第四話 うじゃうじゃ!
第四話 うじゃうじゃ!
今日は輝星人さんが輝かなくなった最後の日。
星人さんたちが集まって、転送装置前で輝星人さんのお見送りの最中でした。未だにノアは狭星人星の軌道上を回っています。
「今までご苦労様でした。輝星人さん」
ノアの搭乗員代表としてわたしが輝星人さんと最後のお別れの挨拶をしました。
輝星人さんの目からはうっすらと熱い涙がこぼれます。マジ泣きで引くほどです。
「まさか、もう皆さんとサヨナラとは……うおぉおおー!!!」
「輝星人さん……また、いつかお会いしましょう」
「それはいつの日だい?」
「それは旅が終わったら、そっちに行きますから!」
「そうか、どうか、拙者のことは忘れないでおくれ」
「当たり前だ。離れていてもずっと同志。それは変わりようがない」
「消星人……」
「私も同じく」
「派星人……」
「俺っちは……」
「微星人……」
「いや、まだ何も言ってねぇ。まぁ、そっち行っても泣くなよ! 俺っちもそっちに行くから」
「ああ!」
「えっと、あなた誰だっけ?」
「失星人は相変わらずだな。そんな失星人が愛おしい」
「キモイです。男同士はちょっと……」
「輝星人さんとは日が浅いですけど、僕は……」
「ありがとう。その気持ちだけ受け取るよ」
「輝星人さん、もうそろそろ」
「うむ」
すると、輝星人さんは転送装置の上に立ちました。
「これから、新しい輝星人と入れ替わる。拙者のことは記憶の片隅にでもしまっておいてくれ。新しい仲間だ。仲良くしてやってくれよ」
集まった星人さんたちの前から輝星人さんが姿を消すと、目の前に現れたのは、新たな輝星人さんだった。
星人さんたちは彼のことをこう呼ぶ、ニュー輝星人と!
「HELLO! エブリバディ。皆さんエキサイトしてますかぁー?」
「うおおー!!!」
すると、転送装置に集まった星人さんたちはニュー輝星人さんの周りに集まり、エンジンを組み始めました。
歓迎のプラカードを持っているわたしと狭星人さん。どうやら置いてけぼりのようです。
「ごめんなさい、輝星人さん、どうやらあなたのことはすぐにも忘れそうですー!」
ここは連絡通路。
歓迎のテンションの高さに付いていけず、置いてけぼりとなったわたしと狭星人さんはどこか落ち着ける場所を探していました。
「だるー。熱があるかもしれないですね」
わたしは重たい体を横に揺らしながらそう言いました。
「だ、大丈夫ですか? ところで、僕らはどこへ行こうとしているんです?」
「えっと、保健室ですが?」
「じゃあ、僕はここで」
「か弱い女子を一人にする気か! 君は!」
わたしは即座に狭星人さんの首根っこを掴みました。
「わっ!?」
「保健室にはお化けが出ます」
「お化け? まままま、まさか!」
「うじゃうじゃを見てそう思いました」
「うじゃうじゃなんてい、いいいいないですよ」
「それがいるんですって! というか、あなたこそ大丈夫?」
「大丈夫ででげす」
わたしたちが保健室に行く途中、こちらに向かってくる不気味な足音がした。
その足音は床にへばり付きながら移動している様でした。
「ち、ちょっと、見てきてよ」
「嫌ですよ。知星人さんが見てきてくださいよー」
「さっき、うじゃうじゃいないって言ってたじゃないですか!」
「います。絶対います」
「前言撤回しちゃったし……」
「U・M・A」
「ど、どうしたの?」
わたしは狭星人さんの顔を見ました。しかし、視界がぼやけて何も見えません。これには参りました。
「U・M・Aぁああ!!!」
狭星人さんの奇声に驚いた「あいつ」がわたしたちに迫ります! 視界が一瞬、鮮明になりました。
「S・O・Sぅううう!!!」
「馬鹿、早く逃げるの!」
わたしは狭星人さんの手を引っ張ると、途端に逃げ出しました。
あいつは狩猟本能に火がついたように、わたしたちの後を追いかけます。
そこへ星人さんたちが肩を組んで、仲睦まじく故郷の星の歌を大合唱していました。何か酒臭いです。
星人さんたちはあいつに気づきませんでした。ノアの侵入者にも関わらず、合唱とは……地獄で果てろ、酔っぱらい共め。
「うじゃー!」
わたしたちは星人さんたちを盾にしようと考えました。妙案です。いえ、魔が差したというやつです。
すると、あいつは星人さんたちを見て、威嚇しました。うじゃうじゃは立ち上がると、1m近くはありました。
ちなみに星人さんたちの平均身長は2m以上ですっ。
「何、このチビ。邪魔なんですけど。もしかして、うじゃうじゃ?」
消星人はそう言いました。
「うじゃー!!!」
そして、今まさにうじゃうじゃが星人さんたちに襲い掛かろうとした時でした。
すると、一人の星人が前に出たのです。彼の名はこう呼びます。ニュー輝星人と!
「おい、BABY、それ以上は分かっているよな?」
ニュー輝星人さんはうじゃうじゃにそう警告すると、手から火の玉らしきものが浮き出ていました。摂氏何度なんでしょうね?
「うじゃ?」
「KILL、だぜ」
「……う、うじゃ」
「そこは退治しようよー!」
わたしはそう言うと、隣にいた狭星人さんはすでに配管の後ろに隠れていました。
よっぽど、狭いところが好きなんですね。でも、これでは意気地なしと見られてしまいますよ。
「YOUにいいものあげる」
「変なモノだったら、宇宙に投げますよ」
「NON、NON。これさ」
ニュー輝星人さんは宇宙一汚れが取れる洗剤を股から取りだしました。
「洗剤? っていうか、今どこから出てきました?」
「気にするな。BABY。これでイチコロさ。TRY、ME!」
「ちょっとぉおおー!!!」
「GOODBYEー!」
投げキッスをかましたニュー輝星人さんは洗剤をわたしに手渡すと、星人さんたちとどこかへ行ってしまいました。
頼りにならないニュー輝星人さんです。
「ま、まさかね」
わたしは試しにその洗剤の栓を開けて、うじゃうじゃに洗剤を向けると、うじゃうじゃはひどく怖がっていました。
狭星人さんにも試しに向けてみます。
「こっちに向けないでくださいよ。意味ないじゃないですか!」
「ごめん、つい」
「でも、これって効き目があるってことじゃないですか?」
「うん、でもなんか、だんだん可愛そうになってきたかも……」
「まだ、子供っぽいですよね」
「宇宙に逃がしてあげよう」
「そうですね。でも、どうやって? うじゃうじゃって何かに寄生しなくちゃ生きてられないんでしょう?」
「クラッカーで飛ばそう」
「あれって期限切れじゃ……」
「嘘ですっ」
「えー、嘘なんですかー?」
「あれをリュックみたいにうじゃうじゃの背中に背負わせて、宇宙に放つの。そうすれば生きていけるよ」
「誰がリュックを背負わせる役を?」
「それはYOU。男でしょ」
「無理、無理、無理、無理!」
その後、やけを起こした狭星人さんはうじゃうじゃにクラッカーを付ける事に成功。
そして、無事、うじゃうじゃは宇宙へ旅立ったとさ。
「うじゃうじゃ、もう来るなよー!」
「うじゃうじゃ、克服したかも」
「マジっすか?」
「マジで」
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