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別れと出会い

時計は昼過ぎを指していた。

覚悟を決めるのに時間が掛かってしまった。

この選択は沢山の人を不幸にしてしまうかもしれない。

彼女も含めてだ。

そう考えると、やはり怖くなった。

それは『正しい』とはいえない。

今更そんなことを考えていることも『間違っている』だろう。

彼女が死んだその瞬間から僕は『正しい道』から踏み外したのだ。

僕はそれを後悔していない。


いつも学校に行く時に使っていたカバンの中身を空っぽにする。

リュックの中では大きいほうであろうそれに彼女を入れる。

勿論、瓶のままで。

ないだろうとは思ったが、念のため緩衝材としてティッシュを軽く丸めたものを詰めておいた。

財布と父のライターをポケットに入れる。

財布の中を確認する。

ホルマリンを買ったのもあり、財布は少し寒そうだ。

それでも、このあと買おうと思っているものを考えると十分にあるように感じられた。


「 よし、準備完了。少し揺れるかもしれないけど、我慢してね。」


独り言だが、不毛には感じない。不思議だ。


「 じゃあ、行きますか。 」


どこか満ち足りたような気持ちでいる。何故だろう。

これからする事に僕は『幸せ』というものを感じているからだろうか。

彼女との外出を嬉しく思っているからだろうか。

きっとその答えは出ないままだろう。

いや、出なくて構わない。

今生に居るうちはそれでいいのだ。


リュックを背負い、部屋のドアを開ける。

ここが一番の難関になるだろう。

怪しまれないようにしなければ。

できるだけ自然にしていなければ。

それには『嘘』をつくことが必要になってしまうだろう。

だが今はなりふり構ってはいられないのだ。

非常に苦痛だ。

非常に不快だ。

気分が悪くなる。

目眩がしそうだ。

頭が重くなり、罪悪感に胸が苦しくなる。

それでも犯さなければいけないのだ。

『嘘をつく』という大罪を。


「 友達と遊んでくる。」


少し声が震えてしまった。


「 あら、そう。珍しいわね。」


母は疑ってはいないようだ。


「 じゃあ、いってきます。」


リビングを出ようとした時だ。

母に引き止められた。

心臓の活動が止まりそうになる。


「 これ持って行きなさい。お友達の家に行くんでしょ?」


母は紙袋を持っていた。

恐らく友人に渡すためのお菓子か何かだろう。

母は僕の人間関係を円滑にしたいのではない。

自らの教育が行き届いていることを『見せびらかしたい』のだ。

最期の最期まで母は『嘘つき』だった。

そのことを悲しく思う自分がまだいた事に驚いた。


紙袋を受け取り、何食わぬ顔でリビングを出る。

心臓に手を当ててみると、鼓動が速くなり過ぎていた。

落ち着けるために、深呼吸をする。

落ち着くのに少し時間を使ってしまった。


玄関のドアを開けて外に出る。

天気は良く、散歩日和だ。


彼女にも見せてあげたいけれど、それは少し後になる。


目的地に向かう途中でホームセンターによる。

緊張する。正直少し怖い。


店内でそれを探す間、周りの目が気になった。

怪しく思われていないか警戒していた。


その商品を見つけるのにはそこまで時間を費やさなかった。

工具が乱立している棚に、それはあった。

それはいわゆる『ロープ』だ。

少し細いが、十分だろう。

値段もお手頃だ。

しかしこれだけ買ったのでは、怪しまれるのではないかと過剰なまでに、警戒してしまう。

意味もないのに、電池やら、電球やら嵩張らないものをいくつか買った。

そのおかげか、店員は怪しまれる事なく、ロープを購入出来た。


準備は出来た。

事前に把握しておいた、人目につかない空き地に行こう。


到着までの時間は長く感じた。

日は既に真上から少し傾いている。


人目がつかないだけに、気が立ち並んでいて木漏れ日を心地よく感じた。

日陰は涼しく、目的地の空き地に近ずくにつれ足取りは軽快になった。

そこでハッとした。

彼女は大丈夫だろうか。

少しリュックが揺れ過ぎているように感じる。

心配でならない。

しかしここで確認するわけにはいかない。

仮にも人は少なからず通る道だ。

ここで開くのはリスクが大きい。

早く空き地に行って、確認しなければ。

しかし走るわけにもいかず、ジレンマでもどかしくなる。


ようやく目的地に着いた。

その時にはもう、夕方近くになっていたし、僕の足の裏は痛みで悲鳴をあげていた。

しかし、休んでいる時間はない。

空が赤い今のうちに行動しなければならない。


いつも通りそこには人がおらず、落ち着いた雰囲気を出していた。

そのうえ、都合よくドラム缶もある。


リュックを開けて、彼女の入っている瓶を取り出す。

揺れていたが、彼女に傷は付いていなかった。

安堵に表情が緩む。

自分の身勝手で彼女に傷を付けてしまうのは本当に不本意だったからだ。


「 やっと到着だよ。疲れちゃったよ。」


彼女はホルマリン中で少し揺れ動いている。


「 それでさ…さよならはしないんだよ。」


言いたくはなかった。心臓が苦しくなった。


「 君には悪いと思持っているんだけど…」


その行為は途轍もなく不条理で、傲慢で、卑劣な行為だ。


「 君をここで燃やさないといけないんだ…。」


彼女を直視できなかった。


「 それに謝らなくちゃいけないことがあって…。僕は君を…見殺しにしたんだ…。」


涙が出そうになる。

そんな資格僕にはないのに。


彼女は僕をどう思うだろうか。

許してもらいたいだなんて思っていない。

ただ、死ぬ前に後悔を残したくなかったのだ。


「 ごめんなさい…。」


僕は身勝手にそれで言葉を発することをやめた。


少し高い木に縄を括りいつける。

準備は出来た。


ドラム缶の中に緩衝材として入れておいたティッシュを入れて、ライターで火を付ける。

ティッシュはよく燃える。

ドラム缶の中で轟々と燃えている。


僕は彼女を瓶から取り出す。

ホルマリンに浸かったタンパク物質は脆くなる。

彼女を崩さない為に慎重に瓶から取り出した。


彼女は少し変色していて、脱色されたようになっていた。

彼女をそうしたのは自分なのに、見ていて切なくなった。

今まで誰かにここまで入れ込んだことはなかった。

初めてで、戸惑ってしまった。

僕は彼女に伝えなければいけない。

いや、伝えたいのだ。

この気持ちを。

それを彼女がどう思うかはわからない。

でも自己満足のためでいい。

この気持ちを伝えたい。


「 君が好きです…。こんなこと言う資格がないことは分かっているけど…。我儘だけど、向こうの世界でも会ってくれると嬉しいな…。」


彼女をドラム缶に優しく入れる。

轟々と燃えるそれに彼女を入れた。


僕は彼女を『2度殺した』。

そう言っても過言ではない。

苦しい。当然だ。彼女が好きなんだから。


僕も今生との別れを告げよう。

僕を木からぶら下がるロープに首をかける。

少し高かったばっかりに、背伸びでは届かなかった。

ジャンプでタイミングを測りながらした。

死に際はカッコ悪くて、恥ずかしい。

タイミングが合ったようだ。


僕の首にロープがかかり、僕は今生との別れを告げた。

彼女は向こうで僕に合ってくれるだろうか。


あわよくば、告白の返事を聞かせてもらいたいな。

ここまでこんな拙い文章を読んでいただき本当にありがとうございました。


最終話まで読んでくださった方、本当にありがとうございました。


評価やブックマーク、感想をくださった方、この場を借りてお礼申し上げます。


実はこの作品は、供養のためというか、成仏のためというか

そんな感じのものでした。

昔に考えていたものを成仏させたくて、書いたものでした。


皆さんが見てくださったおかげで、なんとか成仏させることが出来ました。


本当にありがとうございました。


これからも色々と書く予定ですので、これからもよろしくお願いします。


改めて、ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。

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