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黒いストレートの髪の毛を一つくくりにしたこの地味そうな女はあいつの言っていた通りの変な女だ。
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「仕事内容は主に雑用だね。掃除とお茶出しとかかな。清掃員はうち雇ってないんだよね。見ての通り顔が厳つい連中が多くてね。誰も来てくれないんだよね。」
「わかりました。」
「で、自己紹介するね。」
多分気弱な日本人ならば雇われたくないフロアに私はいる。こんな傷のない強面より傷のある強面を知っている私としたら大したことはない。
「僕の名前は桜木修だ。この○○金融会社の社長をやってる。」
「本日から事務をやらせていただきます。町田椿と申します。本日からお世話になります。」
「はい、終わり。周りの人たちの名前は憶えても憶えなくてもいいから。仲良くしたいとかなら別だけどね。早速仕事始めちゃって。あ、給湯室はさっきの廊下の突き当りにあるから。必要なものがあれば経費で落とせるから何でも言ってね。掃除道具は給湯室の横にある物置にあるよ。トイレ掃除も頼んだよ。あれ、結構言ってなかったことがあったね。あと、社長室には入らないように。あとは~まぁ、いいや。掃除方法とかおまかせするから。あ、トイレ掃除から先に始めてほしいなぁ~なんて。」
社長は言うだけ言って社長室に引っ込んでいった。
「やるか。」
社長は何がしたいのだろうか。まぁ、いいか。先に給湯室に行って荷物を置いてこよう。
私は給湯室に行った。
そして、思った。なんだこれは。と
「きったねぇなこれ。」
給湯室には煙草の吸い殻が沢山落ちており、壁も白く綺麗だったのだろうが今はヤニで見事に黄ばんでいる。コンロには吸い殻と灰皿が置いてある。何故か火事でもあったかのように煤けてもいる。何をした。
「魔法があってよかったと思うよ。てか、こんなとこに荷物置きたくねえからアイテムボックスの中にいれとこ。」
私は荷物をアイテムボックスの中にぶっこみ腰に手を当てた。
「まずは吸い殻をかき集めなきゃな。」
魔力を行使する。
すると、吸い殻、灰、会いたくなかったGが目の前に集まってくる。
Gさんあなたには退場していただく。
「G消滅」
吸い殻、灰、Gにはこの世界からご退場していただいた。
「あとは、っと。」
するとその場にプルルンとスライムが現れた。このスライムは山本さんという。山本さんは私の最初の異世界友達だ。召喚されて一か月くらいの頃、一人で森を彷徨っていた時にビックラットという魔物に山本さんが攻撃されているのをみてつい助けてしまったのだ。山本さんは傍目にはわからないほどに瀕死で「ぴぃ」と最期の声を鳴いた。私はその声に落ちた。拙い覚えたばかりの回復魔法ヒールを何度もかけ続け、山本さんと私は名付けた。すると、山本さんと私の中でつながり主従契約を結んだ。
「ぴぃ!」
「山本さんおやつの時間だよ。この部屋を隅々まで掃除してほしいの。」
「ぴぃ!」
まかせて!と山本さんは言ったように感じた。相変わらず山本さんは頼りになる。
山本さんは体を薄く伸ばし部屋全体に行きわたるとまるで洗濯洗剤のイメージ通りの現象が起こる。普段縮んでいる山本さんは分厚くなってどんどん汚れを吸い取っていく。私の回収していなかったGの卵も。滅びろ。
私?私は魔法で浮いてるよ。
ものの数分で山本さんは吸収し消化した。
「ありがとう山本さん。大好き。」
「ぴぃ!」
「かっわいい。なんだこの生き物。」
スライムです。
山本さんは排水溝の中まで掃除してくれたようだ。何と頼りになることか。異世界でスライムがなんであんなに邪険にされているのかわけワカメ。んん、わけわからん。阿呆だな。阿呆の極みだ。可愛いのに。
私は山本さんを抱いて冷蔵庫の中を確認する。案の定酒が大量に常備されていやがる。没収だな。念のために山本さんに掃除してもらい回収する。綺麗になった冷蔵庫の中には何も入っていない。ってか、この給湯室にお茶っ葉がないなんてどこにあるんだよ。多分最初から用意してねえな。食器とか急須は辛うじてあるな。私は心のメモにお茶っ葉とメモした。
「なんか、惨状が酷すぎて水が出るのかさえも怪しい感じがするな。」
蛇口をひね
「む。山本さんお願い。」
魔法の言葉「山本さんお願い」
を言うと山本さんは蛇口にするりと入った。うん。消化してくれたようだ。実は、蛇口の中から生体反応があった。多分、ムカデかヤスデじゃないかな。ゾッとしたわ。
「こりゃ、心のメモに書留るだけじゃいけないね。」
私はアイテムボックスからメモとペンを取り出して必要なものを書いていく。
「ってか、ごみ箱ねぇな。この部屋。だから、袋もないんだな。」
はぁ~、頑張ろ。
世話がかかる人がいると、常識人になっていく。




