにお話を聞いてきます」

「じゃあ僕も一緒に行くよ」

「あーしも行く!」

「では私も……」


 アルカ、カーラ、ミジィルも立ち上がる。アルカはともかく、カーラとミジィルの狙いは明らかだ。


「他の七不思議の場所は、ヴィたちが調べといて!」

「ヴィって俺か」

「他に誰がいるの。んじゃ!」


 と言い残してそそくさと部屋から出て行くカーラと3人。それを見送って、俺はロックやシロンたちと顔を見合わせる。


「カーラに気に入られたなァ、お前」

「そうなのか?」

「あだ名で呼ぶようになったら、そういうこった」

「ふぅん。ずいぶんよく知ってるんだな。ロックは付き合い長いのか?」

「あァ、ウチが近所なんだよ。あいつも一般市民から頑張って入学したクチだ。ミジィルの尻を触ってた試験官に蹴りくれて〈カッパー〉行きだけどよ、けっこう努力家なんだぜ、ああ見えて」

「なるほどねぇ」


 ゲームでは書かれていない設定だ。


(〈原作知識〉があるからって、それだけで相手を分かったつもりになっちゃいけないな。注意しないと)


 そんなことを考えつつ、俺は黒板に目をやる。


「じゃ、残りの場所のうち、回れそうなところに行ってみるか」

読んでいただいてありがとうございます!

もうちょっとだけ愉快なクラスメイトと七不思議編、続きます。


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