44話 カズ「狸様の伝説」
カズ
「それで? 何が知りたいんだ?」
何って…なんだろ
「狸様の伝説って本当にあったんですよね?」
「あぁ 本当だ」
まあ そうだよね
教科書にも載ってるし
みんな狸様って言ってるし
カズ
「戦後80年経ったが
今も当時のことを覚えてる人が
講演してるからな」
「あー そういえば」
中学とか高校のときに聞いたような
でも そんな昔のこと話されてもなーだったし
「狸様に助けられたって
なんか おじいさんが話してました」
「俺は警察学校で嫌というほど聞かされてな
市民と狸様を守るのが仕事だとか」
「狸様も守るんですね」
「この国の守り神だからな」
「それも信じてないわけではないですけど
なんか都市伝説みたいですよね」
「今の時代は そうだよな
狸様信仰も形だけになってきて
若い奴らは狸様かわいいとか」
「だって 狸様が戦地に現れて
たくさんの兵士を助けたって
そんなのアニメの話ですよ?」
「アニメってなあ…」
「それに戦争終わってからは
狸様に助けられたって話ないんですよね?」
「そうだな 戦後そう言った話はない
だが戦時中 狸様に助けられたのは本当の事だ」
「何千人って助かったんでしたっけ?」
「あぁ 一つの戦地だけでなく
複数の戦地で狸様の姿を見たってな」
「前にネットで見たのは
日本の妖怪も戦争に参加してたとか」
「それこそ都市伝説だろ」
「狸様は戦地には生息してなかったとか」
「この島固有の狸様だったって証言はあるな」
「でも どうやって助かったんですかね?
教科書にもネットにも詳しくは書いてなくて」
「それも謎に包まれていてな
当時の新聞読んだことあるが
撃たれたはずが生きてたとか
気付いたら本土に着いてたって」
「やっぱオカルトですね」
「戦死したはずの人が次々に帰ってきて
口々に狸様に助けられたと証言して
普通の兵士だけではなく
将校や戦後に政治家になった人もいたからな」
「すごいですね」
「そこから狸様信仰が生まれて
野生の狸様と共存するために長い時間をかけ
狸様を傷つけないよう法律を変えたりな」
キュウ
「よしよし
それで今では撫でることできて
街中にも たくさんいるんですよね」
「もし狸様信仰なかったら
猫が街中に溢れてたと言ってる学者もいるぞ」
「えー 猫ちゃんですか!?
狸ちゃんも可愛いけど 猫ちゃんもいいな〜」
「まあ実際 戦前は
野良犬や野良猫も多かったからな
狸様を保護するために環境も変えてきたし」
「野良犬は ちょっと怖いですね」
「そうだな さてと少し話しすぎたな」
「あっ もう22時30分になっちゃう!」
「下まで送ってくぞ
ここまで どうやって来たんだ?」
「近くまでタクシーで来て 後は歩いて登って」
「タクシー? そこまでして女の子を助けに」
「ははは…まあ…」
ほんと勢いだったよ
「帰りは どうするんだ?
泊まるとこないか掛け合ってやるが」
「いえ 帰ります」
「帰る? どうやって?」
「またタクシー呼ぶんで」
帰り分のタクシーチケットあるからね
泊まるよりは帰りたいし
「そうか わかった
下まで行けばタクシーも呼べるだろう」
「はい」




