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現在お高そうな車の中に乗っています。
そう、ベンツ様です。ベンツに乗り込んだ私と若とおっさん3人。本社の場所がばれたくないからなのか窓の外は閉まっているカーテンで全く見えない。だけど、わかっちゃうんだよな。これが。無意味だね。異世界スペックサイコー。あははー。
バグった様な自分のスペックに心の中で呆れる。
「緊張してる?大丈夫だよ。リラックスして?」
「はぁ、人見知りなんですみません。」
私は自分を奮い立たせて、うん無理。
「そっかー。」
それより若様よ。君見た目キリッとイケメンなのに結構喋り緩いね。まぁこういう人はサブカルチャーにどっぷり浸かった私から見るとこれが腹黒かぁって感じなんだけども。いやまぁこんなごりごりの闇金やってて腹黒じゃなかったらどうするんだよって感じなんだけども。
「……。」
無言がツレェ。しかし、喋るのはもっとつらい。
「聞きたいことがあるんだけど。」
「はい。」
「どうしてうちに応募してくれたのかな?聞いたところ高卒じゃないよね?中退してるのによく応募しようと思ったよね。」
「え?」
アルバイトなのに駄目なの?
「えって、え?」
流石の若も戸惑う。
同じ車内にいる知らないおっさんもこちらを信じられない目で見てくる。
「何かいけないところでもありましたか?」
「まぁうん。年齢的には問題ないんだけど、ね。」
じゃあいいやん。
動揺して謎に関西弁出たわ。どうしてくれる。
「いや普通にさ、アルバイトって言ったらコンビニとか飲食店とかあるでしょ?どうしてうちなのかなぁって気になってね。」
「給料が一番良かったからですかね。」
あと事務ってなんか格好いい。
「……あぁうん、そうだね。わかった。ありがとう。」
「はぁ。」
そして、変な空気の中(一種の拷問)目的地まで沈黙が続き、椿はもう不調が起きないはずの人外の胃が痛くなったような気がした。